エピローグ
そんなこんなでちょっとした事件に巻き込まれたり、パンドラから新しい技であるダンボール・ステルス等の技を身に着けたり、定期の診察を受けたりしている内にあっという間に1週間が過ぎ去った事をタマは思い出していると唐突に衝撃が走った。
「っ!?」
タマは痛みで意識を覚醒させると頭上を見上げる。そこにはパンドラが頭をさする姿があった。
「うぅ。頭突きしたので頭が痛いのですよ」
「それはこっちのセリフだよ。なにすんだ?」
タマは不機嫌ながらも入学式中だった事を思い出して小さな声で文句を言う。パンドラは頭をさすりながら言った。
「タマ。入学式終わりましたよ」
「え?」
パンドラの言葉でタマは周囲を見る。
周囲を見ると式は終わっており、新入生が移動を始めていた。そんな中で明らかに目立つ行動をしているはずなのに誰も意識していない様子であった事に気づいた。
「あれ? そういえば何で誰も気づいてないんだ? それと俺っていつくらいから寝てたんだ? 入学式の受付を済ませてから座った辺りから記憶にないんだけど?」
「ずっと心ここにあらずといった様子で入学式の席に座った直後くらいから夢の中だったのですよ。すぐに起こそうかと思ったのですが、あまりにも気持ちよさそうに寝てたので今は私のダンボール・ステルスで認識を逸らしてあげたのです。私に感謝するのです」
パンドラがドヤ顔でそう言うとタマは素直に礼を言った。
「……そっか。ありがとうな」
「どういたしましてなのですよ」
タマは礼を言うとパンドラは満足した表情を見せる。タマは周りを見ると自身の居る列から新入生の約半分が既に移動していた。
「タマ。そろそろみたいですよ」
「みたいだな」
順番が近づくとパンドラがそれを知らせる。その後にパンドラはたずねた。
「このままダンボール・ステルスをしたまま教室にいくのです?」
「そうだな。教室の近くまでは頼む。今解除すると変な目立ち方しそうだし」
「分かったのですよ」
タマの言葉にパンドラがうなずくと後ろから誰かが背後からつつく感触があった。
「ん? 誰だ?」
誰も認識していないはずなのに背中をつつかれる感触にタマは経過して後ろを見る。そこには1週間前にであった葛葉 洋子がタマに向かって手を振っていた。
「や。久しぶり。元気にしてた?」
「……」
タマは思わず前を向く。前を向くと逆さ向きの玉藻が目の前にいた。
「うわぁっ!?」
『カカ。良い反応じゃな。じゃが、ヨウコにも反応してやらんといかんぞ?』
タマの反応に玉藻は満足そうに笑う。少しすると落ち着いてきたのかタマは玉藻にたずねた。
「なんでここに? え? 葛葉さん同い年なのっ!?」
『うむ。葛葉の家は代々私に仕える九十九士の家系でな。国から特別なツクモ神を相手にするお役目があるのじゃよ。鵺も危険なツクモ神じゃから依頼が回って来たという訳じゃな。詳しい事は後で洋子に聞くと良いぞ。それと後ろ見た方が良いぞ。襲い掛かる気満々みたいじゃぞ』
「えっ?」
タマは慌てて後ろを振り返る。そこには両手を上げてワキワキとさせながら近づいていた洋子の姿があった。タマは洋子が触れない位置に離れた。
洋子は玉藻に対して不満そうに言った。
「玉藻。何で言うの? もうちょっとだったのに」
『ふん。私は恩を忘れぬ御狐様じゃからな。恩人に優しくするのは当然じゃわい。それと今のヨウコの行動は少しキモイしな』
「うっ。キモイは酷い……」
玉藻のドストレートな罵倒が洋子に突き刺さったのかその場に崩れ落ちる。
『どう見てもそう言うしかない様子じゃろうが。それとタマ達は何らかの術で認識を誤魔化しとるが、今のヨウコには何もかかっとらんぞ。じゃから1人で舞い上がったり、唐突にガッカリし始めた変な奴に見えるぞ?』
「え゛?」
玉藻の言葉で洋子は思わず聞き返す。その反応に玉藻は頭を傾げた。
『なんじゃ? 気づいとらんかったんか?』
「ん。タマと再会できたことに舞い上がってた」
洋子は何事もなかったかのように席に戻ると淡々とした表情で答える。
「ん。それにタマの寝顔が可愛かったのは役得だった」
「えぇ……」
洋子が満足そうに答えると寝顔を見られていたタマは顔をしかめる。居眠りしていた自分が悪いので言い返せなかった。
「後、私達との出会いについて思い出してるみたいだった」
「……待って。なんで分かるの?」
ついでと言わんばかりに洋子はタマが思い出していた事を口にする。その正確性にタマは引いた様子でたずねた。
『私の力を使う関係で憑依しとらんでも勘が鋭くなるのじゃ』
「ぶい」
『ただ、歴代巫女の中でもこやつがずば抜けておるが、変人度もトップじゃな。まぁ、雑に扱ってくれて構わんが、仲よくしてやってくれ』
「そうなんだ。分かった」
「あ。そろそろ移動する番みたいですよ」
そんなやり取りをしているとタマ達の列の移動が始まる。パンドラがそれを伝えると洋子とタマは立ち上がった。
「タマは私と同じクラス」
「そうなのか……待って。なんで分かるの?」
「調べたから知ってる。入学式の列は来た人順だけど、タマの後ろになったのは偶然」
「調べられるのっ!?」
「ふふっ。独自の情報網から仕入れてる。悪用はしないから安心して」
「ふ、不安だなぁ」
洋子の言葉にタマは不安になる。一方で洋子は特に気にした様子もなく言葉を続けた。
「ん。改めてよろしくね。タマ」
「あ。ああ。よろしく。葛葉さん」
「洋子でいいよ?」
「まだ呼び捨てで名前を呼ぶのは慣れてないからこのままで」
「むぅ。いけず」
洋子は口をとがらせる。そんな様子に玉藻が言った。
『ほれ。後ろが詰まっとるぞ。早く行くのじゃ。ヨウコとタマよ』
「あ。そうだった。早く行こう」
「うん」
洋子の言葉にタマはうなずくと教室に向かって進みだす。タマ達の九十九士学園での生活が幕を開けるのであった。
これにて第1章 契約編 完結です。
次章からは学生生活のお話の予定。
ここまで読んで下さりありがとうございました。次章もお楽しみに。




