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24話 そうだったっ!? おつかいっ!?

 洋子によって吸われたり、モフモフされたりこと数分。タマは解放された。


「はぁ。満足」

「はぁ。はぁ。酷い目にあった……」


 恍惚とした表情で立つ洋子と非常に疲れた表情でその場にへたり込むタマ。そんなタマにパンドラは声を掛けた。


「大丈夫ですか?」

「……おう。何とかな」


 少し回復したのかタマはゆっくりと立ち上がる。立ち上がったタマに洋子は表情を戻してから言った。


「タマ」

「なんだ? 葛葉さん」

「改めて言うね。ありがとう。君がいなかったら死んでた」

「ああ。無事でよかったよ」


 真剣な表情で礼を言う洋子にタマは穏やかな表情で答えるとお互いに照れ臭くなったのか言葉が止まる。


 しばらくするとパンドラがたずねた。


「あの。ヨウコ。少しいいですか?」

「ん? なに? ……タマのツクモ神さん」


 パンドラがたずねると洋子は反応する。


「パンドラですよ。パンドラちゃんと読んで下さい」

「分かった。パンドラちゃん。どうしたの?」


 パンドラの要望通り洋子はパンドラを呼び掛けながらたずねた。


「タマモはかなり力を持ったツクモ神だと思うのですが、何であんな状況になったのですか?」

「ん。それは私が未熟だっただけ。彼女の力を引き出せなかったから負けた。それだけ」

「そうなのですか?」


 パンドラは玉藻にたずねる。洋子の言葉を玉藻は否定した。


『むっ。そんな訳あるかい。確かに未熟な部分はある。じゃが、ワシの契約者がその辺の雑多な奴らとはわけが違うわい。2日に渡る戦闘と追跡。消耗した上で一般人を無理して助け出してから応援が来るまでずっと痛めつけられたら動けなくなるのは当然じゃ』

「ん。民間人を守るのは当然。でも、玉藻の力を引き出せるなら鵺もこうしてワンパンで倒せてた」


 そういいながら洋子は軽快な動きで拳を振る。その様子に玉藻は抗議した。


『できるかっ!? ワシもお前も術士じゃからなっ!? 本領は結界と妖術の後衛じゃぞっ!? 身体能力は大して上がらんからなっ!?』

「そう? 強化系の術重ね掛けして戦えてたと思うけど?」

『本来のそれはあくまで緊急手段じゃからな? 一時的に力を前借している状態じゃから解除した後で一気に来るぞ』

「え? そうなの?」


 玉藻の言葉に洋子は思わず聞き返す。それに玉藻はうなずいた。


『うむ。そろそろかの』

「うっ」


 玉藻の言葉と同時に洋子はその場に倒れる。タマは慌てて洋子に駆け寄って抱えた。


「だっ大丈夫かっ!?」

「うぅっ。全身が……痛くて動けない」

『タマよ。捨て置け。命には別状はないからな。頑張った事は褒めてやるが、ヨウコが調子に乗って酷使した今の体の上からさらに強化して体を動かしたツケじゃ。自業自得なのじゃ』

「……酷い」


 玉藻の容赦ない言葉にうつぶせの状態で洋子は抗議する。その様子にタマは安堵した。


「そうか。動けなくなっただけか。良かった」

「タマは優しい」

「そりゃ一緒に戦ってくれた相手を心配するのは当然だろ」

「どうしよう。いい子過ぎてお持ち帰りしたい。お嫁さんにする」

「なっなんなんだよっ!? もうっ!?」

「ぐぇっ」


 唐突な洋子の言葉にタマは思わず彼女を落としてから身の安全のために少し距離を取る。受け身は取れずにそのまま顔から行った洋子から潰されるカエルのような声が漏れた。


「あ。悪い」

「……ん。動けないのは変わらないけど、大丈夫」


 体勢を変えることなく、洋子は返事をする。


「そうか。良かった。それじゃあ。そろそろ俺達も行くな」


 洋子の返事を聞いたタマはその場から離れる事を口にする。それに洋子は少しだけ寂しそうに言った。


「置いて……行くの?」

「うっ」


 洋子の言葉にタマは罪悪感に負けそうになる。


『騙されてはいかんぞ。表情や言葉の抑揚が一切変わっとらんから本音なのか冗談なのか分かり辛いが、あれはからかって遊んでおるぞ』

「ちっ。このまま絆してお持ち帰りしたかった」

「本気だったのっ!?」


 玉藻の言葉に対して露骨に舌打ちする洋子にタマはドン引きする。タマモは思い出したように言った。


『そういえば何でお主達はここに居るんじゃ?』

「そうだった。パンドラが言うには結界に巻き込まれたみたいなんだ。玉藻さんは何か知らないか?」


 タマは玉藻にたずねる。玉藻はタマを見ながら言った。


『結界はワシが貼ったモノじゃの。少し待っておれ。ぬぅ。なるほどの』


 玉藻はタマとパンドラを見てからうなずく。


「何かわかったのか?」

『うむ。結界の範囲に入っていたみたいじゃの』

「そこら辺はパンドラが言った通りという事か」

『なんじゃ。分かっておったのか?』


 意外といった表情で玉藻がたずねる。それにタマは頭を横に振った。


「いいや。いきなり巻き込まれたからパンドラから聞いたんだ」

『なるほどな。それなら補足する為に説明するぞ。ワシの貼った結界は一定以上の力ツクモ神を取り込むモノじゃ。その範囲内入ってしまったんじゃな』

「そうか。教えてくれてありがとうな」

『うむうむ。素直なのは良い事じゃ』


 タマの純粋な言葉に玉藻は気を良くする。その横でパンドラがタマの肩を揺らした。


「タマ。タマ」

「どうした?」


 タマはたずねる。パンドラは言った。


「おつかい。忘れてませんか?」

「そうだったっ!? おつかいっ!?」

『ん? どうした?』


 パンドラの言葉でタマは本来の目的を思い出すと慌てた表情を見せる。


「結界から出してくれ。おつかいを頼まれてるんだ」

『なんじゃ? 用事があったのか? まぁ巻き込まれた一般人なのじゃから当然か。ヨウコ。こやつらを帰しても問題ないか?』

「ん。惜しいけど、何でここに居るかも聞いたから問題ない。結界に一般人が巻き込まれる事は稀にある。少し手続きは増えるけど、それはこっちの話。だから帰ってもらっても大丈夫。後、助けもじきに来るはず。本当にタマを連れて帰れないのは惜しいけど」

『そうか。それなら先に出て貰っても大丈夫そうじゃな。タマとパンドラ。お主達もそれでよいか?』


 玉藻はタマに対する執着を見せる洋子の反応を無視してタマ達にたずねる。タマとパンドラは同時にうなずいた。


「ああ。頼む」

「それでお願いします」

『うむ。それならばその場を動く出ないぞ』


 返事を聞い玉藻はそういうと2人に指示を出す。2人が動かない事を確認すると足元が光った。


「うわっ」

『結界内の転移くらいなら洋子に憑依せんでも出来るからの。このまま結界の外へ転移するだけじゃから安心するのじゃ』

「そ、そうか。ありがとうな」


 玉藻の言葉にタマは何が起こっているのか理解して安堵する。玉藻は何かを思いついたのかタマに良い笑顔を向けた。


『そうじゃ。それとこれは主達へのお礼じゃ』


 玉藻はそういうとタマの頬に顔を近づける。霊体のはずなのに唇が頬に触れる感触が伝わるとタマから間の抜けた声が漏れた。


「え?」

『うむ。これはモテモテになる(まじな)いじゃ。これでしばらくの間は老若男女問わず優しくしてくれるじゃろう』

「ちょっ―」

『達者でな。縁があればまた会おう。それとおまけで近くの大きな店の前に出してやるぞ』

「それは助か―」


 タマが何かを言いきる前に音が遠のいて視界が白く染まる。視界が戻るとそこは多くの人でにぎわうスーパーの前であった。


「タマ。戻って来たのですよ」

「あ、ああ。あ。買い物袋」


 タマは何事もなかったかのように戻った光景に呆然としながらも本来の目的を思い出してパンドラに買い物袋を要求する。


「はいですよ」


 パンドラは予想していたのか元の大きさに戻した買い物袋をタマに渡す。タマは買い物袋を受け取る。


「夢……じゃないんだよな?」

「もちろんですよ。それよりも時間大丈夫ですか?」


 パンドラがそう言うとタマは買い物袋に入れていたスマホの時計を見る。そこには12時40分が映っていた。


「やばっ!? 早く買って帰らないと怒られるっ!? お昼なしなっちゃうかも」

「それは不味いですね。急ぐのですよ」

「おうっ」


 そう言うとタマはパンドラを連れて目的の卵を買いに急いでスーパーへ入った。

 洋子と玉藻のコンビとのやり取りと玉藻の礼と本来の目的地へ到着のお話。

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