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22話 くらえ

 タマはパンドラと共に倒れた人のいる交差点に近づく。


 近くまで来ると倒れていた人物の姿がはっきりとしてくる。それは軍服のようなワンピースを着た少女であった。


「おいっ! 大丈夫かっ!」


 タマは倒れていた人に大きな声で話しかける。傷だらけの少女はタマに気づいたのか反応した。


「……逃げ……て……これは……罠」


 少女はかすれた声でたまに警告する。タマはパンドラに言った。


「パンドラ」

「分かってるのです。来ますよっ!」


 パンドラが言うと同時に少し離れたビルの方から大きな音がした。パンドラは言った。


「着地場所は……今いる場所なのです」

「ああ。わかった」


 パンドラの言葉にうなずきながらタマは上を見る。視線の先では大きく跳躍した獣が飛び込んできた。 鬼気迫る表情で襲い掛かって来る獣の前で手を震わせながら剣を構える。


「怖い……けど、絶対に決める。これは守るための戦いだ」


 タマは覚悟を決めると剣が輝き出して炎が灯る。炎はタマを補助するように包み込むと獣が迫って来る速度が遅くなり、獣からの威圧が弱くなる。


「……力を貸してくれるのか?」


 タマは剣に問いかける。問いかけると炎が少しだけ暖かく感じた。


「そうか。ありがとう。このまま力を貸してくれ」


 タマがそういうと剣からの炎が増える。同時に剣を下に構えた。


「くらえ。【フェニク・スラッシュ】」


 獣がタマに噛みつこうと大きく口を開けた瞬間。


 タマはテレビで何度も見て真似をしたレッドの動きを再現して剣を振りあげる。放たれた技は振りあげられた剣に沿って炎が伸びると獣を押し返しながら真っ二つに切り裂く。切られた場所から獣が炎に包まれるとタマは安堵した。


「良かった。決まった」

「おぉ。凄まじい威力なのです」


 パンドラはタマの放った技に感心した様子でしゃべる。


「パンドラ。もういいのか?」

「薬は飲ませたのです。今はその味に悶えているのです」

「そう……か」


 タマは少しだけ少女の方を見る。そこにはまるで地上に打ち上げられた魚ように体をビクビクさせていた。


 あまりにもあられのない姿にタマは何もなかったといった様子で視線を獣の方に戻した。


「……ふぅ。何とかなってよかった。今更だけど体が震えて来た」

「あそこまで動けて怖ったのですか?」


 パンドラはたずねる。


「ああ。怖かったよ。でも、それで動けなかった方がもっと怖いから何とか動けた」

「なるほど。行動できて偉いのですよ。危ないっ!」


 タマが返事をすると同時にパンドラはタマに対して体当たりする。タマはしりもちをついた。


「ったた。パンドラ。何する……んだ」


 タマが文句を言うと同時にタマの頭の上を黒い光が通り抜ける。光が通り過ぎると轟音と共に建物が崩壊した。


 その威力にタマが呆然とするとパンドラが声を掛けた。


「大丈夫ですか?」

「え? あっ。ああ。助かったよ。ありがとう」


 タマは礼を言うと光が飛んで来た方向を見る。そこには炎を吹き飛ばして一回り小さくなった獣が立っていた。


「真っ二つにしたのになんでまだ生きてるんだよ……」


 唸り声をあげる獣を見たタマは剣を構えなおして獣を見る。剣を見た獣は露骨に警戒した様子で距離を取って構えた。


「警戒してるのです。タマ。さっきのは後何発撃てるのですか?」

「出来ても後一発が限界かな。ただ、あそこまで警戒されると当てるのは難しいと思う」

「ん。それなら私に任せて」


 タマがパンドラにそう言うと背後から落ち着いた声がした。声の主がタマの前に出る。声の主は先程まで倒れていた軍服風の服の少女であった。


「お前は……もういいのか?」


 少女にタマはたずねる。少女はうなずいた。


「ん。助けてくれてありがとう。さっきの薬のおかげ動けるまで回復できた。……もの凄く不味かったけど。うっ。あの味を思い出して気持ち悪い」

「お、おう。そうか。無事でよかった」


 さっきまで悶えていた姿を思い出したのかタマは何とも言えない表情で答える。


「ん。さっきの一撃をもう一度出せるなら私が動きを止める」

「いいのか?」


 少女の提案にタマはたずねる。


「いいよ。回復したとはいっても消耗は変わらない。あの獣……鵺を祓える手段があるなら一般の子でもネコでもいいから手を借りたい」

「分かった。頼む。俺は(たまき) タマだ」

「任されたよ。タマちゃん。私は洋子(ようこ)葛葉(くずのは) 洋子(ようこ)。さぁ。やるよ。玉藻。奴の動きを止めて」


 洋子と名乗った少女の姿が変わる。髪色は黒から金へ変わり、その上にはキツネ耳が生える。尻の方には半透明の9本の尻尾が現れると目つきは鋭い物へと変わった。


「やれやれ。人使いならぬツクモ神使いが荒いのじゃ」


 キツネと人が混ざった姿の洋子は呆れを含んだ声でそう言うと1回手を叩く。同時に獣の足元から淡く光る鎖が鵺と呼ばれた獣の四肢を絡めとった。


「ッ!?」


 唐突に現れた鎖を引きはがそうと鵺は暴れ始める。鵺の口元に光が集まると洋子は楽しそうに笑った。


「ほほぅ。思ったよりも粘るのぅ。流石は鵺という所かの。これならどうじゃ」


 洋子はそう呟くと新しく鎖が現れると鵺の口と首に巻き付く。集まった光は鵺の口の中で爆ぜると鵺の口から煙を上げながら動きが止まった。


「ふむ。小娘。しっかりと仕留めるがいい」

「あ。ああ。やるぞ。【フェニク・スラッシュ】」


 タマは暴れている鵺に向かって飛びこんで介錯するように鵺の首を落とす。切り裂いた箇所から鵺の体に火が灯った。


「グ……ガ……」


 鵺は短く恨めしそうに唸るとその体に火が広がって灰のように崩れ落ちた。

 少女:洋子の登場と黒い獣である鵺を祓うお話。

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