20話 巻き込まれた?
商店街を所々寄り道しながら進んでスーパーの前までたどり着くとタマは疲労困憊の状態であった。
「ふぅ………ふぅ。はぁ。休み休み動いたはずなのになんでこんなに疲れてるんだ?」
「今のタマは女の子になった上に小さくなってるのです。元々の体力が減っているのもありますが、小さくなったから歩数が増えてるからだと思いますよ」
パンドラの言葉にタマは何ともに言えない表情になる。
「歩数か。確かに……思ったよりもたくさん歩いたって感じだったからパンドラの言う通りだな」
「それならあそこのベンチで少し休みます?」
「うん。そうだな。そうするよ」
パンドラの提案にタマはうなずく。タマはゆっくりと近くの空いたベンチに向かって移動するとそのまま座った。
「よっこいしょっと」
「タマ。老人みたいですよ?」
パンドラが少し呆れた様子でそう言うとタマは口を尖らせた。
「そうはいっても気合を入れないと座るのもしんどかったんだよ」
「そうですか。あ。足開いてるのです。スカートの中が見えますよ?」
「わわっ」
パンドラが指摘するとタマは慌てて足を閉じる。まだ座った直後だったために視線は集まっていなかったために見られる事はなかった事にタマは安堵した。
「スカートなんですから気を付けてください」
「はい。気を付けます。それと指摘してくれてありがとうな」
「どういたしましてなのです」
タマが礼を言うとパンドラがうなずく。少し休んでいるとタマ達は妙な気配に包まれた。
「っ!?」
まるで水の中に飛び込んだような感触と同時にタマは周囲を見る。さっきまで目の前を歩いていた人が消えていた。周辺の建物などはそのままであるが、色合いは少し黄緑がかった明らかな異常な光景であった。
そんな混乱するタマに対してパンドラは強めの声で話しかけた。
「タマッ!」
「なっなんだ!?」
パンドラの声に動揺した声でタマが返事をする。パンドラは落ち着いた声で言った。
「落ち着くのですよ。まずは周囲に何もいないかの確認をするのですよ」
「あ……ああ」
パンドラの言葉に少し落ち着いてきたのかタマは先ほどよりも少し落ち着いた様子で周囲を見る。
周囲には何もいないのを確認するとタマはパンドラに言った。
「周囲には何もいないな」
「そうですね。ひとまずの安全は確保なのですよ」
「何が起こってるんだ?」
タマはたずねる。パンドラは少し考えてから考えを口にした。
「推測になるのですが、何らかの結界の中に入り込んでしまったみたいです」
「結界の中?」
「はい。誰が原因なのかは分かりませんが、巻き込まれたみたいですね」
「巻き込まれた? 敵……なのか?」
タマは少し緊張した様子でたずねる。パンドラは頭を横に振った。
「それはまだ分からないのです。九十九士が人や周囲の建物等から守るために結界を貼っている可能性もあるのです。結界は人でも作れるので」
「……確かにそれもあるか。なんで俺達も巻き込まれたんだ?」
タマはたずねる。パンドラは少し悩んでから答えた。
「……むぅ。推測ですが、九十九士側であればツクモ神を逃がさないように、ツクモ神側であれば一定の範囲の力を持つモノを取り込む対象にしてるのだと思うのです。今のタマは半分ツクモ神でもあるのでどちらであってもおかしくないのです。それと罠の可能性もあったので最初は襲い掛かってこられてもおかしくないのですよ。なので九十九士側の可能性が高いのです」
「なるほど。それで最初の方は警戒していたんだな。となると九十九士の邪魔にならないようにしないとな」
「そうですね。ただ、どちらにせよ相手側のツクモ神に見つかったら狙われる可能性があるので逃げるなり時間を稼ぐ手段はあった方が良いのです。ツクの作った剣は……箱の中に入れてますよね?」
パンドラはたずねる。それにタマはうなずいた。
「ああ。いつも持ち歩いてる箱の中に入れてきた。ただ、買い物だけだと思って箱は持って来てないぞ」
「それならば私の入っている箱にタマのダンボール・ボックスを繋げましょう」
「いいのか?」
「一部の空間を一時的に共有化するだけなので問題ないのです。タマ。手を入れるのです」
「分かった」
パンドラがそういうとタマは財布と買い物袋をパンドラの箱中に入れる。
「今度はあの剣をイメージしてください」
「分かった」
タマは創から受け取った剣を想像する。すると手に剣の柄の部分の感触が生まれる。タマはそれを握ってから引き抜くとパンドラの箱から創の剣があった。
「おぉ。凄いな」
「ダンボール箱であればタマが力を注いだらどの箱でも出し入れできるのですよ。なので出来るだけ箱は持っていてくださいね」
「ああ。気を付ける」
タマがそう言うとパンドラは満足そうにうなずいた。
「よろしい。これでもし襲い掛かってこられても最低限は抵抗は出来そうです」
「そうだな」
パンドラの言葉にタマはつぶやく。パンドラはうなずいてからもう1つのモノを取り出した。
「後はこれも身に着けるのです」
パンドラはそう言って出て来たのは昔タマが作ったダンボール製の簡易の鎧であった。それにタマは渋い顔をした。
「何で持ってるんだよ……」
「剣の時に邪魔だったので箱に入れたのです。ツクも鎧の方を渡して来たので元々置いて行く予定だったのだと思いますよ」
「そうか……本当に身に着けないとダメ?」
「心許ないとは思いますが、ないよりはマシなのですよ?」
タマの問いかけにパンドラはきっぱりと答える。さすがに自身の身を案じているのは分かっているのかタマは渋々ダンボールの鎧を身に着けた。
「こうしてみるとごっこ遊びの時を思い出すんだけど」
「今は見た目よりも命は大事になのですよ」
パンドラがそういうとタマはうなずいた。
「うん。そうだな。心配してくれてありがとう。そろそろ出口を探してみようか」
「そうですね。ここで無防備な方が危ないのです。目標は九十九士に会うか結界の綻びを見つけるのです」
「綻び?」
タマはたずねる。パンドラは答えた。
「空間が歪んでいる場所です。結界というのは広ければ広いほど脆い箇所ができやすいのです。そこからであれば2人で安全に抜け出せるのです」
「強引に突破……はダメなのか?」
「ダメです。それをしてしまうと危険な方のツクモ神が人のいる場所に出て行って暴れてしますのです」
「……それはダメだな」
タマは真面目な表情でつぶやく。パンドラは同意するようにうなずいた。
「ですよね。だから、綻びを探すのですよ。ただ、結界が広いという事はこの結界を作ったのは相応に強い力を持っている九十九士かツクモ神なのです。九十九士の方が実力者であれば安心なのですが、この商店街一部を囲えるという事はツクモ神だったら相当に力をため込んでいるのです。慎重に進むに越した事はないのです。一緒に抜け出す方法を探しましょう」
「そうだな。俺は何をすればいいんだ?」
パンドラの言葉にタマはうなずいてからたずねる。パンドラは最初の方針を口にした。
「まずは見晴らしのいい場所を探すのですよ。後ろを着いて来てください」
「おう。分かった。それ以外にも何かした方が良い事はあるか?」
パンドラの言葉にタマは従って後ろを着いて行く。
「後は……タマも周囲を見回しながら移動してください。もし何かあれば些細な事でもいいので教えてください。見逃しや私では気づけない事があるかもしれないので」
「分かった」
そう言うとタマ達は結界で作られた商店街の中を歩き始めた。
買い物途中で巻き込まれるお話。




