1話 女の子になってる!?
卒業式を終えて高校へと進学する準備期間である春休み。
環 タマが男子高校生になる直前の環 弾だった頃。その時に学んだことは見知らぬものを迂闊に触らない同意しないという事であった。
「いってきまーす」
「気を付けて行ってくるのよー」
母に声を掛けてから弾は友人と遊びに行く為に外に出た時。
最初に眼にしたのは家の庭と道路を繋ぐ出入口を塞ぐよう『愛媛産直送みかん』を書かれたミカンの描かれたダンボール箱が置かれていた。
それを見た弾は少し迷惑そうな顔をするとダンボール箱を動かす為に近づいた。
「誰だよ? こんな道の真ん中にダンボール箱なんて置いたの」
弾はダンボール箱を隅へと避けるために持ち上げた瞬間。ダンボール箱が唐突に開く。ダンボール箱が急に開くと弾の視界が箱の中か発せられた光で視界が白に染まった。
「うわっ!?」
「ぱんぱかぱーんっ! あなたはこの私っ! パンドラちゃんに選ばれたのですっ! ダンボールの戦士に……」
ダンボール箱の中から発せられた光が収まる。ダンボール箱の中から飛び出して来た妖精のような大きさのパンドラと名乗る少女が小さいダンボール箱に乗って飛んだ状態で歓迎するように言ったのが最初の出会いであった。
笑顔で出迎えたパンドラはその直後に血を吐いて弾の持つダンボール箱の上にゆっくりと不時着する。そのままダンボール箱の中に入ったままその場で真横に倒れた。弾は急に倒れたパンドラを落とさないように近くで見る。
パンドラと名乗った少女は傷だらけであった。
「おっおいっ! 大丈夫かっ!?」
「…………大丈夫じゃないです。私のために……ダンボールの戦士に……なってくれませんか?」
「おっ。おう? それで何とかなるのか?」
弾は慌てた様子でパンドラにたずねる。弱々しくパンドラは小さくうなずく。それに弾は力強く返事をした。
「分かったっ! それで助かるんならダンボールの戦士でもなんでもなってやらぁ」
「……契約……成立ですぅ」
弾の言葉にパンドラが小さくつぶやく。同時にパンドラと彼女が乗っているダンボール箱と弾を中心に光の陣浮き上がる。
陣は覆う様に光の膜に包まれるとパンドラから光のヒモが伸びる。光のヒモは弾の胸の中心と繋がった。
「うおっ!? なっなんだっ!?」
光のヒモが2人を繋ぐと弾が慌てた様子でつながった光のヒモを引きはがそうとする。しかし、光のヒモに弾は触れることなく通り抜けた。
触れられない事を悟ると弾は諦めてパンドラの体を見る。弾から光のヒモを通して何かが流れるとパンドラの体から光の粒子が現れる。
それが送られるたびに彼女の体が徐々に再生し始めた。
「おぉ。体が治って行ってる」
弾がそう言うとパンドラはダンボール箱の上に起き上がる。パンドラは弾に向かって頭を下げた。
「契約をしてくださってありがとうございました。あなたのおかげでギリギリの所で命を繋ぐ事が出来ました」
「ああ。無事でよかったな。ってか。何かさっきより大人びてないか?」
弾は思った事を口にする。パンドラはうなずいた。
「契約の義は高位の神……世界ではツクモ神でしたか。ツクモ神と人の子が特別な契約をする為の特別な場です。契約の義を悪用できないように情報はパンドラの体を借りた義のシステムが担当します」
「そうなのか。今はシステム……さんか。システムさん。パンドラはこの話を聞いてるのか? それとこの義が終わったらさっきの怪我が戻るとかないよな?」
「話を聞いているのか? という情報については「はい」です。私が表に出ているのは下手な私情が入らないよう代役をしているだけです。必要であれば彼女の代弁を私が行います。それと怪我については終わっても両者が万全の状態になります。どちらかが瀕死では契約の義どころではありませんから」
「そうなのか。怪我が治ったままならよかった」
「お優しいのですね?」
パンドラを介したシステムがそういうと弾は少し困惑した様子で答えた。
「いや。死にかけてたら普通に助けるだろ。それと俺に何か起こるとかはないよな? 寿命が削れるとか体のどこかを捧げられるとか」
弾はたずねる。それにパンドラは頭を横に振った。
「今回の契約については命などの物理的な対価はありません」
「そうか」
弾は安堵する。システムは言った。
「それでは契約の処理を開始します」
「ああ。分かった」
弾が返事をするとパンドラは契約について話し始めた。
「まずは彼女の言うダンボールの戦士についてです。ダンボールの戦士とは神である彼女の力の一端を受け取り、彼女と共にある者だそうです」
「つまり力を使ってパンドラを守ってやればいいんだな?」
弾は考えを口にする。それにシステムはうなずいた。
「はい。その認識で構いません。同時にパンドラもあなたを愛すべき子として庇護の対象になります。共に過ごして欲しいそうです」
「そうか。一緒に居てやればいいんだな」
「そうなります」
弾の言葉にシステムが肯定する。弾はパンドラと繋がった光のヒモについてたずねた。
「今パンドラと繋がってるこれは何だ?」
「これは力と命の共有用の線です」
「命の共有?」
「人の子の体は脆い代物です。直接神の力などを渡そうものなら瞬時に風船が破裂するように爆散してしまうので安全に力をなじませるための安全弁です」
「それは恐ろしいな」
システムの説明に弾は冷や汗をかく。
「この方法であれば契約する神と人の子の相性さえ悪くなければ例え赤子であろうと失敗なく行えるようになるのです」
「それなら安心……か?」
ひとまず弾は納得する。同時に優しく暖かい何かが弾の中に流れ込んで来た。
「おぉ。何か流れ込んできた」
「それがパンドラの加護と力の一部です」
「これが……一応、何も問題ないんだよな?」
弾は流れ込んでくる力に心地よさを感じながら思った事を口にする。システムは少し考えてから答えた。
「はい。もし何かあるとすれば人の子と神の相性が良すぎる時でしょうか。悪い場合はそもそも契約出来ないので」
「その場合はどうなるんだ?」
「その場合は神の力が人の子に多く流れ込みます。そして、何が起こるかはこちらでは判別…………別……別べつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつべつ——」
「うぉっ!? どうしたっ! っ!」
急に壊れたようにしゃべり続けるシステム弾は慌てる。同時に荒れ狂った力の奔流が弾に押し寄せる。
「うっうわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
弾を中心に強烈な光が周囲を塗りつぶす。弾は意識が飛ばないように必死に耐える。しばらくすると光が収まった。
「…………何とかなった……のか? っ!? 声が」
辛うじて意識を保っていた弾はつぶやく。弾の口から聞き覚えのない可愛らしい声が聞こえると弾は慌てて自身の体を見た。
最初に眼に着いたのは目線と地面の近さであった。
次に明らかにサイズの合っていないパーカーと完全にずり落ちたズボンとパンツ。パーカーの袖とパーカーの下部分とずり落ちたズボンの間から見える白く細い手足。
そして、頭の上から垂れるのは金色の髪。
弾は当たって欲しくない嫌な予感と共に自身の胸元とパーカーで隠れている下半身にそっと手を伸ばした。
「上は……ない。下……もないっ!? 女の子になってるぅぅぅ!?」
弾は叫びと共に女の子になっていた。
プロローグのタマが男の子から女の子になるまでのお話。
次回は混乱と親とのやり取りの予定。次の更新は11/30(日)頃の予定です。
ここまで読んで下さりありがとうございました。次回もお楽しみに。




