16話 俺が?
タマが女の子になった次の日の朝。
10時の少し前くらいにタマはパンドラと共にリビングで待っていた。タマが時計を見た後に口を開いた。
「そろそろかな」
「そういえば車の中で昨日ダンボールの剣を作ってる人が持って来てくれるって言ってましたね。お友達でしたっけ?」
昨日の車内で話していた事を覚えていたのかパンドラはタマの友人について口にする。それにパンドラはうなずいた。
「ああ。俺の友達だ。あいつ几帳面だから時間の指定してないならいつもこの時間くらいに来るぞ。その時に紹介するぞ」
「そうなのですか。楽しみなのです」
タマがそういうと同時に家のチャイムが鳴った。
「来たみたいだな」
「おぉ。本当に10時きっちりに来たのです」
タマの言葉で時計を見ながらしゃべっていたパンドラが本当に言った通りの時間にチャイムが鳴った音に驚く。
「行こう」
「はいなのですよ」
タマの言葉にパンドラは自身の箱に入って浮き上がる。パンドラはそのままタマの頭の上に着陸する。タマは小さなダンボール箱を前に抱えると玄関へと向かった。
「はいはーい。今空けるぞ」
タマはそう言いながら扉を開ける。扉を開けるとそこには野獣のような見た目の大男が待っていた。
男は頭を下に向けるとタマに対して低く落ち着いた声で言った。
「来たぞ」
「わぁお。すごく大きいのです」
タマの頭の上からさらに見上げないと顔が見えない男に呆然とした表情でつぶやく。タマは特に気にした様子もなく、目の前の男に言った。
「待ってたぞ。ツク。こんなになったが俺だ。弾だ」
「……弾は小さくなったな」
ツクと呼ばれた男はタマに対して口を開く。タマは呆れた様子で言った。
「うっせ。確かに小さくなったけど、お前が元から大きいだけだろ。……また大きくなったのか?」
タマは見上げながら前回見たよりもさらに大きくなったツクにたずねる。それにツクはうなずいた。
「休みの間で195m超えたぞ」
「……おいおい。まだ成長してんのか。確か前は190くらいだっただろ」
タマの言葉にまだ身長が伸びていく目の前の男が特に表情を変えることなく答える。少しだけ間が空くとパンドラはタマに話しかけた。
「タマ。タマ。目の前の男性の紹介をしてください」
「おっと。そうだったな」
「タマ? それにずっと頭の上にいる妖精は誰なんだ?」
タマとパンドラのやり取りで違う名前が呼ばれた事とパンドラについてツクが頭を傾げる。タマは思い出したように答えた。
「おう。女の子の姿になったのは伝えたけど、他は言ってなかったな。色々あって今の姿の時はタマって名前を名乗ってるんだ。で。頭の上に居るのがパンドラ。俺と一緒に居てくれてるツクモ神だ」
「そうか。俺は田中 創と申します。タマからはツクと呼ばれているので好きに呼んでください」
「ご丁寧にどうもなのです。パンドラです。ダンボール箱のツクモ神です。タマと同じようにツクと呼ばせてもらいますね。それと敬語は不要ですよ」
思ったよりも礼儀正しい言葉にパンドラも困惑した表情で返す。パンドラの要望に創は言った。
「分かった。これでいいか?」
「はいなのです」
「よろしく頼む」
「はい。よろしくなのですよ。……タマ。どうしましょう? 会話が続かないのです」
短い返しにパンドラはどう接したらいいのか分からずに下のタマに話しかける。
「そこまで気にしなくても大丈夫だぞ。単純に口下手なだけだからな。思った事は口にしてやってくれ。嫌なら嫌ってはっきりいう奴だから。色々と喋って慣れてくれ」
「なるほど。職人みたいな人なのですね」
パンドラはタマの言葉に思い浮かぶ身内がいるのか1人で納得すると落ち着く。その様子にタマはうなずいた。
「そうだな。パンドラの言う通りに職人みたいにめっちゃ器用なんだぞ。ツクは」
「そうなのですか?」
パンドラは創にたずねるとうなずいた。
「『それなりに』が付くがな。色々作っているが、まだまだ修行中の身だ」
「なるほど。確かに職人なのです。ちなみにタマが言っていた剣は持ってきたのですか?」
「ああ。これだ」
そういうと創は持ってきたケースの中から剣を取り出す。取り出されたソレは赤い鳥のモチーフのある剣であった。特撮に出てくるような装飾の剣はダンボール製とは思えないくらいに精巧であった。
剣を見たパンドラは驚愕した様子で言った。
「これは……すごいですね。まさか、ダンボールでこんな代物を作り上げてしまうとは。見た目だけでも本物のような出来なのですよ」
「な。凄いだろ? ツクの作った剣。色んなの作って実際に賞とったりもしてるくらいなんだぜ」
「なるほど。世間からの評価もされてるのなら納得の出来ですね」
タマは我が事のように自慢する。パンドラは納得した様子で創を見ると視線を逸らした。
「……」
「……なんで目を逸らしたのですか?」
「ああ。それは照れてるだけだぞ」
「照れていない」
タマがはっきりとそういうと即座に創が否定する。あまりにも流れるようなやり取りにパンドラは言った。
「なるほど。これが夫婦漫才という奴ですか」
「「違う(ぞ)」」
パンドラのある意味偏った言葉にタマと創が同時に口にする。パンドラは特に気にした様子もなく言葉を続けた。
「でも、これがあれば使えそうですね」
「その剣が必要と言っていたが、どうするんだ?」
パンドラの言葉にタマが思い出した様子でたずねた。
「はい。ダンボール製というのが重要なのです。これを一時的ではありますが、本物にするのです。タマが」
「俺が?」
「本物に?」
パンドラの言葉にタマと創は頭を傾げた。
タマの友達である創と作り出されたダンボール製の剣のお話。




