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14話 ただいま

 検査を終えたタマとパンドラが桜と合流してから数十分。日が落ちて夜の始まるころにタマ達は自宅へとたどり着いた。


「着いたわよ」

「ふぅ。やっと家に帰って来れた」


 桜の言葉にタマが反応する。それを見た桜は言った。


「お疲れみたいね。車を車庫に戻すからパンドラちゃんと先に戻ってなさい」

「分かった。荷物も一緒に持って行くね。『ダンボール・ボックス』」

「助かるわ」


 タマはそう言うと早速といった様子でダンボール箱に購入した荷物を入れていく。全て入れ終えるとタマはダンボール箱を抱えてパンドラと共に車を出た。


「ふぅ。パンドラ。行くぞ」

「はいなのですよ」


 タマはパンドラをダンボール箱に乗せて勝手知ったるわが家の扉を開ける。


「ただいま」

「ですぅ」


 タマがそう言うと家のリビングの方から足音が聞こえた。足音が徐々に近づいて来ると弾の時の姿をより幼くした活発そうな少年がリビングの方から出て来た。


「おかえ……り? …………誰?」


 少年はタマとパンドラを見て少し困惑した様子でたずねる。タマは頭を傾げた。


「誰って。兄の弾だぞ? 何言ってるんだ? 裕理(ゆうり)

「え? 兄ちゃん……なの…………か?」


 信じられない様な表情で弟の裕理はタマを疑う。その様子にタマの頭の上にいるパンドラがたずねた。


「ご兄弟ですか?」

「ああ。弟の裕理(ゆうり)だ。2つ下で今年中学2年生になる」

「弟さんですか。私はパンドラ。お世話になりますね」

「え? あっ。よ、よろしく?」


 パンドラの朗らかな声で挨拶すると困惑した様子で裕理は返事を返す。そのまま裕理は言葉を続けた。


「って!? そうじゃなくてっ!? どういう事っ!? 兄ちゃんが女の子で小さい女の子と一緒の姿で…………父さぁぁぁん!?」


 裕理はそう叫びながらリビングの方へ走り去っていった。


「……行っちゃったですよ」

「まぁ、混乱してたしな。父さんを呼びに言ったって事は帰ってきてるんだ」


 そういうと裕理の時とは対照的に落ち着いた足取りが近づいて来る。少しすると縦にも横にも広い屈強そうな男が出てきた。後ろに裕理を引っ付けた状態で。


 男は落ち着いた声で言った。


「帰って来たか。弾。おかえり」

「ただいま。父さん」

「母さんから話は聞いている。大変だったな」


 タマの父は膝をついて目線を合わせながらしゃべる。安心させるような穏やかな声音にたまはうなずいた。


「うん。父さんは驚かないんだね」

「ツクモ神が相手だと何が起こってもおかしくはないからな。母さんから話を聞いて途中で仕事を抜けて来た」

「良かったの?」


 九十九士でそれなりに忙しい身でもある父が途中で仕事を抜けてきたという内容にタマは少し心配そうにたずねた。


「息子の一大事だ。同僚や後輩も頼りになるから問題ないぞ。弾の持っている箱の上の子が契約したツクモ神だな。私の名前は環 宗次郎(そうじろう)。甲級2級の九十九士をしている」

「そ、そうですか。私はパンドラです。ダンボール箱のツクモ神をしています。あなたの息子さんと契約させてもらいました」

「そうか。パンドラというのか。私の事は宗次郎でいい。よろしく頼む」

「よろしくです。ソウジロウ」


 ソウジロウの大きな指とパンドラの小さい腕で握手をする。和やかな雰囲気の中で宗次郎の後ろにいた裕理が口を開いた。


「父さん……知ってたの?」

「ああ。母さんから連絡が来てたからな」


 宗次郎がそういうと裕理は恨みがましい表情で言った。


「……先に言ってよ。いきなり知らない女の子が入って来てビックリしたんだけど」

「そうか。伝え忘れていた。すまんな」

「むぅ」


 なだめるように軽く頭をポンポンとしながら宗次郎は息子である裕理に謝罪する。若干納得がいかなさそうな表情をしながらも裕理は宗次郎の後ろから出て来る。


 そこから裕理は頭を下げた。


「兄ちゃ……姉ちゃん。大変だったな。さっきは動転してた。疑ってごめんなさい」

「いいよ。ここまで姿が変わってたら分からなくても無理はないしな。それよりも仲直りだ」

「うん」


 タマの言葉に裕理は笑顔で答える。


「それと色々あって元の名前だと問題があって今の名前はタマになったから。この姿の時はそう呼んでくれ。日常から呼ばれ慣れてないと間違えそうだから練習のために」

「分かったよ。タマ姉」

「……タマ姉」


 裕理の素直な言葉にタマが詰まる。その様子に裕理は心配そうに言った。


「嫌だった?」

「いいや。問題ないぞ。少し予想外だっただけだよ」

「良かった」


 タマの言葉に裕理は安堵する。それにタマは自慢気に言った。


「かわいい弟だろ?」

「そうですね。タマ同様に純粋そうです。裕理さん。ちなみに私の事もパンドラお姉様と呼んでもいいですよ? 私も弟が欲しかったのです」

「そういえばパンドラさんはタマ姉と一緒の部屋でよかったよね」

「なんでですかっ!?」


 他人行儀な返しにパンドラが驚く。それに裕理は答えた。


「だってパンドラさんって姉って感じがしないし。しいて言うなら姉の友達?」

「な、何故友達枠? というか一家して何故姉に見えないというのですか? い、いえ。気を取り直すのです。取り合えずは改めてよろしくですよ。ユウリ君」

「うん。よろしく。さっきは逃げてごめんね」

「気にしなくても良いですよ。あの状態ではそうなってもおかしくないのですから」

「うん。ありがとうね」


 パンドラは釈然としない様子になりながらも裕理と握手をする。そうしているとたまの背後から声が聞こえた。


「あらあら。問題なく受け入れられたみたいね」


 タマが頭だけを後ろに向けると桜が居た。


「母さん。うん。最初は混乱してたけど、いつもの裕理だったよ」

「そう。良かったわね」

「うん」


 最初は拒否されていたが、きちんと受け入れられたことにタマは嬉しそうにうなずく。それを見た桜は言った。


「さて。兄弟の仲も問題なさそうだから晩御飯の準備をしないとね」


 桜がそう言うと宗次郎は口を開いた。


「夕飯は作っておいたぞ。麻婆豆腐と回鍋肉でよかったか?」

「あらら。作ってくれてたのね。ありがとう。愛してるわ。あなた」

「ああ。俺も愛してるぞ。桜」


 宗次郎と桜はハグをしてから自分の世界を作り出す。その様子にパンドラはたずねた。


「いつもこんな感じなのですか?」

「うん。いつもこんな感じ」

「アツアツですね」

「だろ?」

「私の所もこんな感じなので仲のいい一家なのですよ」

「ああ」


 パンドラの問いにタマは即答する。子供達とパンドラが見ている事を思い出したのか桜はハグから離れると軽く咳払いしてから言った。


「こほん。タマちゃんは箱に入れた物を部屋に置いたら降りてきなさい。下着とか服の保管の仕方とかは教えないと行けないから後で一緒にしましょうね」

「分かった」

「私のも一緒に置くので着いて行くのです」

「ああ。行こう」


 そういうとタマとパンドラは荷物を置きに行く。そのまますぐに降りると家族と共に夕飯を楽しむのであった。

 帰宅と家族のお話。

 次回はタマとパンドラの夜の会話のお話の予定。そこが終わったらタマの幼馴染に会いに行きます。次の更新は1/18(日)頃の予定です。


 ここまで読んで下さりありがとうございました。次回もお楽しみに。

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