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13話 ひゃうんっ!?

「タマ。今から少し流れる力を強めるのです。私の居る右手から流れている力の流れを辿ってください」

「分かった」


 タマが返事をするとパンドラは流れる力を強めた。それにタマが反応した。


「ひゃうんっ!?」

「どっどうしました?」


 タマが裏返った声と共に目を開けて一瞬だけ体を大きく震わせる。その反応にパンドラが少し慌てた様子でたずねるとタマは答えた。


「い、いや。一瞬だけゾワッて来たから。つい」

「なるほど。力を使った事がないから敏感なのですね。少しガマンしてください。そうすれば慣れるのです」

「お、おう」


 タマは困惑しながらももう一度目を閉じる。するとパンドラの乗っている右手から力が流れ込んできた。


「んっ」


 タマは短く声を上げるとパンドラは再度声を掛けた。


「大丈夫そうですか?」

「……ああ。最初はビックリしたけど、慣れてきた……かも? なんかお風呂の中に入ってるみたいだ」


 パンドラの流している力に慣れて来たのか穏やかな表情で答える。パンドラは念を入れるように言った。


「そうですか。そのまま寝ないように注意してくださいね」

「了解。ここからパンドラから流れてくる力を追えばいいんだな」

「そうです。しっかり意識を向けてくださいよ。自分の力の手綱を握れていないのは危ないので」

「……分かった」

「うんうん。素直なのは偉いですよ」

「……」


 タマは聞こえていないのか返事をしない。その様子にパンドラは少し嬉しそうに言った。


「うんうん。しっかり集中できてるみたいですね。これならすぐに見つけられそうですね」

「……これか?」


 パンドラがそう言った直後に何かを見つけたのかタマはつぶやく。同時にタマは自身の中にある力を動かすとパンドラはうなずいた。


「そうです。その力が私と今のタマの力ですよ。このまま少し力を強めてみてください。最初の出し方さえわかれば後は簡単なのです」

「分かった」

「上手ですよ」


 パンドラが指示を出すとタマは流す力を増やす。それをパンドラが褒めるとタマが少し照れた。


「そ、そうか?」

「はいですよ。とはいえです。タマはまだ初心者さんなのでその力をダンボール箱に注ぎながら『ダンボール・ボックス』と唱えてください。車で見せた時のを思い出しながらだとなお良いですよ」

「分かった。『ダンボール・ボックス』」


 タマは車の中で見た光景の事を思い出しながらダンボール箱に力を注ぐ。すると金棒を立てたダンボール箱に変化が起こった。


「おおっ! 金棒がっ!」


 金棒を支えていた出井門は驚きの声を上げる。その声を聞いたタマは目を開けて最初に見たのは音もたてずに金棒がダンボール箱に吸い込まれて行くように見える光景であった。


「おぉ」


 明らかにハミ出ていた金棒が抵抗もなくダンボール箱に出入りする光景にタマは感動した声を上げる。そんなタマの様子に我が事のようにパンドラは言った。


「成功ですよ。やりましたね」

「ああ。パンドラのおかげだよ。それにしても消耗はしないんだな」


 タマは自身の力を注いだダンボール箱を見ながら思った事を口にする。それにパンドラが答えた。


「それはそうですよ。箱内に保管するための空間の作成・拡張と出入口を作成するための力なので消費は最初だけなのですよ。後は少ない力で自由に出し入れできるのです」

「箱が変わるとどうなるんだ?」

「その場合は出したヒトに依存するのですよ。箱が変わってもタマが入れた分はタマにしか出し入れできませんし、私が入れた分は私しか出し入れできませんから気を付けてください。後、保管する空間の時間は止まらないので中に入れた物を忘れると悲惨な事になるのですよ」


 経験談なのかパンドラの表情が曇る。


「何があったんだ?」

「私のおやつがカビだらけになったのです」

「え? 生物も入れるのか?」


 タマは気になった事をたずねる。パンドラはそれを肯定した。


「ダンボールに入るなら何でも入れるのです。それと空気については出入口を閉めた時だけ止まりますね。ただ、生物については空間を閉じる時に弾き出されるようにしているのと出入口からは誰でも簡単に出入りできるのです。カビが生えた時のは単純に閉め忘れたのですよ」

「それはご愁傷様だな」


 割と自業自得な理由ではあるがタマは何とも言えない表情でそう言うとパンドラは同意した。


「そうなのですよ。しかも、雨季で湿気も多かったのが災いしたのですよ」

「そうか。大変だったな」

「なのでタマも気を付けるのですよ。特にダンボールと繋がった空間の中は見えないので忘れると一生出て来ないのです」

「お、おう。気を付けるよ」


 真剣な表情でパンドラの忠告にタマは困惑したままうなずく。そんなやり取りを黙って聞いて待っていたのか金棒を持った出井門が口を開いた。


「ふむ。もういいかな?」

「っ!? はい。大丈夫です。出井門先生」

「そうかい。君達の力は見させてもらったよ。素晴らしいねぇ。誰が持っても空の箱と同じ重さで1トン以上のモノを運べるとなると計り知れないね。戦闘力はないとはいえ正直、すぐにでもお手伝いをお願いしたいくらいだよ」

「タマを便利には使わせないですよ? 最悪の場合は頭を下げてでもお父様とお母様の力を貸してもらうのもやぶさかではないのです」


 パンドラが警戒した様子でそういうと出井門は苦笑した。


「それは勘弁して欲しい所だね。もちろん。そんなつもりはないよ。本当の緊急時はお願いするかもしれないけど、大人だけで何とかなるような仕組みを作ってるから大丈夫だよ」

「そうですか。くれぐれもそうならないようにお願いしますね」

「もちろんだとも」


 出井門がしっかりとうなずくとパンドラは警戒を解く。タマはそんなやり取りをしていた2人にたずねた。


「他に何かすることはあるのか?」

「そうですね。他にはあるのですか?」

「今日の検査は以上だね。とりあえず3日後辺りかな。経過を診たいからもう一度来てもらおうかな。いいかい?」


 出井門がたずねるとタマはうなずいた。


「わかりました」

「それなら親御さんの元へ戻り給え。道は大丈夫だね?」

「はい」

「大丈夫ですよ」

「そうかい。そらなら気を付けて帰りなさい。お疲れ様」


 出井門の言葉を聞いたタマとパンドラの2人は母である桜の元へと進み始めた。

 タマが能力を使えるようになるまでのお話。

 次回は1日の終わりの予定。この後は手続きを終えた桜の元に戻ってから家に戻るだけの為、少し飛ばします。次の更新は1/14(水)頃の予定です。


 ここまで読んで下さりありがとうございました。次回もお楽しみに。

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