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12話 決めました

「そう。九十九士(つくもし)学園。九十九士を育成するための学園さ」


 出井門がそういうとタマが少し慌てた様子で言った。


「いや、それは分かるよ。でも、何で?」

「タマは何でそんなに動揺しているのですか?」


 タマの慌て様にパンドラがたずねる。タマはパンドラに説明した。


「だって九十九士学園って九十九士を目指している意識が高い人が入学する場所だよ? そんな場所に仮に入学したとしても目的もなく入学したら絶対浮くよ?」

「なるほど。自分の心配をしてたのですね」


 タマの心配事に呆れた様子でパンドラは見る。それを誤魔化すようにタマは出井門に話を振った。


「そ、それで改めてたずねるんですが、何故九十九士学園を勧めたんですか? それにそれを受けたとしてそもそも入れるんですか?」

「ふむ。まず、入学できるかという問いについては出来ると答えよう。九十九士学園は九十九士を育成する学園であると同時に高位のツクモ神との契約者を守る場所でもあるからな」

「守る?」


 タマが頭を傾げると出井門は言葉を続けた。


「ああ。タマ君が思うよりも高位のツクモ神を狙う人間や力を求めるツクモ神は多いからね。それにパンドラ君も他のツクモ神に狙われた事があるだろう?」

「そうですね。タマ。どうします?」


 パンドラがたずねるとタマは困った様子で言った。


「うーん。少し迷ってる。元々進学予定の所でもいいんですよね?」

「もちろんさ。君の進学予定の学校にそのまま進学するのもOKさ。学費についてはどちらであっても国が払う仕組みになっているからな。ただ、九十九士学園なら日中は教員たちや九十九士が守ってくれるし、身を守る方法は身に着けて置いて損はないから勧めてみた。前者を選ぶならその場合も国の方から護衛を派遣しよう。まぁ、どちらにしても今の症例の研究や実験には協力してもらうからその報酬の先払いでもあるがね」

「そうですか……」


 タマはどちらにするか迷う。その様子に出井門は微笑んだ。


「ふむ。迷っているみたいだな」

「当たり前ですよ。人生に関わる事だし」


 タマは真面目な顔でそう言うと出井門は優しく言った。


「そうだな。ただ、どちらにしても新しい制服等の準備を考えると今日中に決めた方がいいだろう。今の君の体は女の子のそれだからな。準備しなおしだ」

「あ。そうか……制服も新しいのが必要だった」


 今の状況を思い出すとタマは小さくなった体を見てから何とも言えない表情に変わる。


「迷うのは若い子の特権だから大いに迷うと良い。そうだな。それだけだと判断に困るだろうからもう1つ良い事を教えてあげよう。九十九士学園にはツクモ神についての文献や資料が多くある。当然君と同じような条件で姿が変わった例の資料もね」

「っ! 出井門先生はその資料については?」


 戻る方法の一助になるかもしれない情報にタマは真剣な表情でたずねる。それに出井門は頭を左右に振った。


「申し訳ないが、覚えているのはそういう症例があったなという情報だけだね。資料自体も古今東西の情報が資料として集まっている上にとてつもなく古くてマイナーな資料で他にも色々と覚えなきゃいけない事は多かったから流し読みだったからね。流石に全部覚えるのは私には出来ないよ。それにそれらの資料は持ち出しも出来ない仕組みになっている。すまいないね」


 出井門が少しだけ申し訳なさそうに答えるとタマは頭を下げた。


「そうですか。無茶言ってごめんなさい」

「気にしていないよ」


 出井門が優しく言うとタマは決意した表情で言った。


「うん。決めました。俺は…………九十九士学園に行きます」

「ほう。提案はしたが、本当に良いのかい?」

「はい。出井門先生の言った資料については俺達で調べてみます」

「しっかりと決められて偉いのですよ。もちろん。私もお手伝いしますよ」


 出井門の問いにタマはしっかりと宣言するとそれを好意的な様子でパンドラも協力することを口にする。その様子に出井門はうなずいた。


「そうかい。わかった。協会の方には私から伝えておこう」

「ありがとうございます」


 タマが礼を言うと出井門は立ち上がった。


「うむ。こちらから提案した事だから気にしないでくれたまえ。体の状態や身長体重といった大体の情報はさっきのモノクルでの診断で終わっているから次は君がパンドラ君から引き出せる力の確認だな。ホールの方へ移動しようか。着いて来てくれ」

「行きましょう」

「ああ」


 そういうと出井門は診察室を出る。タマはパンドラを連れて出井門の後をついて廊下を進み上って来た階段とは別の階段を下りる。降りた先の通路を進んで行った先の部屋の1つに入るとそこは広いホールであった。


 明らかに入った施設よりも広大なホールにタマとパンドラは驚いた。


「広い……」

「ですね。明らかに廊下の部屋同士の感覚よりも広いです」

「ここはリハビリルームを兼ねている多目的室の1つだよ。空間を拡張して外に影響を与えないように調整しているんだ。これだけ広ければどんな力が暴走しても問題ないからね」


 出井門は説明する。それにタマとパンドラは納得した。


「なるほど」

「そうですね。ただ、期待している所申し訳ないですが、今の段階だとタマが出来る事は爆発とかはしないのですよ」

「ふむ。この場で出来そうなのはあるかね?」

「それだったらダンボール・ボックスですね」

「そうかい。効果を聞いても?」


 出井門はたずねる。パンドラは答えた。


「もちろんです。ダンボール箱をゲームのアイテムボックスのように容量を拡張できるのです」

「ふむ。重さは?」

「容量を超えなければ空のダンボール箱と同じ重さですね。容量を超えた場合はその重さだけがダンボール箱にそのままかかりますね」


 パンドラが説明すると出井門は満面の笑みを浮かべた。


「すばらしい。輸送という面では破格の性能だな。それならこれを入れてみてくれないか?」


 そういうと出井門の手に彼女の身の丈と同じ位の金棒が出てくる。


「金棒?」

「ああ。これは携帯用の金棒だよ。鬼と言ったら金棒だからね」


 そういうと金棒をゆっくりと床に立てる。タマは金棒を持ち上げようとするが、重すぎて微動だにしなかった。


「うっ…………ぎぎ……………駄目だ。全然動かない」

「微動だにもしてないですね。どれくらい重いのですか?」


 パンドラはたずねる。出井門は笑って答えた。


「はっはっは。持ち上がらないのは当然さ。特別な金属を圧縮して加工している関係でこれ1つで1トン近くあるからね」

「とんでもないですね」

「これを十全に扱うための鬼のメイクだからね。これをしておかないと振り回す事が出来ても自由自在という訳には行かないさ」

「素の力も相当なのです。医者とは思えないです」


 出井門の言葉にパンドラはドン引きする。


「医療行為を行うためには暴走した患者の意識を刈り取る戦闘力も必要だし、患者を安全な場所に運ぶにも力は必要だからね。ちなみに九十九士を兼任している医師は大体私よりも強かったりするよ」

「ひえぇ。お医者さんでそれとかどれだけ修羅なのですか。この国の九十九士というのは……」


 出井門の情報にパンドラはビビる。


「はっはっは。長年ツクモ神を相手に生き延びる為には様々な事を試すし、それらの審査は年々ハードルが上がると自然とね。よっと」


 出井門は軽い声と共にタマが持ち上げられなかったあっさりと金棒を引き上げる。持ち上げた金棒を持った出井門はたずねた。


「これをどうすればいいんだい?」

「合図したらデイモンはタマが無意識にかぶっているダンボール箱の中に入れてください。タマは頭に引っ掛けているダンボール箱を開けてください。最初は私が補助するのです」

「分かった」

「了解したよ」


 パンドラは出井門とタマに指示を出す。タマは自分の頭に引っ掛けていたダンボール箱を持ち上げてひっくり返して物を入れられる状態にする。


 パンドラはタマの右手の甲に寄り添うように乗るとたまの右手を中心に暖かい何かが流れて来た。


「これは?」

「感じましたか? それがダンボールの力を扱うための素になる力です。まずはこれを自由に引き出せるようにしましょう。私の指示しに従って集中してください」

「分かった」

「まずは目を閉じて」


 パンドラがそう言うとタマは目を閉じた。

 タマが九十九士学園に行く事を決めるのと力の一部の使い方のレクチャーのお話。

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