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11話 提案?

「「こ、こんにちは?」」


 歓迎されたこともあってタマとパンドラは緊張した面持ちで挨拶を返す。悪魔のような風貌の女性? は凶悪な笑みを浮かべると落ち着いた声で言った。


「ようこそ。私は出井門 まどか。鑑定九十九士でもあり、医師でもあるよ。下の階から端末で事情は聴いているよ。タマ君。パンドラ君」


 出井門が2人の名前を呼びながらそう言うとパンドラは興味のある言葉をたずねた。


「鑑定?」

「そう。鑑定。ツクモ神の能力を調べたり、ツクモ神案件で肉体が変わった人の診察をしたりしているのさ」

「す、すごい人なのですね。私がパンドラで一緒に居るのがタマです。そ、それでなんでそんな顔をしてるのですか?」


 はっきりとした声で説明する出井門にパンドラは一番印象に残っている風貌についてたずねる。


「このメイクかい?」

「メイク……なのですか?」


 パンドラが困惑した様子で頭を傾げる。


「ああ。これは出井門家に伝わる化粧だね。この化粧をする事でツクモ神からの悪い干渉を無効化することができるのさ」

「化粧だけでそんなことができるのですか!?」


 出井門のセリフにパンドラが驚く。


「もちろんさ。化粧道具のツクモ神の力ではあるがね」

「なるほど。ツクモ神の力が混ざってるのですね」


 出井門の説明にパンドラが納得する。一方で話を聞いていただけのタマは微妙な表情で言った。


「……正直、何を言ってるのか全然分かんない」

「まぁ、子供なら分からないか。とりあえずツクモ神の力に対する保険をかけていると思ってくれたまえ」

「分かった」

「まずはイスに座りたまえ」


 タマがうなずくと出井門はタマとパンドラを招いた。タマはパンドラを連れて椅子に座った。出井門が席に着くと机に置かれた箱を開ける。中には片方だけの眼鏡が入っていた。


「眼鏡?」

「正解。正確にはモノクルだよ」

「それもツクモ神なのですか?」

「そうだよ。これでツクモ神による変化であれば確認できるのさ」


 そういうと出井門はモノクルを装着する。モノクルは青白く光るとタマの状況を見てから言葉を続けた。


「なるほど。これは珍しいな」

「何かわかったのか?」


 タマは出井門にたずねる。彼女はうなずいた。


「ああ。これはタマ君とパンドラ君……君達2人の相性が良すぎたのか類を見ない程に綺麗に混ざり合っているね」

「それは問題なのですか?」

「相性がいい事は悪い事じゃない。だが、君達は相性が良すぎるせいでパンドラ君の神としての力がタマ君と混ざり合って半神となっているよ」


 出井門の言葉にタマが頭を傾げた。


「半神?」

「そう。半神。君は今パンドラ君に近い存在になっているよ」

「やはり……そうですか」


 出井門の言葉で予想がついていたのかパンドラがつぶやく。それにタマがたずねた。


「分かっていたのか?」

「確信はなかったのです。感じる気配は私達神々に近いのでデイモンの言葉で確信に変わっただけですよ」

「そうか。戻れそうですか?」


 パンドラの言葉を聞いたタマは不安そうに出井門にたずねた。


「ふむ。それについてははっきりと言わせてもらおう。その姿の前の姿に戻れるという可能性は限りなく低いだろうね」

「うっ。そうですか」


 医者である出井門の言葉にタマは俯く。それにパンドラは口を開いた。


「可能性はゼロではないのですね」

「もちろんだ。もしかしたら私も知らない方法で戻れる方法があるかもしれないが、私としてはオススメしないがね」


 出井門がそう言うとパンドラはタマに言った。


「タマ。まだ、可能性はあるそうですよ」

「でも、可能性は低いんだろ?」

「何を言ってるのですか。少しでも可能性があるなら探すのが普通ではないのですか?」

「うっ」


 パンドラの言葉にタマは言い返せないのか言葉が詰まる。パンドラは言葉を続けた。


「探さなければ可能性はゼロなのですよ」

「……そこまで言われたら動かない方が男じゃないよな」


 パンドラの言葉に突き動かされたのかタマは顔を上げる。タマは出井門にたずねた。


「出井門先生。今の俺の状態を教えてくれ」

「そうかい。大変だよ?」

「頑張る」


 タマが短くそういうと出井門は軽く笑った。


「ふっ。そうかい。それなら止めないよ。今の君の状態だったね。パンドラ君と混ざり合った結果、今の君の形になったみたいだな。ツクモ神と人の良いとこ取りみたいな状態だ。ツクモ神でもあり、人でもある。まさに奇跡のような存在だよ」

「そんなに珍しいのか?」


 タマはたずねる。出井門は真面目な顔で答えた。


「ああ。君のような状態になった例は過去に1度だけだね。普通はどんなに相性が良くても人にはツクモ神の力は強すぎるから良くて植物状態、最悪パンドラ君の力を奪って完全消滅だったろうからね」

「ひぇ」

「ほえぇ。私も危険な状態だったのですか」


 どう頑張っても死んだのと同じ状況になっていたであろうタマと巻き込まれて消えかけていたパンドラは悲鳴を上げる。


 それに出井門が凶悪な笑みを浮かべた。


「正直、研究者であれば骨の髄まで調べつくしたいねぇ。もちろん。戻る方法も一緒に探そう。今から手伝ってくれないかい?」

「ひっ。い、今はお断りします。で、出井門先生。笑顔が怖いです」


 タマは表情を強張らせてそういうと出井門は軽く咳払いした。


「おっと。こほん。失礼。初めて見た状態に少し興奮していたみたいだ。断られたのは残念だが、もしも研究に付き合ってくれるなら言ってくれ。いつでも歓迎するよ?」

「あ。はい。続きをお願いします」


 タマが続きを促すと出井門は言葉を続けた。


「つれないねぇ。まぁ、いいか。今の君は人でもありツクモ神でもあるが、どちらの要素もないと生きていけない状態でもある。もし、片方が消えると今の君を保てない可能性があるから下手に取り除くことが出来ないのだよ。そうだな。例えるとするならコーヒーにミルクを混ぜあわせた後の状態が一番近いかな。一度混ざり合ってしまったら完全に戻すことは出来ないだろう」

「確かに。そんなに難しい状態だったのか」


 出井門の説明にようやく戻るのが非常に難しい状況である事を理解する。


「戻る方法は?」

「そうだね。今の所はないかな。無理に君の中からパンドラ君の力を引きはがしたらタマ君は死んでしまうだろうからね」

「それは……確かに無理ですね。死ぬのは嫌です。じゃあどうすれば?」


 タマは困った表情を見せる。それに出井門は言った。


「そうだね。それじゃあ提案だ」

「提案?」

「何かあるのですか?」


 出井門の言葉をタマは口にする。同時にパンドラも興味深そうにたずねると出井門は言った。


「君は学園……九十九士(つくもし)学園に興味はあるかい?」

「「九十九士学園?」」


 タマとパンドラは九十九士学園の言葉を復唱した。

 出井門先生の検査と提案のお話。

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