10話 はい。え?
年内最後の更新です。
「消えた?」
「はい。これで登録完了です。お二方。右手を見てください」
タマが消えた書類に頭を傾げるとカグヤが言葉を返す。カグヤの言葉にタマとパンドラは右手を見るとそこには先程カグヤが見せた指輪似た指輪があった。
2人は指輪を見てから言った。
「お揃いですね。タマ」
「みたいだな」
パンドラの言葉にタマはうなずく。タマはカグヤにたずねた。
「これって外してもいいものなのか?」
「はい。いつでも外せますよ。2時間が経過したら所有者の指に転移しますのでなくす心配もありません」
「おぉ。なくさなくて済むなら気が楽だな」
タマは思った事を口にする。それに説明する側のカグヤが苦笑した。
「なるべくなくさないようにしてくださいね。パンドラ様とタマ様の契約が続く限りは亡くなりませんし、ツクモ神側限定ではありますが、契約者の場所を知る事が出来ます」
「へぇ。便利なんだな」
タマは感心する。それに同意するようにカグヤが答えた。
「そうですね。ついでにその指輪は九十九士協会側からの通信機も兼ねているのでなるべく肌身離さず持っていてくださいね。」
「なるほど。タマ。なくさないようにしてくださいね」
「いや。パンドラもだろ。同じの持ってるんだから」
パンドラの言葉にタマは少し呆れた様子で言い返す。タマはパンドラに対して気になる事を口にした。
「そういえばなんで俺の名前を何度も呼びながら話しかけるんだ?」
「名前を変えたばかりですから間違えないように何度も呼んでるのですよ。しばらくは続けるのでしっかり覚えるといいのですよ」
「そうかい。気づかいありがとよ」
「どういたしましてなのです」
パンドラの言葉にタマは礼を言う。会話のキリのいいタイミングでカグヤは言った。
「それではツクモ神の登録は完了です。上の階の診察へ向かってください」
「上に診察室があるのか?」
カグヤの言葉にタマがたずねる。カグヤは答えた。
「はい。ツクモ神やツクモ神によって姿が変わった場合の検査もしているのです」
「やっておかないといけないのか?」
「はい。その状態が期間限定か永続なのか知っておかないといけませんし、国の補助金等の手続きのための証明もしないといけいないので必ず受けて貰っています。本人は何もなくても周囲の人に影響を与えるのはよろしくないので」
「過去に何かあったのですか?」
パンドラはたずねる。それにカグヤがうなずいた。
「はい。とあるツクモ神が遅延させた感染型の呪いを誘拐した人に施していた事件がありました」
「まさか……」
カグヤの言葉に何となく事態を察したパンドラがつぶやく。カグヤは答えた。
「そのまさかです。誰も気づかずに解放した数日後に大量の人が女性の衣服に変えられたのです」
カグヤがそう言うとパンドラとタマがゴクリと喉を鳴らす。
「戻れたのか?」
「はい。幸いなことに感染源になった人はすぐに見当がついたので早期に解決できましたが、しばらくの間衣服に変えられた人が意識のある状態で大変な思いをしたそうです。もし気付かなければ今もその人たちは衣服のままでしたでしょうね」
「……恐ろしい話だな」
「ですね」
タマとパンドラはお互いにうなずき合う。カグヤは言った。
「そういう事がないように検査はしっかりするようにしてるので受けてくださいね」
「分かった。行けるか? パンドラ」
「いつでも行けますよ」
タマとパンドラはうなずき合うとずっと話を聞く姿勢でいた桜が口を開いた。
「私はどうしようかしら?」
「それでしたらその他の書類の手続きをお願いしてもよろしいですか? 高位のツクモ神というのは数が少ないのもありますが、色々と大変な事も多いので様々な補助金が出ます」
カグヤがそう言うと桜はうなずくとタマとパンドラを見て言った。
「確かにそれは私の仕事ね。タマちゃんとパンドラちゃん。2人だけど大丈夫かしら?」
「うん。大丈夫。上の階の診察室に行けばいいだよな」
タマがそういうとカグヤは控えさせている原井に視線を向ける。原井は机の横に置かれているタブレット端末を取り出すとその画面を見せた。
「これが2階の地図になります。上がってからすぐの十字路を右に進んでもらった先にある診察室2へ向かってください」
「分かった。診察室2だな」
「上に上がってすぐを右ですね」
タマとパンドラがそれぞれ診察室のある場所への道を口にする。
「はい。今空いている先生は……出井門先生ですね。最初は困惑するかもしれませんが、いい先生なので気を強く持ってください」
「はい。え?」
原井の言葉にタマはうなずいた直後に頭を傾げる。それにカグヤは苦笑した。
「原井の言う通り見た目は少々奇抜ではありますが、優秀な先生ですよ。連絡は送ったのですぐに入ってもらって構いません」
「なんだか一気に不安になって来たんだけど」
「医者の先生なら大丈夫ですよ……多分」
「なんでそこで自信なさげになるんだよ」
カグヤの言葉に若干不安になりながらもタマとパンドラはそんなやり取りをしてから立ち上がる。
「それでは行ってらっしゃいませ」
「うん。行ってきます。パンドラ。行こう」
「はいなのですよ」
そういうとタマとパンドラは階段に向かって進む。母である桜と九十九士協会の職員である原井とカグヤに見送られて階段を上がる。
「ここを右ですよ」
「そうだな」
タマとパンドラは通路を右へ進む。しばらく進むと何事もなく診察室2にたどり着いた。
「ここだな」
「ここですよ」
タマのつぶやきにパンドラが肯定する。
「いくぞ」
「はいです」
タマはそう言うと扉を叩く。
「どうぞ」
扉越しにハスキーな女性の声が返って来る。タマは大きい声を出しながら扉を開けた。
「失礼しま……ぴっ」
「ひぇっ」
扉を開けた先にはそこにはまるで悪魔のようなモノクロのまるで悪魔のようなメイクと2本の角のように髪を立てた白衣を纏った推定女性がいた。その女性? を見た2人は元男と女神とは思えない緊張した短い悲鳴が漏れる。
女性? の視線が2人と合うとタマはとっさに診察室の扉を閉めた。
「「…………」」
タマとパンドラはお互いに無言のまま短くうなずき合う。2人は同時に扉の上の部屋の名前を見る。そこには目的地である「診察室2」と書かれていた。
「合ってるよな?」
「合ってるのです」
「女の人で……いいんだよな?」
「多分……」
確認するように2人は言い合うと大きく深呼吸をしてからタマは言った。
「……行くぞ」
「はいですよ」
タマの言葉にパンドラがうなずくと今度は無言でゆっくりと扉を開ける。そこには先程の悪魔のような女性? が両手を広げて口を開いた。
「ようこそ。待っていたぞぉ。タマ君。パンドラ君!」
「「間違いじゃなかったっ!?」」
タマとパンドラは悪魔のような風貌の女性? に歓迎された。
契約と診察室の移動までのお話。




