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プロローグ

 桜が舞い散る学園の校舎。


 桜並木と新入生や学園の在学生達にその親御さん、さらには明らかに人ではない存在で賑わう景色の中で小さな人が入れるくらいの大きさの不審なダンボール箱が移動していた。


「…………」


 ダンボール箱は生徒達を避けるように器用に動くが、誰も違和感を覚えることなくそれを無視して進んで行く。


 しばらく進むと人が多くなり、ダンボール箱は進めなくなる。ダンボール箱はそのまま進むのを諦めたのか人通りの少ない通路の隅へと逸れると木々の裏に移動した。


 人気がないのを確認するようにダンボール箱が1回転すると足元が少しだけ浮き上がる。浮き上がったダンボール箱の隙間から手のひらサイズの可愛らしい妖精のような少女がダンボール箱に乗って出て来た。


「ふぅ。箱の中の真っ暗な空間も悪くないですが、青空の元も良い物ですよ。タマ」


 小さな少女が大きく伸びをしてからタマと呼んだ大きなダンボール箱に話しかけた。


「……だって恥ずかしいじゃん」


 それは少女と似た鈴のような声であった。タマと呼ばれた声の主はダンボール箱を震わせながら答える。


 それにパンドラは笑みを浮かべたまま少し怒った様子で言った。


「むっ。そんなことをいう子はこうです」

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」


 パンドラは大きなダンボール箱に飛び移ると箱が宙に浮き始める。中にいるタマも抵抗するが、中には掴む場所はないのかあっという間に中身のタマの横へ着陸した。


「なっ何するんだよっ!」


 パンドラと呼ばれた少女とそっくりの女の子が通路の女子生徒達と同じようなダークグリーンのジャケット、白のブラウスに赤いリボン、チェックのスカートの制服姿でモジモジしながらパンドラに向かって叫ぶ。


 それに呆れた様子でパンドラは言った。


「この学園の制服なんですから慣れないと大変ですよ? というかまだ女の子の服に慣れないのですか? 散々着たでしょう?」

「分かってるけどさぁ。俺は男だし、制服だよ? 制服。それも女子用。女子の制服なんて……恥ずかしいじゃん」

「何言ってるんですか? 今のタマは女の子ですよ。女神である私と同じ姿なんですからその制服姿も似合っていますよ? 男の子っぽい恰好も悪くはないですが、そっちの方が変ですよ」


 タマが男を主張すると訳が分からないといった様子でパンドラが頭を傾げながら答える。その言い分にまだ納得できない様子でタマが答えた。


「それでもだよ。この姿になってからまだ1週間も経ってないんだぞ? それに色々あってこの学園に入学先に変更だぞ? あっという間すぎて慣れる訳ないだろ」


 タマはパンドラに文句を言う。それに呆れた様子でパンドラが答えた。


「ですからダンボール術の1つであるダンボール・ステルスを教えてあげたのですよ。でも、入学式でダンボールに籠ったままだと誰にも認識されないので欠席したと思われてダメなのではないのでしょうか?」

「うっ」


 パンドラの正論にタマは言葉が詰まる。


「それに女の子の生活も楽しいものですよ? これから先で戻れるという保証はないのですから。私そっくりなのですから男の子にも女の子にもモテモテですよ?」


 パンドラは自信満々の様子でたずねるとタマは苦虫を嚙み潰したような表情で言い返した。


「それがあるから嫌なんだよ。おじいちゃんおばあちゃんとかおばちゃんとかは飴ちゃんくれたり、買い物でおまけしてくれたりするけどさ。それでも結構な頻度で鼻息の荒いおっさんとか怪しい視線のお兄さんとか、お姉さん、果ては年下の女の子とかから誘拐未遂されたら戻りたいと思うだろ。普通に怖かったんだからな」


 タマが涙目で本音を漏らす。それに対してパンドラは特に気にした様子もなく答えた。


「でも、得してる部分はしっかり享受してるのですね」

「…………戻れる方法は絶対にあるはずだ。その為にお前達ツクモ神に詳しいこの学園……国立九十九士(つくもし)学園に来たんだからな」


 パンドラの返答にそこそこ長い時間沈黙してから誤魔化すようにタマが目的をしゃべる。


「あれ? 国はそう言って特殊例であるタマを観察と研究する為にここへの入学を促しただけですよ?」

「……薄々気づいてはいるだけど、はっきり言わないで。こういう理由があると思ってないとやっていけないだけだから」

「急に弱気になりましたね」


 あまりにも情緒不安定な様子にパンドラは何とも言えない表情で返す。


「しょうがないじゃん!? パンドラから力を無理矢理授けられたのは物語の主人公みたいで少しワクワクしたのは本当なんだけど、女の子になるとは思ってなかったんだからっ!」

「それについては私も予想外だったのですよ。それに一心同体と言って良い状態なので力の返却などは受け付けてないのですよ。私もタマがいないと消えてましたし」

「……分かってるよ。変に当たって悪かった」


 流石に言い過ぎたと思ったのかタマはパンドラに謝る。同時に学園の方からチャイムが鳴った。


「分かってくれたならいいのです。ほらほら。入学式の受付に急がないと入学早々に遅刻になりますよ? 行きましょう」

「あぁ。行くよ」


 タマの返事を聞いたパンドラはタマの肩に乗る。タマは横に置かれたダンボール箱の中に入りなおすとまた不審なダンボール箱として動き始めた。


「……はぁ。どうしてこうなったんだか」


 タマは今の姿になる1週間前の事を思い出しながら入学式の受付に向かって進み始めた。

 今日から更新です。TSモノになります。キーワードは随時変更したりする予定になります。


 次回は主人公であるタマとパンドラが出会う所からの予定です。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。ゆっくり進めていくのでこれからもよろしくお願いします。

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