第67話 肩を支え合って
おれ達は遺跡の中を案内された。暗闇に育つ作物は、大英雄が持ってきたものらしい。それを2000年近くずっと栽培しているようだ。麦のような物から野菜まで、いろんな物を育てて食べている。先ほど出されたお茶もここで採られているものなのだろう。
ーー「我々は本当に大英雄に助けられたんだ。ほら、あれを見てみろ。人間は暗くて見えづらいかも知れないが、あそこに銅像があるだろ。我々の子孫が、後世が大英雄への恩を忘れぬようにと作ったのだ。」
ーー「へー。尊敬してるんだな。」
ーー「当たり前だ。我々は救われたのだから。」
凄いな。先祖が助けられた恩をずっと忘れずにいるなんて。おれなんかは先祖のことなんて何も知らないのにな。
ーー「エストー!グラ!そろそろ出発するー?」
ーー「お!もういいのか?」
ーー「ええ。見るものは見終わったわ。」
セリアはさっきまでいたウラルスの家から出てきた。ウラルスの持っていた大英雄の資料を読み漁っていたのだ。それこそグランデュース家の始まりは大英雄だからな。彼について知れるものは知っておきたいのだろう。セリアの様子を見るとただの趣味なのだろうけど。
おれとグラはセリアと合流し、そこからウラルスに案内されて遺跡の外に出た。遺跡の中は基本的に明かりがなかっただけに、すでに日が傾き始めていた時間であったが、光は強く目を刺激した。眩しいというよりも痛いと言う方が正しいだろうな。
ーー「短い間であったが楽しかったぞ。三界を倒して世界を変えてきたら……ぜひまた遊びに来てくれ。」
ーー「そうだな。噛みつかないって約束するならまた来ようかな。」
ーー「当たり前だろ。友にそんなことはしないさ。」
ーー「じゃあまたね!ウラルス!」
ーー「また生きて会おうな!セリア!」
おれ達はそこから森を東へと進んだ。というか随分とセリアとウラルスは仲良くなっていたな。同じ祖先が大英雄に恩がある者同士気が合ったのか……まぁ何でもいいか。
森を抜けたところでおれ達はテントを張り、そこで夜を越した。本来回っていかなければならない森を直進してきたのでだいぶ距離を短縮できた。これなら急がなくても構わない。………もともと急ぐ必要は無かったのだが。とにかく会議の開かれるラライアまで、ゆっくりと向かうことが出来るというわけだ。
朝を迎え、おれ達は再び進み始めた。ほぼ直線に進み、2つの街を経由して中央大陸と東大陸を繋ぐ港へやってきた。3日後に会議が始まるから今日船に乗って、ラライアまで歩いけば順調にいけば1日前に着くはずだ。
ーー「海だーー!久しぶりだ!なぁ!セリア!」
ーー「………盛り上がってるところ悪いけど……私は何回か来てるから……。」
ーー「そうなのか!?………でもおれはこれが2回目だからなぁ。やっぱり良いよな。地獄は溶岩の海だったから。………思い返せばあれはあれで綺麗だったな。」
ーー「溶岩の海なんてあったの?地獄には行きたくないけどそれは興味あるわね……。」
セリアとおれはまたどうでもいい話で盛り上がってグラを置いてけぼりにしていた。10分ほどその調子だったので、流石にグラに叱られてしまった。そしてグラについていき、船に乗る。時間通りだから夕方には東大陸に到着するだろう。
ーー「船か………波に揺られてグラグラと……船酔いするから嫌いなんだよな……。」
おれは船の甲板から水平線を眺めていた。海面がゆらゆらと揺れ、船はさらに大きく揺れる。波は船を打ち、水飛沫が宙を舞っている。海は綺麗だけど渡るのは嫌いだ。
ーー「だったら寝てなよ。寝てたら楽になるでしょ。」
ーー「そうだなぁ……でも寝る気分じゃ……うッ…。」
ーー「ほら、中に戻って寝なって。」
気持ち悪くなって口元を押さえたおれの背中をセリアがトントンとさすってくれた。おれはセリアの肩を借りて船内へと入っていき、グラの近くの席についた。セリアはおれの肩をポンポンと叩き、おれは気分が悪かったのですぐに夢の中に落ちた。
ーー「ーート。起きて。エスト。」
ーー「ん………んん…。あぁ、おはよ。」
セリアに呼びかけられておれは目を覚ました。おれはセリアの肩にもたれかかっていたみたいだ。重いまぶたを持ち上げて目を擦った。微妙なタイミングで起きたので異様に眠い。でも起きなければならないので、頭を持ち上げて目を開けた。
ーー「もうすぐ着くわよ。気分は平気?」
ーー「……結構良くなったよ。ありがとう。……迷惑かけなかったか?」
ーー「エストを起こしちゃうから動けなかったわ。肩も凝っちゃったし。」
ーー「そんなに気にしなくてもよかったのに。でもありがとうな。グラもいるか?」
ーー「後ろにおるわ。っつーかいない訳がないじゃろ。」
グラはそう言っておれの頭に拳骨を喰らわせた。思ったより痛く、頭を押さえた。………痛ってぇ。
その後船は港に着き、おれ達は船を降りた。この日はそこの港町で過ごし、次の日にまたラライアへと向かうことにした。




