第57話 サプライズ
ーー「いやー……。本当に久しぶりだなー!どうだったよ?この3年間は。」
おれ達は一旦落ち着きを取り戻しお互いの話をした。セリア達が頑張ってクランを大きくしたこと、セリアとグラが法帝になり新たに八法帝と呼ばれるようになったことなどを聞いた。ギルバートさん、つまりセリアの兄さんに鍛えてもらっていたらしい。
セリアが北大陸の方に来たのは邪教の拠点跡を調べるためのようだ。邪教が地獄の情報を持っていればおれを助けられる可能性があると考えていたようで、3年間邪教についてはよく調べていたらしい。実際おれは邪教のヤツらに召喚されたわけだから考えは正しかったかな。
ーー「エストの方はどうだったの?地獄ってやっぱりキツかった?」
ーー「そりゃあもう……最悪だったよ…。暑いし空気は腐ってるし……水も無ぇから魔物の血を飲んだり肉を食ったり……。とにかく酷かったなぁ…。……それなのにお前がおれの久しぶりの飯を台無しにするからなァ!!」
ーー「悪かったって!アンタがそんなに可哀想な奴だなんて俺は思ってなかったんだよ!!」
本当に……久しぶりに水とサラダを食ってスッキリしようと思ってたのに……。まぁ今更言っても仕方ないか。というか街を出る前にもう一回くらい食ってくればよかったかもな。
ーー「大変だったのね……。考えたくもないわ。今じゃグラよりも野生的なんじゃない?」
ーー「……否定できないのが嫌だな。でもおれは文化的な生活がしたいんだよ。当たり前だけどよ。」
ーー「もちろんよ。後で食べに行きましょ。久しぶりに。」
セリアの言葉に対しおれは頷いた。セリアがいるなら今度こそ落ち着いて飯を食えるだろう。
ーー「アンタさ。あんなに強いなら新しい法帝になったらどうだ?俺が推薦してやるよ。」
法帝か。目を付けられるくらいには強くなれてたってことだよな。法帝に選ばれるのって確か……能力を昇華させた者のうち既存の法帝に認められたヤツだとかって誰かが言ってたな……。昇華か……。
ーー「いやね……そう言ってもらえるのは嬉しいんだけどな。おれまだ昇華してないんだよね。」
ーー「は!?」
おれがそう言うとイリアは目を開いておれのことを見た。そんなに意外だったのか。おれとしてはどうしても昇華させることが出来なかったから、セリアとグラが八法帝に名を連ねてるのに本当に驚いたんだ。時間はおれの方があったはずなんだけどな。
ーー「アンタ、あんなに強くって昇華してねーのか!?……だとしたら反則だろ…!」
ーー「伸び代大ってことね。また手合わせしましょうよ。本部に帰ったら。」
ーー「おう、もちろんだ。」
せっかくならおれも九番目の法帝になりたかったけど……まぁいずれでいいか。戦える力があれば地位に拘る必要もない。……でもやっぱりせっかくならなりたいな。
おれとセリアは南側へ、イリア達は北大陸側へ帰るようなのでここで別れた。クランの本部があるヘルダルムまでは距離があるため、と言ってもおれ達が走っていけばそれほど時間が掛かる訳ではないのだが、いくつかの街を経由して急ぎすぎずに帰ることになった。おれとしてもまだセリアと話したいことは山ほどあるのでゆっくり帰るのは嬉しいものだ。それはそれとしてグラやフリナとも早く会いたいな。ユリハもいるのだろうか。考えることはたくさんあったが、とりあえず今はセリアとの時間を楽しむことにした。
おれ達は歩きながら近くのウルードという街にやってきた。そして、そこのギルドに向かった。そこには人の背丈を遥かに超える透明で青い石が置いてあった。
ーー「ん?何だあのでっけー宝石。魔石か?」
ーー「ええ。魔導通信機よ。」
セリアの話によると、この3年間で発達した技術のようだ。遠くの通信機と繋いで通話できるようだが、あまりに大きい魔石が必要なため携帯などは出来ないらしい。そのため今では城やギルド、クランの本部にはほとんど置いてあり、貴族などの屋敷やクランの支部に置いてあることも多いらしい。これを使ってグラ達に伝言をするようだ。
ーー「ねぇ、エスト。」
ーー「何だ?」
ーー「せっかくならさ、驚かせたいわよね?3年ぶりの再会になるんだから!」
ドッキリ的な感じか。セリアは3年経ってもまだ子どもっぽいところがあるんだな。やれやれ……おれはもう地獄で何十年と生きてきたんだ。そんなもので盛り上がる歳では……
ーー「いいな!やろう!どうするんだ!?」
ーー「そこは私に任せて!」
そう言ってセリアはここの魔石と“煌焔”の本部を繋いだ。
ーー“はい。こちらクラン“煌焔”の本部です。”
ーー「ああ、聞こえるかしら?私よ。セルセリアよ。」
ーー“リーダーですか!ウルジア山に向かわれたと聞きましたが、どうかなさったので?”
ーー「グラやフリナに伝えて欲しいのだけれど、2週間後までに各団長を本部に集めておいて。」
ーー“!?全員ですか?何かあったので?”
ーー「問題が起こった訳ではないから安心して。頼めるかしら?」
ーー“承知しました!お任せください!”
ーー「お願いね。」
セリアはそう言って通信を切った。相手は若い声だったが、クランの受付係といったところだろうか。団長は確かグラやフリナを含めて5人だったかな。その人達にサプライズで会いに行くという感じだな。
ーー「じゃあ、エスト。ご飯食べに行きましょ。私が奢るわよ。」
ーー「ホントか!?ありがとう!」
おれはセリアに連れられて料理屋に向かった。




