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9話 戦う力


そこはアリュザークの市街だった。

ルイナと巡った中層の街で、俺の目の前にはルイナがいた。

そこにはルイナしかいなかった。あれだけだけいた通行人も、露店の従業員すらいない、

ただまっさらな空間に二人でいた。


「ユッキー」


俺の名を呼ぶ目の前のルイナは俺を見ていなかった。

目線は確かに俺の顔を向いているはずなのに、どこか別の場所を見ていた。

目にハイライトがない、人形のようだった。


「残念だよ。

ユッキーがそんなに『弱い』なんて思わなかった」


「え?」


弱い…?


「私、弱い男ってキライなの。

あんなどこにでもいるような人攫いに負けてさ、

それどころか理術すら満足に使えないなんて。

ユッキーは『無能』なんだね」


無能…。

俺が…無能…?


「そ、そんなこと言ったってさ…。

…ルイナ…俺だって頑張って…、お前に追いつくため、

色々と頑張って…きた」


「言い訳なんて聞きたくないよ。

雑魚で無能な奴とは話したくない、耳が腐っちゃうからね。

バイバイ、ユッキー。

無能のユッキー、もう話しかけてこないでね」


ルイナの側に誰かが歩み寄ってきた。

それは、あの悪魔だった。

モルガン達を皆殺しにした悪魔。

俺から立ち去ろうとするルイナの肩に手を置いて、俺に向き満足そうに言った。


「じゃあな、雑魚。

お前にルイナベリンは相応しくない。

ルイナベリンは俺が貰ってく」


そうやって二人は歩いて行く、

遠く、遠く、俺とはどこか別の遠くの場所に。


待て…

ちょっと待てよっ…。

ちょっと待て!

行くな!

そんな奴について行くな!

行くなぁ!ルイナ!!




「ルイナああああっ!!」


そこで俺は目覚めた。


え?

ああ、…あえ?


もしかして夢…?

今の全部…夢?

夢オチ…?


「あ…あっ…そっか、これ、夢か、なんだよ」


頭を、それも前髪を掴むように抑える。


マジで良かった。

そういうのホントキツいって。

夢でも心臓持たないって。

は、はは…。

ははは…。

おっかねー。



違和感に気づいたのはそれからすぐだった。


「え?」


ごつごつした背中の痛みを感じて気づく。

俺は床に寝ていたのだ。

フローリングの床にごろりと寝転んでいた。


「どういうことだ?」


おかしい。

だって昨夜は間違いなくベットに入って寝たはずだ。

だから起きるにしてもそれはベットの上のはずなわけで。


「なんなんだこれ」


映る光景はどうにも奇妙。

なかったのだ。

俺の自室には、ベットはおろか、家具と呼べるものが一つたりとも存在しなかった。

まさに新築のような無機質な部屋。


もちろんそんなはずはない。

俺はミニマリストってわけじゃないし、

豪商の息子だし、部屋はそれなりに充実していた。

間違いなくしていた。

昨日寝る前まではこの部屋には家具があったはずなのだ。


「一体、寝てる間になにが起こったってんだ…」


とりあえず部屋から出よう。

自分以外の誰かならこの不可解な現象について何か知っているかもしれない。

そう思って立ち上がった時だった。


「ぼっちゃまー!!

ぼっちゃまーーー!!

いますかっ!ぼっちゃま!!」


バタンと。

ノックもせずに一人の女が俺の部屋に入り込む。

それはキッサキだった。


やけに忙しない様子のキッサキ。

ぴょんと跳ねた寝癖すらそのままで、

よっぽど慌てていたんだろうと見える。


「あ、キッサキ…。

おはよう、今日もいい朝だね」


俺にとっては最悪な夢を見た最低な朝だし、

今何時だか時計も消えてるので分からないけど。


体感。

体内時計は朝を告げている。


「ちょっと!

…そんな爽やかに、おはようっ…じゃないですよ!!

なんですか!なんなんですかアレは!!」


アレ?


「あれって?」


「あーもうっ!とぼけたって無駄です!

エントランスのアレです!アレ!!

まったく今度は一体なんの意図があってあんなイタズラ…」


キッサキの言っていることが分からなかった。


「…キッサキ。

お前がなに言ってるか分からないよ」


「ほえ?」


キッサキは間抜けな表情で犬耳をピクピクと動かすと、

俺に近づいてきた。

クンクンと俺の体臭を嗅いでみれば。


「ふむ。嘘の匂いはしないか…」


そう言うキッサキ。

いや嘘の匂いってなんだよ。

お前はブチャ◯ティか。


「って事は、ぼっちゃまは無実?」


無実もなにも、まだ何も理解できてないって。

話を自分勝手に進めて欲しくない。

説明して欲しい。


「エントランスホールで何かが起こったの?

何が起こったの?」


「んー。

そー、ですねー。

ま、じゃあついてきてください。百聞は一見になんとやら」


・・・


なんだこれ…。


屋敷のロビー。

まさに半年前、俺が頭を打ったその場所は、

とんでもないことになっていた。


「これ、全部…。

俺の部屋の家具なのか…」


俺の部屋にあったはずの家具。

消えてしまったと思っていた家具達は。

屋敷のエントランスロビーに散乱していた。

ベットや絵画。

シャンデリアに至るまでの全てが乱雑に放り投げられるように散らばった災害の跡みたいな光景がそこに広がってあった。


「ええ…?

なにがあってこんなこと」


おかしい…事態だ。

だって、これは明らかに人の手によるもの。

でも、誰が?

何のためにこんなこと?

なぜわざわざ俺の部屋に入り込み、わざわざ家具だけをこのエントランスに移した?


「これ…本当にぼっちゃまがやったことじゃないんですね?」


隣にいたキッサキが俺に聞く。


「あっ…ああ…。

そんな記憶はないよ。

第一。

俺がこんな重たいものを運べるはずもないと思うんだけど」


「あっ。

たしかにそうだ」


おい、普通に考えれば分かるだろ!

俺は5歳児だぞ!5歳児!


「じゃあ、一体誰がこんなこと…。

まさか、台風とかで家具がふっ飛んだ?」


そんなわけねえだろ。家の中だっての。


「キッサキ、ここは家の中だよ。

それに昨日は台風なんて来てないし」


「うーん。

ですよねー。

じゃあ、泥棒がはいりこんだとか?」


「だったら物を盗んで行くでしょ。

わざわざこんなことする意味が分からない」


嫌がらせするにしても、もうちょっとあるだろ、いろいろさ。なんで俺の部屋の家具をエントランスに移動させるだけなんだよ。

どんな嫌がらせだよ、俺が一体何したってんだよ。


「そりゃ、そうか。

あ…。

そういえば

ユキさまはその時何してたんですか?

自室の物が無くなっていた夜間、ずっと部屋で寝ていたんですか?」


「…そうだよ。

昨日寝るまでは何ごともなかった。

家具もちゃんと部屋にあったし。

で、

寝て起きたら、部屋には何もなかった」


これがまた不思議なことだ。

なんで、家具だけこっちにあって、

俺だけが部屋に取り残されたのだろう。


「ふむ…これはなかなかのミステリー」


そう頭を悩ませていた俺とキッサキ。


「犯人探しは後。

ひとまずは屋敷の安全確認をしないといけませんね」


いつのまにか、俺らの後ろにいたグレンがそう言った。


・・・


「ユキさま

それはきっと貴方の能力でしょう」


俺はその日、チャンセバに今日のことを相談しに行った。

結局あの後も犯人は見つからず、真相は闇の中。

謎の怪奇現象に少なからず恐怖心があったから、用心棒であるチャンセバに相談しておいた方がいいと思ったのだ。


「俺の能力…?」


チャンセバは手元のグラサンを拭きながら答えた。

地味にチャンセバの素顔を見るのは初めて。

結構、薄い顔してんのね、チャンセバ。


「…ええ。

貴方の能力が覚醒したのです。

人が理術を身につける際、それはゆっくりじわじわ己の理力を知覚していくパターンと今回のユキさまのように、ある日突然何の前触れもなく覚醒するパターンと様々あります」


「え?

えっと、ちょっと待ってくれ。

じゃあ。

つまり、エントランスの家具らは俺がやったってことなの?」


「それ以外は考えられないでしょう」


いやいや。

…いやさ。

そうは言ってもだな。

俺に能力を使ったっていう記憶はないし。

今だってその、理力ってのを感じられていない。

そんなんでどうやってやったってんだ。


「じゃあ、俺の能力ってなんなんだ?

家具を移動させる能力なのか?」


「おそらくですが…ユキさまの能力は…。

…いえ…。

ここは一つ試してみましょう」


何かを言いかけてやめたチャンセバ。

そのまま、テーブルの上の籠の中に入ったリンゴを一つ取り出した。


「これは何の変哲もないただのリンゴです」


「見れば分かるよ」


「ええそうですね、そんなリンゴをユキさまに貸します」


そうチャンセバから貸されたリンゴ。


「けれどもそれは私の午後のおやつ。

大事な物なのです。

どうか返して貰いたい」


「え?じゃあ返すよ」


別に欲しいと言ったわけじゃないし。

てか要らないし。


「が、しかし!その際っ!

ユキさまはその場から動かず返して頂きたい」


「は?」


「ええ、そうです。

その場から一歩も動かず。

この部屋にいる私にそれを届けて欲しいのです。

ああ、もちろん投げるとかってのは禁止です。

ユキさまの持つ『能力』で私に瞬間的にそのリンゴを届けて貰いたい」


俺の能力で返せって。

いやだから。

俺には自分の能力が何なのか分かってない…。

って、

いや?


「ちょっと待てよ」


今朝、知らぬ間に移動した家具。

俺の力では到底運べないいくつもの家具をエントランスまで移動させる能力。


『移動』


このリンゴをチャンセバに届ける。

瞬間的に届ける。


『移動』の能力。

それってつまりは、


手元に握ったリンゴは既に消えていた。

そして気づけば見事にチャンセバの手元へと送り届けられている。


「やはり、そうでしたか」


そうだ。


「ユキさま、貴方の能力は」


俺の能力は、


「「瞬間移動だ」」


・・・


その日はそのまま一日を能力の実験に費やした。

俺の能力を知ったチャンセバもどうやらノリノリで、

頼まずとも積極的に付き合ってくれた。


そして分かったこと。

俺の能力は物体を瞬間的に移動させる能力。

瞬間移動(テレポーテーション)

能力の発動条件は、俺が転移させたい物体に直接触れていること。

そして移動させる先を知っていること。

生き物はもちろん人間だって飛ばすことができた。

試しにチャンセバを裏庭まで飛ばしてみたが、問題なくできた。

俺は何が起こるかわからないから人の転移はやりたくないって言ったんだけど、

チャンセバがどうしてもっていうから仕方なく。

いや、ほんと。

ほんとに全くやりたくなかったのにね…。

まったく、チャンセバったらしかたのない奴だ。


あと、移動させる距離によって消費する理力が変わってくる。

まだどれくらいの距離が自分の限界かなんて分からないけど、遠くに飛ばせば飛ばすほど疲れるし精度も落ちる。

今だとだいたい20メートルぐらいまでが限界の距離かな。

それ以上になると、どうにも疲れてきってしまい精度がブレブレになる。


あとは飛ばす物体の大きさも消費する理力量と関わってくるっぽい。

だから移動物が大きければ大きいほど疲れるし、さらにそれが遠ければ遠いほど相乗的に疲れる。


計算式で分かりやすく例えると。


質量×距離=消費理力。

って感じ。


そして、この能力。

何もかもを転移させられるってわけではなかった。


生き物、人間は飛ばせるみたいだけど。

自分自身だけはなぜか飛ばせない。


色々と頑張ってはみたが、

どうにも自分は飛ばせなかった。

これはもうそういう『自分以外を瞬間移動させる能力』なのかもしれないし、もしかしたら俺がまだこの能力のコツを掴んでいないだけかもしれないけど、

とにかく、今は自分は移動できない瞬間移動になっている。

それと、一度何かを飛ばしたら3秒ほど何も飛ばせないインターバルがかかる。


と、ま、ひとまずそんな感じかな。

まだ分からないこととかはたくさんあるけど。

いまのところ概ねそんな感じ。


まぁ。

それなりに悪くはない能力なんじゃないかとは思った。

ルイナみたいな化け物を召喚するあのチートみたいな術じゃないけど、

瞬間移動ってだけで色々と使い道は思いつくし。


きっと需要もあるはず。

何でもかんでもできる能力ってわけじゃないけど。

何もできないってわけでもない能力。

もし〇ボックスはもらえなかったけど、どこ〇もドアでも充分。

チャンセバも、


「素晴らしい能力!

大当たりです」


と、手を叩いて絶賛していた。

なぜか本人である俺より見るからにテンションが高かった。


そんなこんなで、俺は今朝、寝しょんべん…。

いや、寝能力で散らかしたロビーの家具を能力で部屋に戻し。

ゼェハァゼェハァと疲れながら床に着いたのだった。


・・・



ここ最近は調子が良かった。

能力が覚醒してからというもの、理力の感覚もだんだんと掴めるようになってきている。

チャンセバみたいに鉄のナイフをグニャグニャに曲げられるほどのコントロールはできないものの、

パンチで壁に穴を開けるくらいは出来るようになっていた。


もちろん、グレンにめちゃくちゃ叱られたけど。

でも、ワザとじゃなかった。

ちょっと試しに壁をこつんとコツいたら穴が開いちゃったんだもん仕方ないじゃん……。


そんなこんな時間が経って。

遂に俺の6歳の誕生日がやってきた。

誕生日には送り物をするというのは、どうやらこの異世界でも同じなようで俺は屋敷の人達から様々な物をもらった。


エドからは何冊かの本を。

母からは手編みの赤いマフラーを。

グレンからはそろそろそういう式にも出るかもしれないと、礼服を。

そしてキッサキからは…。

なんだろう?

なにかもらったっけな?

ああ…そうだ。

彼女からは何かの骨でできた首飾りを貰った。

なんでもキッサキの故郷では縁起のある物らしく誕生日にはこれを渡すのだそうだ。


そして最後、チャンセバからは。


「私からは物ではなく技術を授けたいと思います」


初め、頭が?で染まったが次第に理解した。


「私からユキさまに送れるものは理術における武術指導。

もちろん別のものがよければそちらをご用意いたします。

どうしますか?」


「え?あれ?

いや、あ……あれぇチャンセバ?

あの…いいの?」


公にそんなことを言ったから、家族の目が気になった。

だってチャンセバの前以外では、これまで表立って理術とかの話はしてこなかったから。この能力もこそこそとバレないように使っていたくらいだし。


「ユキさま……もうすでにお嬢様やエド。

屋敷の皆は貴方の能力に気がついています。

そして、今回は私が頼み込んだのです。

ユキさまには稀なる理術の才がある。

その才能を私に磨かせて欲しい…と」


才能がある……。

自分がそんなことを言われるとは思わなかった。

それどころかチャンセバの方から教えさせて欲しいと、頭を下げられるとは思わなかった。


「ユキさま。

戦う力は持っておいて損はありません。

この世は理不尽なことも多い。

力がなければ我を通せないこともある」


チャンセバの言葉で

どこかで聞いたフレーズが頭の中で蘇る。


『この世界は強さが全て。

暴力が全てだ。

人生、勝手に生きたいならとにかく強くなりな』


ああ、そうか…。

あの出来事は俺の中で結構トラウマになっていたんだな。

そりゃそっか。

そうだよな、怖かったもんな。

死ぬかと思ったもんな。


「戦闘技術を学ぶことは、

貴方にとって将来後悔しない選択となります」


戦闘技術…。


理術を習って、能力を得て、

俺はどこか戦える気でいた、動ける気でいた。

けどそれは、違う。

例え力を持っていたとして、それを使いこなせなければ意味がない。


またあの時のように。

人攫いに攫われる時があるかもしれない。

次はもっと強大な敵かもしれない。

俺だけなら百歩譲ってまだいい。

今度狙われるのは俺の大切な人かもしれない。

母かもしれない、

祖父かもしれない、

…ルイナかもしれない。


強くなりたい。

この危険な世界で大切な人を守りきれる強さが欲しい。

そう思った、理不尽に何かを奪われたくないと思った。


「頭を上げてくれ、チャンセバ。

お前が下げてしまったぶん。

俺がもっと深く下げなきゃいけなくなる」


俺はその場でチャンセバに頭を下げた。

深く深く下げた。


「…頼むよ、チャンセバ。

…いや。お願いします先生。

どうか、俺を強くしてください。

俺に…大切な人を守れる強さをください」


「……ユキさま…」


そんな俺を見てチャンセバは顔を上げた。


「ええ、もちろんです」


・・・


次の日から、朝におこなっていた母との勉強会がなくなった。

ここ最近は母も俺が共通語を理解していたことに気づいたようで、朝の時間は共通語の学習とは名ばかりな母との何気ない会話の時間になっていた。


もちろん、俺としては好きな母だし、

それでもよかったのだけど。チャンセバはその午前の時間を使いたいと母に頭を下げ。

母もそれを一つ返事で了承。

それから毎朝、中庭でチャンセバとの稽古が始まった。


主なのは瞬間移動能力の稽古だった。

能力を完全にコントロールできるようにするための稽古。

チャンセバに言われるがままいくつもの物を正確な場所に飛ばせるように訓練した。

それは小さな鉄球だったり、はたまた人間だったり。


それが終われば武術の稽古が始まる。

戦いにおいての拳の振り方や足の運び、目線の置き方、受け身の取り方。

剣術や槍術、弓術にいたるまで様々な武術をチャンセバは俺に教えてくれた。

チャンセバはどれも基礎しか教えられないと言うが、何も知らなかった俺にはそれすら苦労するものだった。


「休憩にしましょう、ユキさま」


「~っふはぁ…!」


家の中庭。

チャンセバにしごかれ俺は芝生の上に倒れ伏す。

こんな893みたいな顔して案外優しいギャップを持つのがチャンセバのギャップでありいいとこなのだけど。稽古の時だけは鬼かと思うくらいに厳しかった。


「しかし、いい感触です。

やはり貴方には確かな戦闘の才がある。

この短期間で、これほどの理力コントロール、

そして体捌きもできてきている。

ならば次は、一段階上。

これに能力の方も合わせて使ってみましょう」


「ええ…?これに能力も合わせんの?」


無茶言うなぁ……。


「そうです。

実戦では使える手はいくらでも使うもの。

ユキさまの【瞬間移動】は戦闘においては凄まじい武器となります。

これを使わない手はありません」


たしかにそれはチャンセバの言う通りだし、俺もそのつもりだったし、そこは、いいんだけどさ。


一つ問題点。


…単純に難しいんだよなぁ。

身体強化の理力コントロールと合わせて、瞬間移動の能力も一緒に使うってのは。


能力の方に理力を回せば、

身体強化の方に理力が回らないし、

かと言って身体強化に理力を集中させたら今度は能力が使えない。


例えるとするなら、

飯を食いながら息を吸うみたいな感覚かな。

いや、ドラムを叩くときような感覚の方が近いかもしれない。


んーまったく。

これは一体どうすればいいんですかねぇ。

世の中の理術を扱う皆さんはどうやってそこんとこうまくやっているんですかねぇ。


「慣れです」


考えてることが表情にでていたのか。

チャンセバは言い切った。


「…慣れれば嫌でもできるようになります」


「慣れね。

まぁ、基本なんでもそうだよな」


世の中の大抵は才能以前に大抵この『慣れ』で解決できるものだ。

1万時間の法則とはよく言ったものだ。

それは前の世界から知っていたこと。


「結局は慣れだよなーぁーー。

うん、じゃっ!続きやろうかチャンセバ」


ちょっと休憩できたし、

休んでいる間にさっきの感覚を忘れたくない。

確かにチャンセバとの稽古は疲れるものだけど、その疲れは決して嫌なものじゃなかった。

昨日より今日、今日より明日。

日々確実に成長している。

それが分かる。

だからやる気も出る。

こんなの。楽しくないわけがなかった。


「いえ、休憩です」


「いやだからいらないって休憩。どんどこやろうぜ」


「ダメです。

休憩を取ることも稽古の一つです。

諦めて休憩してください、休憩」


……むむ。

この頑固ジジイめ。


「じゃあ。飯でも食ってくるかな」


勉強と武術、

他にも色々なことを学び、

そうこうして時が過ぎ、

俺は9歳になった。


・・・



【ステータス表】


【ユキ・グレイシア】(幼少期)


種族:人間

年齢:6〜9歳

理力属性:天/

固有能力:瞬間移動テレポーテーション/     

性格:温厚でややナルシスト。

好きなもの:家族と友達と自分の顔。

嫌いなもの:父親、職業が人攫いで頬に髑髏のタトゥーがある金髪の男。

所持品:母の編んだマフラー。キッサキのネックレス。

所持武器:なし。

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