13話 決闘
黄昏時。
勝負の一歩を踏み出したのはフォルカからだった。
理力を込めた踏み込みからの右ストレート。
あまりに野性的な直進。
あまりに本能から繰り出す暴力。
あまりに早過ぎた。
―――これは、避けれない。
刹那。
エクスクラメーションマークすら発せないほどの一瞬で、
俺の体はそれを受け止めることを選択した。
フォルカと同じように左手に理力を込め、フォルカの拳を受け止める。
「――――――ッく!!」
強い衝撃波と共に拳を受け止めた左手。
まったく、なんて威力だよ……。
痺れて感覚ねーぞ。
てか、岩くらいなら結構余裕で砕ける力はあるぞこれ…。
はは。
コノヤロー、一体どれほどの理力を拳に込めたんだ……?
てか、これ俺が防いでなかったらどうする気だったんだ?
もろにくらってたらどうする気だったんだ?
…あれ?
おかしいな?
過度な暴力は禁止って言った気がするんだけどな?
これは過度じゃなく適度。
……つまり、信用されてるってことでいいんだよな?
これくらいの攻撃を受け切れると信用して俺にこの攻撃をしてきたんだよな?
ああ、そうだよな?
俺以外に使ってないよなフォルカ?そうだよな?
「えっ?まじっ―?
これ受け止めれんだ……オレの必殺技だったんだけど」
フォルカの驚く表情。
なるほど、彼女は必殺技を初手に出すタイプらしい。
てか、必殺技を出すな!
必ず殺す技を出すな!!!
危ないだろうが!!
本当に死んだらどうすんだ!!
「へぇ、でも、これとかなら……どうかなっ?」
フォルカの姿が消えた。
いや、下だ。
フォルカは体制を低くし足払い。
その技は一度見ている。
マウントポジションを決められたあの時の技だ。
頭の中で避け方は考えていた。
俺は低くなったフォルカの頭に手を抑えジャンプしてその足払いを避ける。
が。
その腕を掴まれた。
そして、投げられた。
まるで柔道選手が一本背負いをするみたいに、
綺麗に俺は空中を舞った。
「が、っ、は!」
背中を地面に殴打し呻く。
柔道ならこれで一本。
俺の負けが決まるのだけど、
この世界に柔道はないし、審判のチャンセバが止めの合図を出さないということはまだ勝負は続いている。
フォルカは追撃する。
そのまま俺の顔面を踏み抜こうと右足をあげるが。
俺の方が一秒も速かった。
俺は地面に手を置き、崩れた体制を直し、フォルカと一定の距離を置く。
そうして、いま一度勝負は仕切り直し。
正直な話。
油断していた。
相手が女だから、
子供だったから、
って手を抜いていたってつもりはなかったけど。
心の奥底では少なからずフォルカへの暴力行為を躊躇する気持ちがあったのは事実。
だから先手を渡した。
だから一本を取られた。
これが戦場なら俺は死んでいたはずだ。
「…そうだな」
こういう戦い。
いや、競い合いというのかな……。
嫌いじゃなかった。
てか、めちゃくちゃ、楽しかった。
俺は口元の涎を手の甲で吹いた。
唇が切れたのだろう、血の味がする。
手の甲に血の線がひかれる。
アドレナリンのせいでどこか頭がふわふわとする。
けど本能が言っている。
俺の中のどす黒い狂暴な部分が戦えと言っている。
「はぁっ…!はあっ………!」
目前のフォルカは息を切らしていた。
あんな怒涛の攻撃をした後だ、そりゃ疲れるだろう。
けど残念。
スタミナ管理だって戦いの一つ。
「…はぁ……はぁ…こいよ…次はそっちのターン……」
それでもフォルカは俺を挑発する。
ああ、そうだ。
順当にいけば次は俺の番だ。
あんだけボコボコにやられてやり返さないわけにはいかない。
そうだよな。
さて、じゃあどうしようか。
ラインナップならいろいろ考えた。
ふふふ、どの技を使おうか。
フォルカは俺の攻撃のどこまでを耐えられるのだろうか?
どうやって使えば壊れてくれないだろうか?
はは……っ。
考えるだけで、もう、楽しかった。
……ははは。
楽しい。
今までやってきた努力の成果を実感できる。
なんでこんなに戦いってのは楽しいんだろうか。
楽しすぎる、終わりたくないと思える。
できることならずっとこうやって戦っていたい。
競い合っていきたい。
そうすれば俺はもっと強くなれるはずだ。
人攫いよりも。
ルイナよりも強くなれる。
そうだ、俺には伸び代がある、まだまだ強くなれるんだ。
強ければルイナだって俺を認めるだろう。
誰だって俺を認めざる得ない。
彼女に追いつくには強さが必要だ。
この世界で死なないためには強さが必要だ!
だから強く!
強く!
ひたすら強く!!!!
誰よりも
…………つよく?
「ユキさま…」
気づけば…俺の後ろにはチャンセバが立っていた。
俺の肩を強めに押さえつけていた。
「勝負ありです」
「…っえ?」
その一言で気付く。
フォルカの身体はフラフラと左右に揺れていた。
その表情は風邪に魘されているときのような、ぼーっとしたもので。
それは俺も体験したことがあるから分かる。
限界以上の理力を放出すると起こる、理力切れ。
バタリ。
フォルカは倒れた。
やりたいことを全部やって、
俺にやり切って、
満足そうな顔をして眠りについたのだ。
「ユキさま…忘れないでください。
彼女はまだ子供なんですよ」
チャンセバに冷ややかな言葉で言われてはっとした。
ああ、そうだ。
そうだよ。
フォルカは俺と違って純粋な子供じゃないか。
俺はそんな彼女に一体何をしようとした?
彼女に向けたあのどす黒い気持ちは何だった?
もし。
もしも、
フォルカが気絶しなかったら……。
俺は……フォルカに何をしていた?
考えたくなかった。
それを考えてしまえば自分が嫌いになってしまいそうで。
考えるのが怖かった。
呆然と立ち尽くす俺。
いつの間にかチャンセバはその太い腕でフォルカを抱えていた。
「ユキさま…貴方はきっと疲れているのです」
疲れている……。
いや違う。
俺は疲れてなんてなかった。
むしろ元気だった。
あれは…。
……俺の本心だった……。
「今日はもうお休みになって下さい。
フォルカさんは私が家まで送っておきます」
「え………あっ…。
ああ……頼む。
くれぐれも……よろしく……頼むよ……。
チャンセバ……」
俺はチャンセバの顔を見て言えなかった。
・・
「仕方ねえから、友達になってやるよ…お前と」
次の日、学校でのこと。
俺はフォルカに学校の階段裏に呼び出され直々にそう言われた。
友達…?
ん?
んー。
フォルカのその言葉に俺はすごい違和感を覚えた。
ちょっと整理をしよう。
こめかみを指で抑える。
俺とフォルカの関係はなんだった?
始まりはフォルカから。
挨拶がわりのグーパンチ。
俺はそれにブチギレ、フォルカを裸に剥いた。
フォルカはそんな俺にやり返そうと、俺を尾けた。
俺はそんなフォルカを鬱陶しく思い、
彼女にやり返す場を提供して、俺らは安全に大人の前で喧嘩をした。
そして、俺が勝った。
まぁ、勝ったと言っても俺からはほぼ何もしてないんだけど
向こうが勝手に自滅しただけなんだけど。
…でも、
フォルカは俺の勝利だと言っているし、そこは素直にそうしとくか。
で、勝ったんだよ。
勝ったから…友達?
まず、俺にとってフォルカはなんだ?
憎むべき相手?
うーん、どうもそんな感じじゃない。
じゃあ、友達?
うーーーん?そうともちょっと違う。
じゃあ、俺らの関係性はなんなんだ?
上手く言語化できない。
「フォルカ…。
一つ聞いてもいい?
なんで、初めに俺を殴ったの?」
とりあえずこれを聞いた。
初対面で殴られた理由を聞かずに友達にはなれなかった。
「それは…ごめん。
お前が強いと思ったから」
ん?答えになってるか?
「オレは強くなりたかった。
強くなる為に、強い奴と戦いたくて…」
「で、俺が強いと思って、殴ったのか?」
「そうだ」
いや、そうだとは言いますけどね。
「なんで、フォルカは強さを求めてるんだ?」
「それは…」
俺はフォルカの話を聞いた。
フォルカが強さを追い求める理由を聞いた。
フォルカの父親は冒険者だったそうだ。
冒険者。
それは戦力の一つで仕事をこなす、何でも屋。
魔物蠢く危険なダンジョンへ潜り一攫千金を夢見るのもよし、どこかの貴族の家の用心棒として飼われるのもよし。
自分の戦闘力というものを資本にして自由に生きるのが彼ら、冒険者。
なんでもチャンセバも昔はこの冒険者だったという。
だから冒険者の話については多少聞いて知っていた。
で、話を戻そう。
フォルカの父親はBランクという、中級程度の冒険者だった。
彼女の父は、なんでもこのアリュザークの付近にある中規模の洞窟形ダンジョン。
【啓蒙】という名のダンジョンの攻略班の一員だった。
【啓蒙】で日銭を稼ぎ、そうしてフォルカ達家族を養ってきたフォルカの父親はある日。
「死んだ」
フォルカは、泣きそうな顔を伏せながら話した。
ダンジョンとは、危険な場所である。
洞窟形、建物型、森林形と様々あるがどれにも言えるのはダンジョン自体が『生きており』。
その最奥にはそのダンジョンを司る、管理者がいる。
彼ら管理者は人間を釣るのだ。
チョウチンアンコウが光で獲物を引き寄せるみたいに、ダンジョンは人間が望む宝を自ら精製することによって人間を引き寄せる。
我々、人も馬鹿じゃないしそれを理解してそんなところに自ら潜り込むのだから当然責任も全て自分にある。
フォルカの父親はそんなダンジョンで事故を起こし死んだ。
「ある日、親父の仲間が数名…うちに来た…。
そして、親父の…親父の…」
フォルカはもう泣いていた。
涙声だった。
なら、無理に話さなくてもよかった。
そんなに泣くほど辛いなら聞かなくてもよかった。
でもそんな彼女はなにかに懺悔するように。話すのだ。
「…指を置いていったんだ」
…。
聞いたことがある。
ダンジョンで誰かが死んだ際。
死体は大きすぎてそのままでは持ち帰れない。
だから死者の腕やくすり指など身体の一部を切り取って、他は焼いてしまう。そしてその指を遺族に渡す。
そんな風習があるのだと。
「そんなことあるか!?
そんなことってあるのかよっ!?
親父は強かった!!誰よりも強くて優しかったんだ!!
いつだって、オレの…オレの誇りだった…」
「フォルカ…」
「オレは…親父を殺したダンジョンが許せないっ!
だから復讐する。
啓蒙のダンジョンはオレが『クリア』する」
クリア。
それはダンジョンを司る管理者を殺すこと。
管理者が殺されたダンジョンは魔物の生態系を形成出来ず、いずれ消滅する。
「その為にオレは強くなりたかった。
強くなる為にひたすら強そうなやつに喧嘩をふっかけては戦った。
お前を見つけて、一目で強いやつだと分かった。
武術を習っている奴だと分かったよ。
だからオレはお前とも戦ってみたくなった。
強いお前と戦えば、オレも強くなれるとそう思った。
だから喧嘩を売ったんだ。
殴れば殴り返してくると思って、
今までの奴らがそうだったからお前もそうだと思って。
でも、お前はあの時、避けなかった。
避けれたはずのオレのパンチを下手な演技でくらった。
それどころかその後もヘラヘラしていて。
オレは…それに凄く腹が立ったんだ…」
…。
ヘラヘラは…そうだね。
それは、なんかごめん。
え?でも殴った方が悪くない?
え?
これ、俺がいけないっすか?
ああ、そうすっか。
すいません、もうヘラヘラしません、
まじさーせん。
「分かってるよ。
あんなことしたオレが…お前と仲良くなりたいだなんてこんな事言える資格がないことも…。
…恥知らずだってことも。
でも、恥でもなんでもくらってもいいからオレは強くなり……」
「いいよ」
「……え?」
フォルカは俺の一言に驚き目を丸くした。
「だからいいよ。
殴れたことなら気にしてない。
俺だってフォルカの服を奪った。
この話はそれで、おあいこにしよう」
多分、どっちかっていったら俺の方が悪いけど。
「ほら」
俺はフォルカに右手を差し出した。
「握手しようぜ、フォルカ。
これは仲直りの握手だ。
フォルカがこの手を取った瞬間から俺らは友達だ。
そうしよう」
「…い、いいのかよ?」
「なんだ?仲良くなるだけだろ?
そんなんに資格も恥もないだろ?
一緒にいると楽しいから仲良くなるんだ。
それに少しくらい理由がつけられていてもいいじゃないか。
強くなりたいくらいなら全然いいじゃないか。
それともなんだ?
フォルカは俺とは友達になりたくないのか?
だから手を取らないのか?」
「え?いや、そんなことは…」
「じゃあ、取れよ。
いいから黙って取れよ。
仲良くなる方が人を殴るよりぜんぜん簡単なんだ」
「…っ」
フォルカの手が当たる。
彼女の手は暖かい手だった。
「よ、よろしく、ユ、ユキ…」
顔を赤らめるフォルカ。
「ユッキーでいいよ」
「ゆ、ユッキーぃぃっっ!!」
半年前のそれが俺とフォルカの出会いだった。
それから俺とフォルカはよく遊ぶようになった。
学校でも、放課後でも、
隙間があれば俺らはどこでも一緒に遊んでいた。
ま、遊んでいたといっても、戦っていたんだけど。
組み打ちってやつ。
どんな攻撃をしたら強いかとか、この動きはこうだから弱いとか、そんなのを互いで確かめ合っていた。
もうここ最近は、
フォルカの悪い噂は全く聞かなくなっていた。
・・・
10歳になった。
変わったことは特にない。
フォルカと遊び、家ではチャンセバス。
セバスチャンセバ。セバースとの稽古。
まさに、平和そのものだ。
欠伸が出ちゃうくらいには退屈な日常が続いていた。
「ねーねーユッキーユッキー」
学校でのことだった。
授業終わりの昼休み。机に座って欠伸でもしていたらだれかから、声をかけられた。
「ん?なに?」
俺のことを呼ぶ彼女は、アカリ。
アカリ・フレキッシュ。
同学年のクラスメイトってやつで、それなりに話し合える仲の良い人間だった。
「なんでユッキーはいつも部屋にいるの?
みんなみたいに外で遊ばないの?」
彼女の言う通り、クラスメイトの大半以上の子供は元気よく外で遊んでいた。
部屋の中にいる俺を珍しく思ったのだろう。
「え?あ…眠くてさ。
別に寝ててもいいだろ?何してもいいから自由時間なんだ」
正直言って、
この学校に来ることに最近は飽きを感じ始めている。
一日の大半を使ってやることと言ったら子供の為の教育で、前世の記憶を持っている俺がここで学べることは何一つとしてなかった。
それなのになぜ通っているかと言われれば、それは家族の意向ってやつで、グレンから家庭教師をつけないのなら、学校はきちんと卒業したほうがいいと言われてしまったから。
もちろん、俺だってそう思わないことはない。
我儘で家庭教師を外してもらってる身だし、学歴ってのもこの世界ではある程度重要なものだ。
特に俺は名商の坊ちゃん。
後々に家を継ぐ身としては見せかけだけの学歴でも必要であって、だから大人しくこうして暇で暇で仕方のない学園生活を欠伸しながらも送っている。
「でもつまらないよ」
「つまらない?」
え?聞こえてた?心の声?
「アカリが」
いや、お前かい。
「ならアカリも外で遊べばいいんじゃない?」
「外には男の子がいるからやだ。
男の子って乱雑なんだもん」
「え?
そんなこと言ったら俺だって男の子だぜ?
獰猛だぜ?
がおー!」
「ユッキーは別」
なんだよ。
その特殊ルールは。
「それに外は日焼けしちゃうから」
子供が日焼けなんか気にすんなよ。
てかむしろ、しろ!
って、いや。
あまり俺が人のこと言えないか…。
「ねーねーだからアカリと遊ぼうよ、ユッキー」
そうアカリに肩をぐらぐらと揺らされる。
……。
まぁ、俺も暇だったし、いいか。
「いいよ…じゃ、何して遊ぶ?」
「おままごと」
えー。
なんかすごく退屈そうだなぁ…。
「ユッキーがお父さんでアカリがお母さん。
で、この子らが子供ね」
「はいはい、分かったよ」
学校に入って一つ良かったことといえば。
世間の同年代のレベルを知れたことだった。
俺は自分自身で完璧に子供を演じていたとおもっていたけれど、こうやって客観的にアカリを見て見てみれば、俺の演技なんてゴボウだったんだなと思わざるを得ない。
それくらい子供ってのは、ちゃんと子供らしかった。
「そこ!ちょっと待ったぁーーー!」
忙しない物音を立てて、教室に入り込んだ人間がいた。
フォルカだった。
その容姿はここ一年で随分とイメチェン。
短かった髪も肩にかかるくらい伸ばしたようで、どこにでもいるようなショートヘアーのスポーティな女の子といった感じ。
一応気になって、なんで髪を伸ばしたのか聞いてみた。
髪なんて強くなるのにはむしろ邪魔。
長い髪は乾かすのも面倒だし掴まれるだけ損と言ってたのは他でもないフォルカだったから。
けれどもフォルカは「気まぐれ」としか答えなかった。
「あ、フォルカちゃんだ」
どうやらアカリとフォルカの2人には面識があるようだった。
「悪いな、アカリ!
ユッキーには先約がある!
これからオレと稽古すんだよな?な?ユッキー?」
フォルカは俺の腕をグイグイ引っ張った。
いや、そんな約束した覚えはねえよ。
「えー?
そうなのユッキー?」
アカリがもう片方の腕を引っ張り真偽を俺に問いてくる。
うーん。
本当はどっちでもなく眠いから寝たいんだけどなぁ。
…でもアカリの方にはいいよと言っちゃったしなぁ。
よし。
なら、せっかく来てもらったフォルカには犠牲になってもらおう。
友達だろ?死なば諸共だ。
「フォルカも一緒に遊ぼう」
「あ、いいねそれ。
フォルカちゃんもアカリ達と一緒に遊べばいいんだ」
「へ、遊ぶ?」
「ほら座れよフォルカ。てきとーなやつの席借りてさ」
「…まぁ、遊ぶのも…いっか。
いいぜ?何を壊しに行く?」
壊すな。
遊びと聞いて何かを壊そうと連想するな。
お前はどこの破壊神シ◯ーだ。
「壊さないよ?
おままごとだよ。フォルカちゃん」
「おままごと?
それは強いのか?」
ぜんぜん強くねえよ。
強さでこの世の全てを判断しようとするんじゃねえ。
どっちかって言ったら強さの真反対だよ。
愛と平和と優しさ120%で構成されてるよ。
「違うよ、演技をするの。
ごっこ遊び」
「へぇ、演技か…。
ああ!それなら超得意だぜ!」
絶対嘘だ。
おままごとも知らない癖によくそんな自信満々に言えるな。
「ユッキーがお父さんでアカリがお母さん。
フォルカちゃんが子供役かな」
「えー子供?
オレガキ嫌いだよ」
「ペットの犬でもいいよ?」
「じゃあ犬だ!」
喜ぶな。
子供が犬かのハズレクジを強いられてどうしてそんな意気揚々と嬉しそうに犬が選べるんだ。
「バウッ!!バウッバウッ!!」
大型犬かよ。
ちゃんとやるのかよ。
しかも、結構上手いじゃねぇか!
「じゃあ、この子らが子供ね」