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第2話 どうやって今の職場から逃げ出せば良いか?

田舎暮らしに向けて、行動開始です。

 俺は、宝くじアプリのマイページに書かれた、

 「一等賞 10口 10,000,000,000円」と表示されたスマホ画面を、じっと見ていた。


 幸運なことに、ロト7はネットの公式サイトで購入していたので、宝くじを購入している姿を目撃されていることは無いし、売り場から漏れる心配はまず無い。


 これから、何をどうすればいいのだろうか?


 一番簡単なのは、セキュリティがしっかりとしたタワーマンションを買って引っ越した後 さっさと仕事を辞めることだが、今のタワマンは庶民が変えないほど高額だ。


 底辺の仕事をしているくせに、タワマン買うなんて言うと、その金の出所を疑われる。

 株で稼いだと言っても、不動産屋はトレーダーをやっているかどうかくらいはすぐ見破るし、取引の際に銀行で大金を持っていることがバレそうだ。

 銀行の従業員は預金者情報の守秘義務について厳守するように指導されているはずだが、不動産屋従業員の守秘義務などあってないようなものだ。

 “ここだけの話”で従業員が夜の街で喋り倒すのが想像される。


 しかも、俺がタワマン探している姿を見つけた誰かが、周囲に言いふらす可能性も高い。

 だから、タワマンを買うのは、今働いている会社を辞めて、元同僚が俺のことを忘れた後だ。

 でないと、俺はタワマンから一歩出ると、カネクレ族から追い回される。買い物に出かけることすらできなくなる。


 だが、仕事を辞めるにも理由が必要だ。

 単に仕事が嫌になったと言う理由は、おそらく何か訳ありと疑われるだろう。


 底辺は、他人が持っている金の臭いを嗅ぎつける超能力者の集団だ。自分が金を持っていないから、他人が持っている金に敏感だ。

 さっきまでの俺も、同じ穴の(むじな)だ。

 それに、やつらに気づかれないとしても、身寄りのない底辺だ。

 金の臭いを嗅ぎつけた強盗団に襲われて、命まで奪われたらたまったものではない。


 俺はいい考えが浮かばないので、「下手の考え休むに似たり」と考え、とりあえずベッドに寝転んだ。


 天井のシミを数えるのも馬鹿らしいので、寝転んだままテレビを付けて見ることにした。


 テレビでは、年寄りに人気の「山奥の一軒家」の再放送をやっていた。


 家の持ち主が、取材スタッフの質問に答えながら、敷地の建物や農地の紹介をしている姿を見ていると、ある考えが頭に浮かんだ。


 そうか、田舎暮らしがいいかもしれない。


 俺は、元々田舎でじいさんばあさんの野良仕事の手伝いをしていたことがある。元々、農家の子供や孫だった人間が農業をするのはよくある話だ。

 幸いな事に職場の人間に、俺が農業をやっていた事を話した事はない。

 故郷に帰って、農業をすると言っても不自然さはない。


 だが、ここで重大な問題が出てくる。


 じいさんの土地は、今では親戚のモノだ。

 親戚たちは、故郷と称する田舎を捨てて都会に出て行った俺を許す気は無いだろうし、俺もあんな恨み辛みしか無い「(へき)地」という言葉が当てはまり過ぎる故郷とは呼べない田舎に、今さら戻りたくない。


 俺にとって、故郷でも何でもない地獄のような田舎で暮らすつもりは無い。

 戻っても、「二度と来るな」と罵声を浴びて、水ぶっかけられて追い出されるのがオチだろう。

 だが、東京に居続けるのも問題だし、危険すぎる気がする。


 一体どうすれば・・・。


 そうか、俺は金を持っている。適当な場所に家と土地を買えば良いし、いっそのこと山をまるごと買って、そこで小さな畑を開いて暮らすのも良い。


 庶民には想像もできない金額の金を持ってしまったせいか、とんでもない事を考えている。

 山をまるごと買おうと考えてしまうとは・・・。


 そう思うと、クソみたいな嗤いがでてくる。

 一時間前まで、パソコンとメモリーを買った金の埋め合わせをどうするか、必死に考えていたのに、今は何千万円もする家や土地を買う事を考えている。


 調子こいたバカじゃねえか。

 このままじゃ追い剥ぎ強盗に、ケツの毛までむしり取られる事は確実だ。


 ひとしきりバカな自分を嗤った後、俺は田舎暮らしプランをどう進めるか考えていた。


 本屋で販売している、「田舎暮らしの本」を買うのは危険だ。

 普段と違った行動を他人は見逃さない。


 宝くじが当たった事がバレるのは、普段とちょっとだけ違うつまらない行動をした時だ。


 俺は、昔宝くじの高額当選を狙って、真剣に研究した事がある。


 そのとき読んだ宝くじ当選本に、高額当選後に気をつける事の一つに、「周囲に当選がバレない事」という文章があった。


 高額当選がバレるのは、普段と違う行動をした時だ。

 当選が嬉しくて、新聞を何紙も買ったため、新聞を売っていた店の店主に疑われてバレた。

 友達と一緒に宝くじを買いに行って、友達が一等の当選番号から買ったくじを推測されてバレた。

 末等の300円に当選しただけなのに、3000万円当たったと誤解されたとか。


 一番悲惨なのが、宝くじが当たったら「〇〇という車を買う」と言っていた人が、貯金してローンも組んでやっとの思いで〇〇という車を買った後、突如寄付や借金の申込が殺到したという、笑えない笑い話だ。

 普段の広言をおぼえていた奴が、××が車を買ったから宝くじの高額当選したらしいと、言いふらしたことが原因だったそうだ。


 などなど、高額当選がバレるのは、とにかく普段と違う行動をした時だ。


 俺の場合、弁当を作っていたのを外食に変えただけで、疑われる事だろう。それでなくてもパソコンを買い替えた事を知っている奴がいれば、宝くじの高額当選を疑われるかもしれない。

 俺ががどう言おうが、PC買い換えたことが証拠だと言って、言いふらすことは容易に想像できる。

 ましてや、田舎暮らしのための本を読んでいたら、疑われる事は確実だ。


 どうすれば、周囲に知られずに田舎暮らしを進められるか?


 考えた末に思いついたのは、ネットを活用すれば良い、と言う簡単な方法だ。


 ネットの誹謗中傷事件で逮捕される奴が最近増えてきているが、それでもネットの誹謗中傷や炎上騒ぎは全然減らない。


 理由は簡単で、匿名性が高いとみんなが思っているからだ。

 警察が捜査をしない限り、どこの誰が誹謗中傷したか分からない。


 だったら、ネットで田舎暮らしできる物件を探せばいい。

 東京を中心に田舎暮らしをしたい奴は山ほどいるはずだから、物件情報やノウハウがネットに載っているだろう。

 そして、家の中でネット検索する限り、同僚にバレる確率は極めて低い。


 だとすれば、早速行動だ。


 そう思った俺は、ベッドを降りて、パソコンを起動した。


 ポータルサイトを開いて、「田舎暮らし」と検索をかけた。

宝くじの高額当選は、一歩間違うと破滅が待っています。

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