バレンタインデーと白蘭の恋 第3話
婉容はマリーと栄子と共にゴディバの店を出ると街中を散策し始めます。栄子の提案で新しくできたお店をウィンドウショッピングすることになったのです。
「こちらですわ。」
栄子を二人を喫茶店へと案内します。栄子が女学校時代夏休みに上高地に来る度に親友と訪れた場所です。
「ここのケーキ絶品ですのよ。」
栄子達が店へ入ろうとした時
「栄子夫人どうされたのですか?」
マリーが声をかけます。
栄子は窓越しに1組のカップルを見つけました。「」男性は軍服姿で顔はよく見えませんが女の子は蘭の花の打掛を羽織っています。栄子は彼女に身覚えがあるようです。知り合いでしょうか?
少女の方も栄子に気付いて立ち上がり手を振ってきます。
「栄子さん、栄子さんでしょ?」
蘭の打掛の少女が店から出て来ました。
「全子さん?」
栄子も彼女のことを知ってるようでした。
「栄子、お知り合い?」
婉容が尋ねます。
「女学校の同級生よ。」
「久しぶりね。貴女も来てたなんて。」
「この喫茶店も夏休みになると行ってたわね。今日は2人を連れて来たのよ。」
2人は再会を喜び合います。
婉容とマリーは全子にお辞儀をします。
「栄子さん、うちも会わせたい人がおります。」
3人は全子に連れられ店内へと入って行きます。
「お兄ちゃん。」
全子は一緒にいた軍服姿の青年に声をかけました。
『嘘?!』
青年を見て栄子と婉容は声をあげます。
「婉容様、奇遇ですね。」
「芳子こそどうしてここに?!」
全子といた青年は芳子だったのです。
「全子さん、どういう事?貴女のお兄様って蝦夷討伐のために北へ向かったはずでは?」
「いえ、兄上様とは別。今日お兄ちゃんになってくれたの。」
時を遡ること数時間前。全子は侍女と共に贔屓の呉服屋に来ていました。しかし
「全員動くな!!手を挙げろ!!」
突然黒服の強盗段が呉服屋を襲撃してきたのです。
「助けて~!!」
全子は強盗団に捕まり人質になってしまいました。
「騒ぐな!!」
拳銃を突きつけられる全子。
「こいつの命が惜しけりゃ金を出せ!!」
その時
「待て!!」
銃声と共に軍人達が現れました。彼らは訓練合宿中の日本軍でした。
強盗団は連行されていきます。
「大丈夫か?」
1人の軍人が全子に声をかけ抱き上げます。
「ありがとう。」
京都訛りで全子はお礼を言います。
「大丈夫だよ。もう怖くないよ。」
軍人は全子の髪を優しく撫でます。
「君名前は?」
「さっ坂上全子と申します。兄上様。」
「えっ?!」
「ごめんなさい。兄上様もこうして私の頭をよく撫でてくれたものでして。」
「そうか、だったら僕が君の兄になってあげるよ。」




