バレンタインデーと白蘭の恋 第1話
新連載スタートです。
皇太子妃の薔薇のお茶会の続編です。
「マリー、栄子、今日は本当にありがとう。」
とある2月の紫禁城満州国皇后婉容の部屋。
親友のマリー・アントワネットと鍋島栄子が訪れていました。マリーはフランス王妃、栄子は大日本帝国の侯爵夫人。2人とはマリーが主宰するベルサイユ宮殿の舞踏会で出会いました。
「婉容皇后様、素晴らしいわ。女性だけの舞踏会も。男役の方のリードもときめいてしまった。」
婉容が主宰したのは女性だけの舞踏会です。
以前婉容の護衛についていた男装の麗人や越劇の男役に依頼して貴婦人や令嬢達のエスコートをお願いしたのです。マリーも栄子も招待されていました。
「あの男装の麗人、宝塚を連想させましたわ。」
「栄子夫人、宝塚って何ですの?」
マリーが栄子に尋ねます。
「宝塚というのは日本の兵庫県にある街ですの。そこに新しい歌劇団ができたのよ。」
宝塚、正式名所は宝塚少女歌劇団といいます。名前の通り女性だけの歌劇団で恋物語を演じます。男性の役を演じる女優は男役、女性の役を演じる女優を娘役と呼びます。男役は日本の少女達を日夜虜にしているのです。
「では越劇のような物かしら?」
「そうね、マリー。」
「中国には越劇、日本には宝塚。東洋には女の子だけの舞台があるのね。」
マリーの住むフランスにはオペラやバレエ、演劇もあるのですが、どれも男性と女性が演じる物ばかりです。
「失礼致します。」
マリーと栄子と婉容が宝塚の話で盛り上がっているとメイドが花束を持ってやってきました。
「皇后様、花束が届きました。」
送り主の名前は川島となっています。
「まあ、芳子からだわ。」
芳子とは川島芳子。かつて婉容の護衛をしていた男装の麗人です。舞踏会でエスコートをお願いするためにお城へ戻ってきてもらったのです。
「お城を離れてもこうして毎月白蘭の花を送ってくださるの。だけどせっかく戻ってきてくれたのだから直接渡してくれても良かったわ。」
婉容は寂しがりながらも愚痴をこぼしています。
「皇后様、こちらも同封されてました。」
婉容がメイドから渡されたのはメッセージカードでした。
「芳子。」
婉容の顔からはすっかり笑顔がなくなってしまいます。
「皇后様どうされました?」
マリーが声をかけます。
「芳子が日本に。」
メッセージカードにはお別れの言葉が書かれていました。芳子は日本に帰るようで最後に婉容に会うために舞踏会に出席してくれたのです。
「皇后様、芳子様の家は日本のどちらにあるかお分かりですか?」
栄子が尋ねます。
「確か、松本。長野と言っていたわ。」
今回は婉容様が主役です。




