ミモザの香水 第2話
「これが私?!」
ユリィは鏡に映る自分の姿を見ます。黄色いドレスにマリアと同じ夜会巻き、頭上にはティアラが乗せられてます。先ほどのブラウスとスカートにエプロン姿とは打って変わった姿です。
「これは?」
手にはドレスと同じ黄色い仮面がありました。
これがないとオペラ座には入れません。
「さあ、それは香水と一緒に入れて持って行くといいわ。」
マリアは巾着袋に香水瓶と仮面を入れて渡してくれました。そして赤いマントを羽織らせてくれます。
「これはわたくしの。お貸ししますわ。」
「感謝致しますわ。マリア夫人。」
話し方も貴婦人のようなものに変わっています。
「うふふ、ユリィさんすっかり貴族の令嬢だわ。だけどお気をつけて。」
マリアはユリィに教えます。香水の効き目は2時間だと。効き目が切れると元の花売り娘の姿に戻ってしまうのです。
「でも大丈夫。香水を振りかければまたドレス姿になるわ。さあ、行ってらっしゃい。」
「そうだわ、その前に御代を。」
ユリィはお金を渡そうとします。しかし
「お金はいいわ。素敵な時間を過ごせた後で。」
ユリィは行ってきますと言うと馬車に乗ってオペラ座へと向かいました。
「さあ、お嬢様。お手をどうぞ。」
ユリィは仮面をつけると御者に手を取られ馬車を降ります。
(ここがオペラ座?!)
オペラ座はお城のような大きな建物でした。
ロビーには既に貴族や貴婦人達で溢れ返り、華やかな賑わいを見せています。皆ユリィ同様仮面を被っていて誰が誰だか分かりません。
オーケストラの音楽が鳴り響くと貴婦人達は紳士に手を取られステップを踏み始めます。
「お嬢さん」
ユリィは声をかけられました。
声をかけてきたのは紺の軍服にブロンドの長髪の紳士です。紫色の仮面をつけています。
「私と踊っていただけますか?」
「はい、殿下。」
ユリィは差し出された手を取りました。ダンスに誘われるプリンセスのように。
「お嬢さん、僕が王子だとよく分かりましたね。」
ユリィは息を飲む。絵本で読んだプリンセスの真似をしただけなのに。
「ええ、貴女がオペラ座に出入りしているという噂はよく耳にしておりますわ。」
ユリィは適当に話を合わせる。
「それは僕が貴族の娘を拐いにオペラ座の地下からやって来てるという噂ですか?僕は地底の国の王子なのですよ。」
ユリィは一瞬顔が強ばりました。仮面を被った異界の住人が紛れ込み自分を異界へと連れて行こうとしてるのだろうか?
「ははは、冗談ですよ。」
ユリィはそれを聞いてホッとします。貴族の紳士が自分をからかっただけだと。
二人で話していると曲が終わりました。それと同時に時計の音が鳴り響きます。
(大変だわ!!)
ユリィは足元に目をやります。ドレスが今にも消えようとしているのです。




