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-3 未明の訪問者

短め

07

 アルバート神父から聖女の話を告げられて5日が過ぎた。

 命の危険がある仕事なだけに3人にも参加する意志を確認したところ、誰一人欠けることなく聖女の案内を請け負うことが決まった。

 いつ城の人間から連絡が来るのかと緊張し、いつも通りに振る舞っていてもふとした拍子に憂鬱な気持ちが押し寄せてくる。

 そんなこんなでの5日間だ。

 聖女のせの字も聞くことはない平和な日々が続き、緊張感が途切れかけてしまう。

 もしかしたらあれはアルバート神父の冗談だったのではないか、などと淡い期待を抱き始めた頃になってとうとう城から使いがやってきてしまった。

 当然のことながら今日いきなり聖女を案内するわけではない。

 孤児と騎士、言葉は似ていても両者に関わり合いなど早々あることではないので、騎士は案内役の俺たち孤児の顔を知らないし、俺たちだって聖女を護衛する騎士の顔は知らない。

 そのため、城からのお迎えがわざわざ孤児院まで出向き、俺たちを城へ連れて行って事前の話し合いが行われるわけだ。

 成り代わりによる情報の漏洩や計画自体を書き換えるような真似を防ぐためには当然だろう。

 とは言え、時間は市が開くよりも早い早朝――と言うより未明と言っていい時間だ。

 迎えが来たからと眠っているところを起こされたので、思わずあくびが出そうになる。

 なんとかあくびを噛み殺しながら3人を連れて教会の入り口まで来るとアルバート神父の横には冒険者らしい軽鎧を纏った男の姿が2つある。

 彼らが迎えだろう。

 1人は20代中頃くらいの若い金髪の男で、もう1人は40代くらいのアッシュブロンドが特徴的なナイスミドルっぽい男だ。

 単なる迎えではなく彼らも聖女の護衛に関わる人間だろうから、しっかりと顔を覚えておかないとな。


「今回、護衛の実働隊長を務めるギルバート・サー・グンターだ」


 そう言って手を差し出したナイスミドル――グンターからは高圧的な感じや嫌味な感じはない。

 見た目の通り実直な男なのだろう。


「クローです。後ろのデカイのがフィリックス、小さいのがリチャードで、紅一点の彼女はミリア。この3人も合わせた4人で聖女の案内を務めるつもりです」


 俺は3人のことも合わせて紹介しながらグンターの手を取った。


「よろしく頼む。こいつはアルジーク、当日までの連絡係だ」

「よろしく」

「よろしくお願いします」


 軽い調子のアルジークにこちらも頭を下げる。

 若い男が連絡係ということは、理由は恋愛ごとにするつもりかな?


「神官の1人に恋慕して、足繁く通うという設定だ」


 グンターの説明は俺の予想した通りのものだった。

 頻繁に教会へ通う人間は意外と目立ってしまう。

 この世界における教会は病院と同じだからで、毎日のように通う人間などほとんどいないからだ。

 今回は冒険者の変装をして来たが、知り合いにでも見つかれば普段は城にいるだろう人間が、なぜ教会に変装してまで行くのかと疑問に思うだろう。

 広いがどこに知り合いがいるかもわからない王都で、わざわざ冒険者の格好で教会を訪れるのは変装が見破られてしまうリスクが伴う。

 それならばいっそのこと、最初から騎士として教会に来たほうがいい。

 若い男が女性神官に恋をしたから、口説くために通っているとなれば変装などよりリスクも低い。

 アルジークのように軟派な雰囲気の男であればなおのことだろう。


「教会の裏手に食料を積んだ馬車が停めてある。手前の箱の奥に空間があるから君等はそこに隠れていてくれ」

「わかりました。みんな、行くぞ」


 彼らが騎士のふりをした人さらいで、行き先が城ではなく別の場所では? などと一瞬考えるが、可能性は低いだろう。

 まだ話し合いもしていない段階で俺たちをさらうメリットがない。

 ちょっとばかり危ないことに首を突っ込む羽目になったからと疑心暗鬼になりすぎているな。

 俺は無駄な考え振り払うように頭を振り、眠たげに目をこする3人を引き連れて馬車に乗り込んだ。

 先程の2人はまともそうな人たちだったが、城で顔を合わせるだろう他の騎士はどんな人だろうか。

 そんな風に思考を切り替えつつ、こみ上げてくるあくびを噛み殺すのだった。


21/04/09:サブタイ変更

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