-3 騎士の愚行
本当は前話の最後の部分だったけど、いろいろあって分離したためすごく短め
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「おいおい、坊主どういうことだ?」
「裏では随分と威勢がいいみたいだなぁ」
「馬鹿ミリア、お前……なんで目の前で言っちまうかな……」
うまく行きかけたところだったというのにミリアのおかげで2人が俺を見る目はガラリと変わってしまった。
状況的に間違いないので財布扱いは冗談で済ませられるが、影で馬鹿呼ばわりされる謂れはないと思っているのだろう。
ミリアが言っていることは事実なだけになんとも否定が難しい。
ジト目で俺を見る2人を前に溜息を零した。
「はぁ……これだけでもまた交渉材料になったっていうのに……いいですか? これは貸しですよ?」
「あん?」
「どういうことだ?」
ミリアのおかげで俺が影で2人のことをどう呼んでいたのかバレてしまった。
そのことで慌てふためき、謝罪して条件を緩めるか言い訳でもするのだろう――と思っていたらしい2人は、俺が強気な態度を崩さないことに眉をひそめた。
「お二人が狙っているリエッタさんとサラさんは神官です。それなのにあなた方は何を馬鹿なことをしているんですか?」
「「?」」
わかってないみたいだな。
まぁ、これだけでわかるなら最初からこんなことにはなっていないだろう。
「百戦錬磨を自称するお二人は、花やアクセサリーを持って2人に会いに来てましたけど、たしかにサラさんもリエッタさんも女性ですからそう言った贈り物も喜びますよ。でも、普通の女性よりそう言った物の効果は低いんです」
「そうなのか?」
「マジか?」
プレゼント攻撃は物と相手によって効果は大きく違うのだ。
相手がその手の商売女であったなら、高級品を贈れば効果は絶大だ。
そうではない『普通の女性』として大多数が思い浮かべる女性であれば、好みと実際に贈られる物による違いはあれど、好みに合ったものであれば普通の効果があるだろう。
リエッタとサラは普通に接しているだけならばそう言った女性らと違いはない。
しかし、彼女らはメラスグリンデを信仰する神官なのだ。
「サラさんやリエッタさんみたいな神官相手に、仕事が終わるタイミングに合わせてプレゼントを持って会いに行くよりも孤児院の子どもの相手をするだとか、ボランティアをして仕事が終わるのを待つほうがよっぽど効果的です。贈り物だって、彼女たちに贈るより孤児たちのためになる遊具だとか本の方がいいでしょうね」
「な、なるほど……」
「確かに、言われてみれば新緑の清徒ならその通りかもしれねぇ……」
メラスグリンでは慈愛と清貧の神であり、それを信仰する神官もまた慈愛に溢れ、清貧を尊ぶ。
普段の行いもまた自らを律する修行であると考える神官にとって、プレゼント――その中でもアクセサリーなどの装飾品などは特に扱いに困るのだ。
過度に着飾ることは清貧とは正反対の行いであり、自らが使うことはできない。
だからといって、プレゼントである以上は送り主の思いが込められているから売ったり捨てたりするわけにもいかない。
見て楽しむ花ぐらいならば別だが、アクセサリーなどを贈られても持て余してしまうわけだ。
「でしょう? 俺が馬鹿だと言いたくなるのもわかってもらえましたか?」
「ん……まぁ、ガキに馬鹿扱いされんのは癪だが……」
「言われても仕方ないかもな……」
2人も俺の言葉で自分たちの愚かさに思い至ったようだ。
神官が贅沢を嫌うのは一般常識であり、リエッタやサラもその例にもれない。
だと言うのに、ビルとゲイツの2人は俺に好きそうな小物やアクセサリーなど自分が物を贈る前提で質問することはあっても彼女らとの仲を進展させるためにどうすればいいと思うのかなどといった質問をすることはなかった。
彼女らの反応が芳しく無いからと諦めかけても自分たちの考えが根本から間違っていたのだと思っても見なかったのだろう。
「わかってもらえればいいんです。さ、誤解も解けたところで行きましょうか」
どうでもいい話ですが、ジークの同僚2人の名前がビルとゲイツというくっつけると世界的なお金持ちの名前になるのはまったくの偶然です




