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-3 裏の裏

短め

16

 城へやってきたアルバート神父とソフィアが話をしている間、俺たちはグンターとこの3日間の最終確認を終えた。

 レオーナとゴットンがいるためここでの話は裏の裏まですることはできないものの概ね計画通りと言っていい。

 全てを把握しているのはグンター、ジーク、俺の3人だけである。

 表向きの理由は普段の王都を見せるだけでも聖女には新鮮な経験であろうが、それよりもさらに非日常であり、大人から子どもまでが楽しむ祭りを経験するほうが聖女にも喜んでもらえるというものだ。

 裏の理由は祭りを行うことで聖女の行動範囲を3つに絞り、それぞれの警備状況などから襲撃を3日目に限定する点にある。

 また、初日と2日目――貴族区と正門大通りは特にそうだが、3日目の北区でも祭りを行うことで警備が増強され、表向きは聖女の護衛は4人でありながら有事には多くの警備兵や騎士を動員できる形にすることができた。

 さらにある裏の裏、実のところこれは褒められた考えではない。

 第一王子やグンターを説得するための表向きの裏の理由は警備を増強することで襲撃を起こしにくくすることだ。

 だが、警備が増強されたところで襲撃がなくなるとは言い切れない。

 なぜなら敵にとって聖女に護衛がつくのは当然であり、その上で襲撃するからだ。

 警備が厳しくなったところでやることに変わりはない、むしろ警備が厳しくなることで襲撃が苛烈になることも十分に考えられる。

 そこで俺が求めたのは、襲撃犯ですら行動が読めない民衆という盾である。

 普段の王都も人は多いが、祭りの人出となれば動くのもままならないほどに多くなる。

 そうすると敵が聖女を襲う方法は、人混みに紛れて暗殺するか、人の少ない路地裏で襲う、そうでなければ周囲に人がいることを無視して襲いかかるかのいずれかだ。

 人混みに紛れたところで、聖女へ接触しようとする人間は騎士がガードすればいいし、騎士の監視下で路地裏へ誘導することなど不可能に近い。

 必然的に襲撃を行うならば、民衆も巻き込まねばならなくなるわけだが、これは襲撃犯にもリスクが大きくなる。

 地球であれば一般人の多くは逃げ惑うだけであろうが、この世界には冒険者なんていう存在が一般人に混じっているのだ。

 その実力はピンからキリまで様々だが、高ランク冒険者が混ざっていればと考えれば襲撃犯も尻込みするだろう。

 そうでなくても、巻き込まれる人間が増えれば聖女が襲撃された責任を追求することにも支障が出てくる。

 聖女への襲撃は、被害者が聖女だけだからこそ大きな効果を発揮するのだ。

 聖女も含めた大勢の被害者が出てしまうと聖女への被害が小さい場合責任追及が難しくなってしまう。

 周囲の被害によっては、ウェアカノ王国で起こったテロ行為にたまたま聖女が巻き込まれたという形になってしまうからだ。

 それでも責任を追求することもできなくはないが、ピンポイントで聖女を狙った場合に比べれば効果は格段に弱くなってしまう。

 妙案にも思えるが、これにはグンターも第一王子も難色を示した。

 俺が求める民衆という盾は、彼らにとって守るべきものだからだ。

 だが、俺にはそんなこと関係ない。

 俺たちだって本来は守られるべき民であり、無理やり命を懸けるようなことに巻き込まれてしまったのだ。

 自分たちが助かるためなら何だって利用させてもらおう。


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