1日目
朝の午前3時。
一番鶏も眠っている、そんな時間から、俺は独り、厨房で豚骨を煮込み出汁を作る。
コトコトと音を立てる寸胴鍋の前で、灰汁を何度も取り、どこまでも澄んだ液体を目指していく。
そうやって3時間もしてくると、スープの声が聴こえてくる。
『もっと美味しくしてくれ』『もっと綺麗にしてくれ』
スープは静かに、語りかける。
そう、彼らは、雄弁なのだ。
『スープの声を聴こえる様になる』
それができて、ようやく始めて、『らぁめん屋』を標榜することができる。
俺は、そう、考えている。
~らぁめん『七転八倒』店主 にを~
※らぁめん『七転八倒』
東京都△△区に居を構えるレトロな雰囲気のらぁめんや。
最高級の食材を厳選し、丁寧に調理されたらぁめんは、もはやご馳走と言っても過言ではないだろう。
店主のおすすめメニューは『むかしながらの醤油らぁめん』(2500円 税抜)と、『ほんものの豚骨らぁめん(2500円 税抜)』。
昔堅気の店主なので、すぐに言葉や拳骨が飛んでくることもあるらしい。
いくららぁめんが美味しかったとしても、あまり騒がしくして店の空気を壊さない方が良いだろう。
潰れるまで、あと99日。