82 狙われるガーリックステーキ
全員一斉にガーリックステーキに齧りつく。
「……っ!?」
一瞬、時間が止まった…。次の瞬間にはガチャガチャと食器がぶつかる音や、肉を食い千切る音、意味もなく叫ぶ声などで溢れた。
「うっま…。ナニコレ…」
「えぇ〜、ホントにレッドボア? めっちゃ美味しい!!」
「たしかに、この匂いがたまらん。表面がカリッとしているのに、中はジュワッと柔らかい…。」
「……」
ミーヤさんは無言で食べ続けているが、残りの3人は匂いを嗅いだり感想を言ったり、とにかく騒がしい。それなのに、食べるスピードは凄まじく速い。
私の分は前もって一口大に切ってあるので、大きな口を開けてガブっと頬張る。子供の口には十分大きい。
一瞬、頭が真っ白になった。これはヤバい…。
口の中はお肉でいっぱいだ、ジュワッと出てくる肉汁が美味い。ニンニクの香りもしっかり出ている。幸せ過ぎて頬が緩む。
「あぁ~、美味しい…。塩味だけのはずなのに…」
一切れをじっくり味わって食べていると、すでに食べ終わったミーヤさんから強烈な視線を感じた。
……狙われている……。彼の皿はすでに空だ。
えっ、もう食べたの!? ちょっと早過ぎない? 他の3人も半分以上食べ終わっている。ヤバい、おかわりラッシュが始まる…。
大きな一切れを頬張りながらガーリックステーキ作りを再開する。どうしよう、このままじゃフライパンが足りないな。
ちょっと待って、閉門時間って何時なの? このままだと、間違いなく野営することになるんだけど。
さすがに、時間になったら帰るよね。なんか、ミーヤさんの雰囲気が普通じゃない気がする。
「ジャンさん、使ってないフライパンありますか? 大きさは何でもいいんですけど」
「あるよ。バッグの中に仕舞ってあったはず。……、あった。はいコレ」
「ありがとうございます」
追加で出されたフライパンは2つ、大きいやつと小さいやつ。3つで焼けばすぐに出せるだろう。ガーリックオイルはさっき多めに作っておいたから、このおかわり分は間に合うと思う。
土魔法でかまどを追加してフライパンを温める。ゆっくりやっている時間はないので、火おこしは魔法でゴリ押しして時短だ。
しっかり熱くなってから焼きはじめる。大きいフライパンでは2枚焼いているので、ちょうど4枚だ。ケンカにならなくてよかった…。
ミーヤさんはすでに隣でスタンバイしている。まだ焼けてないけど、もう狙っているよ。騒ぎながら食べていた3人もおかわりのために並びはじめた。
圧がすごい。特にミーヤさんからの無言の圧が……。もう少しお待ちくださいねー。
よし、焼き上がった。と思った瞬間、皿が差し出される。肉をおいて、その上にガーリックチップを乗せる。ミーヤさんは満足そうに頷き離れる、ちょっと怖い…。
次々に皿が差し出されるので、順に肉とガーリックチップを乗せる。食べるスピードは1枚目と変わらない。もう1枚おかわりがきそうだけど、時間的に大丈夫なんだろうか?
まぁ、私が気にしてもムダだな。とりあえず、今は肉を焼くことだけを考えよう。
ニンニクを切ったり炒めたり肉を焼いたり…。4人分のガーリックステーキを作るのはめちゃくちゃ大変だ。皆が満足するまで作り続けて、一人当たり10枚くらい食べたんじゃないだろうか。
気持ちがいいくらい、すげ〜食うな…。そんなに食べてくれると、大変だけど嬉しいもんだ。
皆の食べるスピードがゆっくりになったので、私も食べはじめる。アイテムボックスに仕舞っておいたからアツアツだ。
一切れ口に入れ、モニュモニュと噛みしめる。うん、美味しい…けど、ずっと焼いていたから、匂いでお腹いっぱいなんだよ!!
盲点だったわ…。どうしようかな、野菜炒めにして食べるか? キャベツと玉ねぎ、人参があるから豪華な野菜炒めになるな。
採取したばかりの野菜をザクザク切って下準備をする。サッと炒めて、最後に塩で味付けをする。残っていたガーリックステーキをザックリ混ぜて完成だ。
お肉の脂とニンニクの香りで食べ応えのある野菜炒めになってる。野菜中心だからサッパリ食べられるだろうし、栄養バランスもいい。…コッチのほうが美味しそうだ。
「いただきまーす。……、なんですか?」
「ノアの食ってるやつ、美味そうだな…。」
「えっ…」




