61 暇なので料理します
「それで、僕はこれからどうしたらいいですか? 僕にもいろいろと予定があるので、それの妨げになるならこの話はなかったことにしてほしいんですけど」
「何をするつもりだ?」
「資金集めと物資の調達、土地の調査と開拓って感じですかね」
「お前は何になりたいんだよ……」
「何にもなりませんよ。ただ、のんびりと余生を過ごしたいだけです。人のいないところで自給自足をしながら本でも読んで生活したいですね」
「お爺さんみたいな考え方っすね。まぁ、そんな生活には憧れますけど」
「いいですよね。ところでお名前を教えていただけますか? さっき、サインしてもらったのに忘れちゃって…」
「あぁ、自己紹介もまだでしたね。俺はジャンって名前で冒険者をやっています。4人組のパーティーを組んで行動しています」
「ありがとうございます。僕はノアです。こっちの子犬はハクです」
ジャンさんは赤っぽい茶色の髪に同じような色の瞳をしている。短髪で爽やかそうな青年だ。
背中に弓を背負っているから、アーチャーかな? 装備も身軽そうだし、中距離~遠距離攻撃が得意そうな感じだ。
「そんなもん後でやれ。まずは今後についてだろ」
ギルド長は見た感じ接近戦のみって感じだな。今までの言動から脳筋って言葉がちらつく…。
「わかってますよ。僕のほうはもう決まっているので、あとはそっちがどうするか決めるだけです」
そう言われたギルド長とジャンさんは話し合いを始めた。やることがなくなったので、食事の準備でもして待っていよう。
錬金術のスキルに使えそうなのがたくさんあったから、スキルポイントを使って習得していく。まずは小麦を食べられる状態にしなきゃな。
買ってきた小麦は表皮がついたままの状態だから、半分はこのまま粉にして、もう半分は表皮を取ってから粉にしよう。
スキルに【粉砕】っていうのがあったからそれを使って表皮ごと粉にする。上手くいけば全粒粉ができるはずだ。
待っている間にもう半分の小麦を処理する。【分解】のスキルを使い胚乳とそれ以外に分ける。
確か、小麦粉になるのは胚乳の部分だけだったはずだ。取り除いた他の部分にも栄養はあるが、食べ方がわからない。とりあえずはアイテムボックスにしまっておこう。
分け終わったら同じようにスキルを使って粉砕する。小麦粉ができたら食べたい料理が作れるから楽しみだ。
小麦の粉砕が終わるまでまだ時間がかかりそうなので、レッドボアのお肉を出して一口サイズに切り分ける。ちょっと多めに塩で味付けしてハーブを乗せておいた。
少し待つと最初の粉砕が終わったので、出来上がりを確認する。まだ少し粒が残っているな、ふるいにかければ大丈夫だけど持っていないからもう1度粉砕しておこう。
何度か粉砕するとやっとイメージ通りの粉が出来上がった。思ったより時間がかかっちゃったけど、手作業ならもっと大変なのを考えると上出来だろう。
そういえばとギルド長達を見るとまだ話し合いを続けている。なにやら揉めているが大丈夫だろうか?
そんなに揉めるなら1人にしてくれたらいいのに……。
まだ終わりそうにないので料理を続ける。出来上がった全粒粉に水と少しの塩を入れて生地を作る。
薄く焼いてクレープみたいにお肉を巻いて食べるつもりだ。お肉だけじゃなくてニラとクルト草も一緒に炒めて巻こう。
レッドボアの脂を使って生地を全部焼き、冷めないようにアイテムボックスの中に入れておく。
同じようにお肉と野菜も炒めていると、ギルド長達の話し合いが終わったようだ。
「終わりました? こっちももうすぐ終わりますよ」
「お前が何をしているのか気になってそれどころじゃなかったよ」
「えっ、終わってないんですか?」
「いや、ほぼ確定した。あとは他のパーティーメンバーに知らせるだけだ」
「その人達は信頼できますか? 契約魔法を使わせてもらいますけど、それも大丈夫なんですか?」
「俺のパーティーメンバーなら信頼して大丈夫だ! リーダーもスラム街育ちだし、残りの2人も人を裏切るような奴じゃないっす」
「こいつらのパーティーはAランクだから実力はある。小さい頃から冒険者として仕事をしているから知識と経験もあるし、俺も信用している」
Aランクだとどれくらい強いのか知らないけど、かなり上のランクだし信用はありそうかな。
会ってみて大丈夫そうなら監視されてあげよう。その分、こっちも利用させてもらうけどね。




