58 尾行されました
「とりあえず行きますよ」
「どこに?」
「いいから!」
森に向かって歩きだすと後ろの気配もついてくる。一定の距離を保っているから、気配を辿っているのか目視でついてきているのかわからないな。
この感じだと森で撒くのは難しいかもしれない。
「ギルド長、ここに来るの誰かに言いましたか?」
「いや、言ってないぞ」
一瞬、眉が動いた気がする。気のせいかもしれないけど、すべてが怪しく感じてしまうな。
森に入り奥へと進む。魔物の気配を避けながら進むが、最悪出会ってもギルド長になんとかしてもらえばいいや。
今まで来たことがないくらい森の奥に行くと、後ろの気配がさっきより近くなっているのに気がついた。
木で視界が悪くなるし、魔物の気配もあるから見失わないように近くに来たんだろう。
さすがにギルド長なら気がついているはずだ。
「話をする前に何か言わなきゃいけないことがありますよね?」
「買い取りについてか? 話が終わったら買い取りしてやるぞ」
「とぼけなくていいですよ。気がついてますから」
「いや~、何のことだ?」
どうやらギルド長は嘘がつけないようだ。完全に目がおよいでいる。
「言わないなら僕も話しません」
「……わかった」
ギルド長が手をあげると小さな光の球を2つ上に飛ばした。多分ライトの魔法だと思うけど、それが消えると後ろにいた気配が近づいてきた。
「バレるとは思わなかった…」
「顔に出てましたよ」
スキルで気がついたことは黙っておく。尾行していた人が追いついたので詳しく話を聞くことにした。内容によってはここでは暮らせなくなるかもしれないな。
「ナードさん、予定と違うじゃないですか。話は聞けたんですか?」
「まだだ、尾行がバレたんだよ。こっちが説明をしないと話をしないんだとさ」
「えっ!? すいません、そんなに下手でしたか?」
「俺の顔に出ていたらしい」
「あぁ~、ナードさんはわかりやすいですからね」
「話の途中で申し訳ないのですが、説明していただけますか?」
このままじゃ日が暮れる。ギルド長に簡単に説明してもらうことにした。
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「…要するに、ギルド長が1人で行動するのはダメってことですか?」
「あまり良くないな。1人だけ贔屓していると思われると、俺もお前も他の冒険者達から反感をかうことになるだろ」
「じゃあそう言えばよかったじゃないですか。草原に来たときにはすでに後ろにいましたよね」
「いや、そういう訳にもいかなくて…」
「正直に言ったらどうなんですか? このやり取りも面倒なんですけど」
「ナードさん、諦めたほうがいいですよ。この子を子供扱いしていると痛い目をみることになると思います。でもちゃんと話せばわかってくれるはずです」
そこまで言われてやっと話し出した。
私の話す内容次第では他の人に助言をもらうことになるかもしれない、でも誰にも話すなと言われている。なら最初から一緒に聞けばいいじゃん、こっそりついて行ってもバレないだろうし。
ってことらしい。
「だから、最初に言えばよかったでしょ」
「お前が1人でこいって言ったんだろうが!」
「事情を話してくれれば許可しましたよ」
まったく、余計な時間がかかってしまった。さっさと家に帰ろう。
「無駄な時間を過ごしてしまいました。家に帰ってからお話しします」
歩く方角を変え我が家に向かう。ギルド長がなにやらうるさいが放置しておこう。
「ところで、そちらの尾行していた方も話を聞くんですよね? 条件は聞いていますか?」
「聞いてるよ。誰にも話さないから安心して」
尾行していた人に安心してと言われてもな…。悪気があったわけじゃないからまだマシか。
どうせ、条件は必ず守ってもらうことになるんだから細かいことは気にしないようにしよう。
というのも、スキルのチェックをしているときに契約魔法のスキルを見つけていたからだ。
スキルはまだ使ったことはないが、道具はソニアさんに借りておいたからすぐにできる。
そうだ、家に行く前に契約魔法を使っちゃえばいいんだ!!




