56 牛乳を手にいれた
牛の大きさにビビりながら搾乳の準備をする。水筒に直接入れるのは難しいからバケツを貸してもらった。
布でキレイに拭いてから乳搾りを始める。確か、上から下に押し出すようにしていた気がするので、人差し指から順に握る感じでやってみた。
あんまり出ないな。少しチョロっと出るだけで、テレビで見たのと違う。テレビではビューっと出ていたはずだからやり方が違うのだろう。
パドスさんのやっているところを見てみると、ビューって出ている。あ、親指で1番上を押さえているみたい。同じようにやってみると、さっきより勢い良く出るようになった。
最初の4~5回はバケツに入れないで捨ててしまう。汚れとか細菌が入っている可能性が高いらしい。
パドスさんは両手で搾っていたけど私にはまだ難しい。時間はかかるが、片手で頑張るしかないか。
何度も搾っているとだいぶいい感じで出るようになってきた。牛乳がバケツの半分くらいまで集まったので、水筒に移すことにした。
こぼさないように注意しながら水筒に入れたがあまり入らなかったので、残りはアイテムボックスに流し入れた。
その後も搾ってはアイテムボックスに入れるを繰り返したので、充分な量は確保することができたと思う。
パドスさんはまだ搾乳しているから、終わるまでは搾っていようかな。
ーーーー
パドスさんの作業が終わったみたいなので、最後に貸してもらった皮の水袋に牛乳を入れて終了した。
かなりの量が手に入ったので、飲むだけじゃなく他のことにも使おうかな。
「持って帰る分は搾れたか?」
「はい、ありがとうございます」
「よし、それじゃあ依頼は完了だ。ギルドに行って報告すれば報酬がもらえるからな」
「わかりました」
結構時間がかかったけど、買い物もしたいし時間的にはちょうどいいかな。
ハクを連れてすぐに帰ろうとしたら、セスさんに呼び止められた。
「ちょっと待って、これお土産。今日はありがとうね」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
「主人がすごく楽しそうだったの。あなたのおかげね」
「そうですか? 普通に見えましたけど…」
「食事に誘うくらいだから相当楽しかったんだと思うわ」
楽しそうっていうより気になるって感じだと思うけど、嫌われたり不審に思われているわけじゃないからいいか。
セスさんとは玄関で別れ、敷地の外に向かおうとすると、今度はパドスさんに呼び止められた。
「坊主、これからどうするんだ?」
「ギルドに報告に行きますけど…」
「そうじゃなくて、今後のことだ」
「まぁ、なるようにって感じですかね」
「適当だな」
のんびりスローライフは送りたいが、しばらくはやることがいっぱいだし、すぐにどうこう出来ることでもないしな。
「いろいろ予定は決めていますよ。しばらくは資金集めをするつもりです」
「じゃあ、うちで働くか? 食事と寝る場所は用意してやるし、給料も出すぞ」
「有難いお話なんですが、遠慮させていただきます。1人で行動したほうが早いので」
「1人がいいのはスキル関係か?」
「そうですね。成人するまではこのままがいいんですけど、そうもいかないかも」
「何か問題でも?」
「ギルド長がちょっと……」
これから話をしなきゃいけないんだよね。出来ることなら逃げ出したい。
「ナードか、悪い奴じゃないだろ」
「めんどくさいです」
「はははっ、アイツは融通がきかないとこがあるからな。しかも、好奇心旺盛だし」
「このあと会うことになっているんです。話をしないと買い取りをしてもらえないので…」
「アイツなら大丈夫だから安心して話せ。勿論、俺もお前のスキルのことは誰にも話さないぞ」
「パドスさんは大丈夫だと思ったから隠さなかったんです。心配してないですよ」
そう言うと、パドスさんは少し照れたような顔をした。おっさんのクセにちょっとかわいいな。
「買い物もしたいのでそろそろ行きます。また依頼を出すならよろしくお願いします」
やっと帰れるよ。早く買い物行こう。




