53 初仕事
「まずは自己紹介だ。俺はパドスでこっちは嫁のセスだ」
「よろしくね」
「ノアです。こちらこそよろしくお願いします。この子はハクです」
抱っこしていたハクの紹介もしておく。
「随分礼儀正しいな。まぁいい、仕事内容を説明していくぞ」
やることは大体予想していた通りだ。掃除、餌やり、収穫などその日によってやることは変わるのだが、必ずやるのが掃除だった。
この農場では牛と鶏を育てていて、乳製品と卵を売っている。歳をとったら潰して食肉として加工するらしい。敷地の端で野菜の栽培もしているようだ。
牛舎と鶏舎の掃除がメインの仕事になるのだが、肉体労働なうえ臭いので、あまり人が来てくれないそうだ。
普段は夫婦で作業をするが、奥さんが妊娠したので人手が足りない。でも雇う余裕はないから安く仕事してくれる見習いに依頼を出したと言っていた。
やる作業も多いだろうし、パドスさん1人で全部は大変だろう。出来るところを見せて気に入ってもらえるように頑張ろう。
「ハクは外で待っててね。お仕事してくるから、いい子にしてるんだよ」
「キャン!」
わかってくれたのか、牛舎の外で日向ぼっこを始めた。近くに魔物の気配はないし、パドスさんの敷地内だから1人で待たせても大丈夫だろう。
牛舎の中に入ると中に牛はいなかった。聞いてみると、牛の健康のために食事の後は外で好きにさせるんだそうだ。ストレスがないほうがたくさん牛乳をとれるらしい。
外で運動している間に作業を行う。牛舎の中は柵で仕切りがされていて、一頭ずつ入るようになっていた。
「朝の搾乳と餌やりは終わったから、掃除をしてもらう。1度やり方を見せるから、その通りに作業してくれ」
パドスさんに教えてもらいながら作業を覚える。作業自体は難しいことはないので問題なかった。
「じゃあ、後はまかせた。わからないことがあったら外にいるから聞きにこい」
「了解です」
パドスさんが離れたのを確認してからスキルで掃除を始める。
糞尿や藁を集めて荷車に乗せる。床を水で洗い流したら乾くまで待って、その間に次の場所の床を掃除する。集めたゴミは外の溜めておくところに持っていって捨てる。床が乾いたら藁を敷いて終了だ。
サイキックの魔法で集めたり浮かせたりするから肉体的には全然疲れないけど、魔力を使うから集中しないといけない。魔法の訓練だと思えばいいか。
水は井戸から汲んでこなければいけないんだけど、面倒だからウォーターの魔法を使った。
牛舎の中には溝が掘られていて、汚れた水は外に流れていくようになっていた。水は1度集めて浄化してから捨てるそうだ。
なにげにちゃんとしているな。スラム街だと垂れ流しなのにね。
あ、飲み水用の桶を洗うの忘れてた。キレイに洗ったら新しい水を入れておく。
言われた手順で作業をしてみたけど、少し効率が悪いな。キレイになればいいんだろうし、自分のやり方で楽に作業しよう。
サイキックで集めるところまでは同じだが、そのあとを変えてみた。何度も外に捨てにいくのは面倒だからアイテムボックスの中に入れる。
汚いけど中で混ざることはないから大丈夫だ。すでに魔物の内臓とか入っているしね。
水で流すと乾くまで時間がかかるからクリーンでキレイにする。濡れないし匂いも消えるからこっちのほうがいい。
桶もクリーンでキレイになっているから新しい水を入れ、藁を敷いて終了。1ヶ所5分で終わった。
こっちのほうが早くて楽チンだ。この牛舎は10ヶ所に仕切られているから、糞尿を捨てにいく時間を入れても1時間ってところか。
慣れればもっと早く終わるようになるかもしれないな。サイキックの練習をしながら、短時間で終わらせるようにしていこう。
約30分後、パドスさんが様子を見にやって来た。ちょうど半分が終わったところだ。
「はぁっ!?」
声デカっ。あ、外にいたハクが驚いて起きちゃった。
「パドスさん、うるさいですよ。ハクがびっくりしてるじゃないですか」
「いや、おかしいだろ。どうなってんだ?」
あれ、喜んでもらえると思ったんだけどな。やり方を変えたのが気に入らなかったのか……。失敗したな。




