30 予定通り
神父が残された子供を集めて説明を始める。
「君たちは仮洗礼を受けました。仮洗礼とは通常、6歳でおこなう洗礼の前倒しみたいなものです。正式な洗礼ではないので市民権はまだもらえませんが、お仕事をしたり、他の国に行ったりすることはできます。6歳になれば洗礼式を受けなくても市民権が得られます」
「仮洗礼を受けたのでこれからは親元を離れ、自分で生活していけるように頑張ってください。先程渡したプレートは君たちの存在を最低限保証するものです。名前と年齢、この国の出身だということが記入されています。市民権を得る時にも使う大事なものなのでなくさないようにしてください」
なるほど、あとは勝手しろってことか。まだ3歳なのになんて厳しい世界なんだ。普通なら速攻死ぬぞ。私にとっては都合がいいが、他の子供たちは大丈夫だろうか? まぁ、どうこう出来る問題じゃないが……。
とりあえず、最初の予定通り冒険者ギルドで登録をしよう。その後のことはその時に考えればいいや。
「では説明を終わります。皆に神の祝福がありますように」
えっ、終わりですか!? いくら捨てられた子供とはいえ、もう少し詳しく教えてあげてもいいんじゃないの? ……本当、嫌な国。
とりあえず、ここにはもう用はない。このままギルドに行って登録をするか、1度家に帰るか、どうしようかな……。新しいスキルの確認もしたいし、今日は帰ろう。
教会から出て城門へむかう。マップがあるおかげで道に迷うこともないし、ギルドの位置も表示されているから次に来るときも困らないだろう。街の風景を楽しみながら家に帰った。
……途中で気がついたけど、家に母親がいるみたいなんだよね。マップで見てみると青色の丸がずっと家の中にある。これからの事を言われるんだろうな。めんどくさい事にならなきゃいいけど。
あえて足音を大きく立てながら家に近づくと母親が中から出てきた。よかった、踏み台がないからノックして開けてもらわないと入れなかったんだよね。
出てきたはいいが、凄い形相なんだけど……。大声で喚いているけど、早口過ぎて聞き取れない。怒っているのは分かったが…。
母親は私の腕をつかむと家の中に引きずり込んだ。その勢いのまま床に投げ出される。危なっ。顔面から床に激突するのはなんとか避けたが、代わりに肩をおもいっきり打ち付けてしまった。
「あんたのせいで!! この役立たず!!」
スキルがなかったことを怒っているのか、それともステータスが悪すぎたことか? まぁ、どっちもだと思うが、ステータスに状態異常がついていたことが決め手だと思うんだけど。
LV 1
HP 3/10
MP 15/15
SP 1
状態異常大
習得スキル なし
多分、渡されたメモにはレベル1の時のステータスが書かれていたはずだから凄く低いんだよね。死にそうになっていたし。鼻で笑われても仕方ない数値ではある。
「ほっといても勝手に育ったから絶対ギフトがあると思ってたのに、なんでないのよ! 奥様にも大丈夫ですって大見得を切っていたのに…。もう最悪っ!!」
「奥様って誰?」
「はぁ? あんたの母親に決まってんでしょ! もう母親でもないけど」
……なんと、この人は母親じゃなかったのか。ってことは、教会で隣にいた人が母親ってことだよな。あの人も気が強そうな感じだったな。ああいうタイプって苦手なんだよね。
「仮洗礼受けてプレートもらったでしょ。それで親子関係は終了。今後は自分でなんとかしなさい」
「もう家の人とは関係がなくなるってことですか?」
「そうよ。だから何があっても頼ってこないで。もう関係ないんだからこの家からも出てってもらうわよ」
「今後、家に戻ることはありますか?」
「そんなもん、あるわけないじゃない。仮洗礼とはそういうものよ」
そうか、概ね希望通りだな。家を出されるのも想定内だし、特に問題はない。本当は6歳で家を出るつもりだったがちょっと早くなっただけだ。家に戻る可能性もないみたいだから、これからは自由に行動出来るようになるな。
でも、一応しょんぼりしておこうか。捨てられるのに嬉しがっていたら不自然だもんね。
「奥様が明日には出ていくようにって言ってたわ。それじゃ、さよなら」
最後に会うこともしないのか。まぁ、どうでもいいけど。これで本当に1人だ。さて、明日は家探しから始めるか。




