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異世界転生した先はスラム街でした~無一文から始めるスローライフ~  作者: 熾之


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29 名付け



 神父の話が終わり、やっと名付けが始まる。事前に決められているのか、数組ずつ祭壇にむかっていく。


 祭壇では大きな本を持った神父と隣にもう1人の神父がいて、本を見ながら並んでいる子供に名前をつけるようだ。


 名前事典みたいなものを使っていたのか。そりゃ、毎回その場で考えていたら時間がかかり過ぎるし、途中でネタ切れになりそうだ。


 こっそりスキルを使って様子をうかがう。


 「神の名のもとに汝に【アビー】の名を授ける」


 どうやら名前が決まったようだ。親子は礼をしたあと教会から出ていった。ずいぶんあっさり終わったなぁと思いながら観察を続ける。


 3組目の親子のときにはお金らしきものを渡していた。つけたい名前があるようで、神父に木札を渡している。神父はそれを確認すると名付けを始める。


 「神の名のもとに汝に【クリフ】の名を授ける」


 希望通りの名前に母親は微笑み、子供の頭を撫でている。その後も何組かの親子がお金を払い希望の名前をつけて出ていった。しかし、そうじゃない親子もいた。


 「鑑定をお願いします」


 ランダムで名前をつけた後、その母親はお金を出して鑑定を頼んでいた。6歳までは捨てられないって言ってたけど、今頼むってことはもういらないんだろう。子供はガリガリに痩せていて、汚れが目立っている。


 「いいのですか? あと3年ありますよ」


 「構いません。お願いします」


 名付けをしていた神父がお金を受けとると、隣にいた神父が鑑定を始めた。子供を見ながら木札に何かをメモしている。おそらくステータスやスキルがメモしてあるだろう木札を母親に渡す。


 それを見てため息をついた母親は神父に追加でお金を渡し【仮洗礼】を頼んでいる。仮洗礼? 初めて聞く単語だな、お兄さんは言ってなかったぞ。


 神父は祭壇の上に小さな箱をのせると中から銀色のプレートを取り出した。針で子供の手を刺し血を出させるとそれをプレートにたらす。うっすら光ったプレートに首紐をつけて子供に渡していた。


 それを見た母親はそのまま教会から出ていき、残った子供は端の方で待っているように指示されている。


(うわぁ、何も言わないで出ていったよ。あんなに嫌そうな顔しなくてもいいのに。あぁ、子供が泣きそうになってるよ……)


 見たくないとは思いつつも、どうしても視界に入ってくる。げんなりしながら自分の順番を待った。


 多分、並ぶ順番は前半は名付け、後半は名付けと鑑定って分けられていたんだと思う。最初に鑑定した親子からはずっと鑑定が続いているし、残される子供の数も増えた。


 観察をしながら順番を待っていると、隣にいるはずの母親がいない。えっ、名付けすらしないの?と思って探していたら知らない女性が隣に立った。


 誰だこの人?なんて考えていたら順番が来てしまったので祭壇へと進む。当たり前のようにその女性もついてくる。お金を渡したりはしないので名前はランダムだ。名前事典を適当にめくって決めている。


 「神の名のもとに汝に【ノア】の名を授ける」


 

 あぁ、決まっちゃったよ。普通だけど、なんだかなぁ…。


 「鑑定をお願いします」


 だよね~。一応【隠蔽】と【ステータス偽装】はしているけど、人に見られるって何か不安だな。あ、私も他の人のステータス見れるんじゃん。やったことないから忘れてたよ。


 神父がメモをした木札を隣の女性に渡す。フッと鼻で笑われ仮洗礼を頼み出した。うわぁ、感じ悪っっ。他の子供と同じようにプレートをもらい、教会の端で待機する。


 隣にいた女性を見ていると、後ろで待っていた母親と話をしている。えぇ、どういうこと? まぁ、いらないと言われているんだからほっとけばいいか。



 しばらくすると全員の名付けが終わったようで、教会の中には私を含めて8人の子供が残されていた。


 「これからのことを説明しましょう。皆さん、集まってください」



 一応説明はしてくれるのか。大事なことだ。しっかり聞いておこう。


 


 

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