27 交渉2
スキルの【隠蔽】を使っているからなのか、単純に心の声を聞いていないだけなのかは分からないが、まだ私の思惑はバレていないようだ。
今のうちに、こっちに有利な提案をしておこう。ある程度の内容ならお詫びってことで聞いてもらえるだろう。
「やっぱり、日本に帰ることは出来ないんですよね?」
「ああ、そればっかりはどうにもならない。すまないな」
「いえ、もう諦めはついているので大丈夫です。ちなみに、日本の物を取り寄せることは出来ますか?」
「それも出来ない」
「ですよね~。ちなみに何なら可能ですか?」
「協力してやれることかどうかは別として、この世界の中のことなら大概は可能だ」
なるほど、日本の物は手に入らないか。化学調味料や合成着色料が恋しい……。
「ならお聞きしたいことがあるんですが、いいですか?」
「ああ、なんだ?」
「これは何だか知っていますか?」
そう言ってアイテムボックスからある物を取り出す。
「…草だな」
「はい、草です。鑑定しても草って出ました」
私が取り出したのは草だ。鑑定しても名前が出てこなかった草なんだが、この草には見覚えがある。
「この草には名前がないんですけど、知りませんか?」
「名前なんてないぞ。日本だと【どくだみ】とかって呼ばれているらしいがな。この世界じゃまだ名前がついてない」
やっぱり! この独特な匂いと見覚えのある白い花、日本でもお世話になったどくだみにそっくりなんだよ。でも、鑑定しても【草】ってしか出ないから困っていたんだ。
「日本の植物がこの世界にも生えてるんですか?」
「そうだ。この世界をつくる時に他の世界を参考にしているからな。地球だけじゃなく他の世界の植物もあるぞ」
「でも名前はついてないんですよね?」
「ああ。鑑定で分かるのは人間が名前をつけて認識されているものだけだ。そのうち先程の草にも名前がつけられ鑑定出来るようになるだろう」
そういうことか。文明が進んでないなら植物の研究なんてやってないだろうし、ましてや、ただの草に名前なんてつけない。
でも、日本にいた時の知識からすると、食べられる植物ってかなり多いはずなんだよな。それが鑑定で分からないのはもったいない。
「鑑定で分かるようにしてもらえませんか? 例えば、日本だと○○と呼ばれている、みたいな感じで。鑑定を使える人全員じゃなくて私だけでいいので……」
「スキルを成長させるのか。しかし、この世界じゃ誰も知らないことを1人にだけ教えるのはな……」
「そこを何とかお願いします! 悪用はしませんから」
「まぁ、今回だけはいいだろう。そんなに手間のかかることじゃないしな」
「ありがとうございます! これで食べられる物が増えます!」
「…いや、うん。喜んでもらえたならよい。……そんなにひもじかったのか?」
「そうですね。日本にいた時と比べるとまさに地獄って感じでした。ずっとお腹が空いていたし、不衛生だったし。…今の母親は何もしてくれませんでしたから」
本当、地獄だったよ。何度も絶望したし、死にたいとも思ったよ。まぁ、そんな勇気はなかったんだけど。
「これで少しは解消されます。ありがとうございました」
「……本当に申し訳ない。このようなことは2度と起こさないように徹底する」
……当たり前じゃ!! 何度もあってたまるか!! っと、危ない、顔に出るところだった。
都合のいいスキルにしてもらったし、神様は許してやろう。ただ、あの時の女の人はまだ許せない。反省するまで放置だけど、しないようなら鉄拳制裁もあり得るな。
「そういえば、スキルの件でもう1つお願いがあります」
私はこんなスキルが欲しいっていうのを細かく説明していくことにした。




