スライム
クルト草を採取しながらレナウス草を探す。レナウス草は1株見つけるとその周りにいくつかまとまって生えているし、葉にも特徴があり目視でも見つけやすい。似た植物と間違える可能性もあるから鑑定は欠かせないけど。
どうやら獣道から外れたこの場所はあまり人が来ないようで、クルト草はもちろんレナウス草もたくさん生えていた。
いい場所見つけたな。マップで場所を覚えておけばまた来れる。次からは真っ直ぐここに来るようにしよう。
黙々と採取を続ける。こういう地味な作業は何も考えなくていいから好きだ。流れ作業のように鑑定と採取を繰り返す、たまに洗ってクリーンをかけて収納する。……楽しい。
しばらく続けていると、不思議な気配を感じた。
(んっ?なんだろう?)
気配察知のスキルは常に使っていたけど今までは何も感じなかったのに、少し離れたところからうっすら何かの気配がする。
気になる、すごく気になる。確認だけしておこう。ちょっと見るだけ、危なそうなら逃げればいいんだし。
出ました私の悪い癖。興味のあることを見つけるとそっちに集中してしまう癖が……。
気配察知を続けながら気配のする方へ進む。足音をたてないように、ゆっくり慎重に歩いた。
すると、草原の中でも多くの草が茂っているところがあり、その前に水色の何かがあった。
(スライムだ!)
気付かれないように慎重に進む。スライムはプルプルしているだけで動こうとしなかった。倒せば経験値がもらえるはず、レベル上げもしたいけどどうしよう。
とりあえずスライムを鑑定してみる。あっ、私より弱い。魔法を使えば倒せるかもしれない。これはやるしかないな。
初めてで接近戦は怖いから、離れたところから魔法で狙うことにしたけど、上手くいくかな?攻撃魔法の練習はしていたけど、何かに当てたことはないんだよね。
しっかりとスライムを狙う。ドキドキするのを抑えようと深呼吸を繰り返し落ち着かせる。
「エアーカッター!」
飛んでいった風の刃はスライムをあっさりと切断した。
「ほっほぅ!」
テンションの上がった私は変な叫びをあげ喜びの舞を踊る。傍からみたら不審者と間違えられるな。……誰もいないからいいんだ。
倒したスライムに近づいてみる。全然動かないから間違いなく死んでると思う。指で突っついてみると水風船がモチモチになったような感じだった。モチモチの中に玉みたいなのが入っているのに気が付いた。むにゅっと手を突っ込んで玉を取り出す。
念のため手は洗ってクリーンしておいた。玉を鑑定すると
【スライムの核】
スライムの心臓のようなもの。核が壊れないかぎり死ぬことはないが、身体から核を抜かれると死ぬ。ダメージを受けると動けなくなるが時間がたつと自己回復し復活する。
危なっ、死んでなかったのか。でも動けなくなるなら危険はないかな。
しばらく観察していたが特に変化は起きなかったので、とりあえずアイテムボックスの中にしまった。なんか勿体なかったから。
さすがに1匹じゃレベルは上がらなかったが、何匹か倒せば上がるだろう。……よし、スライム探そう!
採集そっちのけでスライムを探しているとすぐに見つかった。さっきと同じように、離れたところからエアーカッターで攻撃する。動けなくなったところでスライムの核を取り出すと、テロ~ンと変な音が聞こえた。
(もしかして!)
すぐにステータス画面を確認する。レベルが2に上がっていた。喜びの舞を踊る前に数値をチェックする。
良かった、HPが22に増えてる。この2年で自然に上がったHPは1。MPは順調に増えていたけどHPが全く増えなくて心配していたんだ。
もっと倒したいけどそろそろ帰らなきゃいけない。また明日来てレベル上げしよう。
()は主に心の中、「」は口に出してだと思っていただけたら……。