採取しよう
「神様め、次に会ったらぶん殴ってやる」
そう決意し、気持ちを切り替える。
さて、これからどうするかを考えよう。
情報収集はしたいが、人に見つかって面倒な事になったら嫌だし、危険かもしれない。
素早く逃げることが出来ないと何かあった時に困るだろう。でも、食糧は確保したい。
ゴミ山に行けば使える物を拾える可能性があるし、いい人に出会えれば色々と教えてもらえるかもしれない。
拾った物を加工し売ったりしてお金が稼げれば食糧が買えるだろう。
だからこそ、私はゴミ山には行かない。いや、今はまだ行かないが正しい。
食糧が買えるほどのお金を手に入れるためにどれだけ時間がかかるのか分からない。ゴミ山から拾った物だと知られたら安く買い取られるだろう。
そもそも、売れるだけの物が残ってるかどうかも怪しい。
あれだけの小屋があったんだ、そこに住む人もそれなりにいるはず。全員がゴミを拾っているわけではないと思うけど、私が拾えるような物は少なそうだ。だったら、森に行くほうが食糧を手に入れやすいと思う。決して習得した攻撃魔法をぶっ放ちたいとは思っていない。…ウソ、少しだけ試したい。
勿論、モンスターがいる世界なんだから危険は大きいがゴミ山を漁るより精神的にマシだ。
いきなり森の中に入るのはさすがに危ないから、今日は草原まで行ってみよう。ヨモギみたいな草くらいあるといいな。
足元に気をつけながら歩く。ちゃんとした道があるわけではないが、森に行く人もいるみたいで細い獣道が出来ていた。
家からは離れたけど、森まではまだ遠い。
体力はついてきたが、子供の小さな身体では草原に行くだけでも時間がかかる。
しばらくはこの草原で出来ることをしよう。
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やっと草原に着いた。…キツかった。異世界なめてたわ。
毎日部屋の中を歩いてたけど、平らな床の上を歩くのとボコボコした獣道を歩くのでは疲れ方が全然違う。
正直、もう帰りたいが帰るのもしんどい。
折角来たのに何もせずに帰るのはもったいないから、少しだけ草原を調べてみよう。実は、異世界で使いたいスキルがあったんだ。
「鑑定!」
いいねぇ、やっぱりこれだよね。
結構前に習得したんだけど、私がいた部屋の中には鑑定出来る物が殆どなくてたまに出る虫にしか使ったことなかったんだよね。
ただ、憧れもあったから何もない部屋でも鑑定して楽しんでいたんだけど。
広範囲を鑑定すると所々に文字が浮かんできた。
その中の1つ、クルト草を採取して詳しく鑑定する。
【クルト草】
どこの草原や森にも生えている草。食用可。
よしっっ! 見つけた。さすが鑑定先生。
食べ物を手に入れたことでテンションが上がった私は、見つけたクルト草を採取しまくった。
見た目はホウレン草を貧弱にした感じで、色も薄い。まぁ、食べれれば問題ない。
念のため採取しては鑑定、採取しては鑑定と続けていたら鑑定結果が少し変わってきた。
【クルト草】
どこの草原や森にも生えている草。食用可。
生だとえぐみが強く食べづらい。火を通すと消える。栄養価は低い。
おぉ~。成長した。スキルレベルが上がったのか、より詳しい鑑定結果が出るようになった。
やっぱり、努力の成果が目に見えるってすごくいいな。前世でも今も誉められたことないから、頑張った証があるとうれしい。
葉もの野菜は火を通すと少なくなっちゃうから、かなりの量を採取しないと腹の足しにもならないだろう。
まだ時間はあるし、毎日ここに来るのはたいへんだから2~3日分まとめて取っておこう。