始まりは間違いから
何もない、真っ白な空間に立っていた。
どこを見ても真っ白で目がチカチカする。
(あぁ、私は死んだんだ)
ここに来る直前のことを思い出していた。
(私の人生クソみたいだったな)
毒親のもとに産まれてしまった為にしなくてもいい苦労ばかりしてきた。
物心ついた時から感じていた違和感は小学生の時に確信に変わった。ご飯がもらえないことも玩具や服を買ってもらえないことも普通だと思っていたけど、他の子はそうじゃなかった。
いつもお腹を空かせて汚い服を着ているせいでイジメられたが親が助けてくれることはなかったし、それを言うと怒られた。
一切お金を出してもらえなかったので、高校は授業料を免除してくれるところを探して通い、バイトばかりしていた。
成績を下げるわけにはいかないので、睡眠時間を削り勉強した。
高校の思い出は勉強とバイトしかなく、高校生らしい青春なんてなかった。
大学は奨学金を借りて通い、やっぱりバイトばかりしていた。おしゃれな同級生には相手にされず友達すら作れない、そんな時間も余裕もない。
4年間、同じ生活を続けることに必死だった。
卒業後は大きくはないが、業績のいい会社に就職することが出来た。少しでも給料を上げようと資格の勉強をし、奨学金を返す為に一生懸命働いた。
家計を切り詰めながら奨学金の返済をして少しずつ貯金も出来るようになり、ようやく人生楽しめると思った矢先の出来事だった。
そんなくだらない人生を振り返っていると突然目の前が光だした。
あまりの眩しさに目を閉じるがすぐに光はおさまり、代わりに何かの気配がする。
そっと目を開くと、そこには土下座をしたおじ様がいた。
白いトーガのような服を着たマッチョさんだ。
「この度は誠に申し訳なかった」
どうやら土下座をしたおじ様は私に謝っているようだ。
心当たりはないが、このままほっとく訳にもいかずどうしようか考えているとおじ様が語りだした。
「部下のミスは上司のミスでもある。本来、このようなことは起きてはいけないのだが、起きてしまった以上その責任は取らなければいけない」
どうやら部下が何かミスったらしいが、それが私と関係しているようだ。
何をミスったか知らないが、私はもう死んでしまったようなので関係ないと思うのだが。
「魂を取り違えるなんて新人でもやらないミスをした挙げ句、運ぶ時に落とすとは……。
あまりにも酷すぎるので、こうして上司である私が謝りにきたわけだ」
言っている意味がわかりません……。
おじ様にお願いして細かく順を追って説明してもらうと、そりゃあ土下座したくもなるわってことがわかった。