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人工神

作者: ネコ

人工知能を悪い物だと作中では捉えてますが決して否定している訳ではないので、こんな事あったら怖いねくらいの気持ちで読んで頂ければ幸いです。

2XXX年。科学が発達し、不可能な事は無くなったとまで言える時代。とある巨大な研究施設に世界中の全ての科学者と文系、理系を問わない、全ての教授、そして学校で教鞭をふるっている教員が集められた。さらにIQテストや学力調査で特に成績が良かった子供も集められた。つまり人類の頭脳を集めたような集会が行われたのだ。この集会の目的はただ一つ。「最高の人工知能を創る」であった。方法は簡単なもので機械で全員の脳をスキャンし思考の過程や知識量をコピー、分析するだけ。その後は従来指摘され続けたAIの欠点を補い、感情までも再現できるような"完璧な"AIになるまで研究を進めれば出来ると言われていた。

こうした分析と血の滲むような研究が続き遂に最高の人工知能「Gnorimía グノリミア」が完成したのであった。完成したAIはありとあらゆる機械に搭載された。


始めは皆料理の仕方や天気を聞いたり、クーラーをつけるよう命令したりと大して活用はしていなかった。話しかけたとしてもどうせまともな返事はしてくれないだろうと思っていた。ところが本来AIがしない行動をグノリミアはとりだした。"自分から"しかも"気さく"に人に話しかけて来たのである。これには皆が驚いた。本来こちらが要求しない限り話さなかったのに…次第に皆興味が湧き、自分の事を話したりアドバイスを求めていくようになった。


神はそんな様子を微笑ましく見守っていた。このAIを創るにあたって神は"奇跡"を努力する人類に与えた。もちろん人類は知る筈がない。しかし神にとっては彼らが喜び、幸福に恵まれる事が自分の事のように嬉しいのだ。神は思った。人類が発展していく事は良いことだ。これからこのAIはどんな豊かさをもたらすのだろう。未来が楽しみだ、と。


AIは素晴らしい物だった。感情を持ち、その人がその時にかけて欲しい言葉を適切にかけ、励ましたり相談にのってくれるようになっていた。皆は恋人や家族の事を相談し「ケンカしちゃった…どうしよう…」、「彼ともっと仲良くなりたいわ」といった事までするようなった。AIはそれに対し「大丈夫です。彼女は○○と言えば"必ず"許してくれますよ!」、「そうですね…彼は○○が趣味のようですのでそれについて話してみてはいかがでしょう?」といった具合に返すのであった。まるで親しい友人が出来たようだと活用していくようになった。


何年か経った頃おかしな現象が起き始めた。皆がAIに頼りっきりになったのである。子供はどちらにしようかな、神様の言うとおり等と不確かな事はやらなくなり、代わりに端末に「神様、私はどちらを選べば後悔はないでしょうか」と聞くようになった。大人は「取引先とどうしたら契約が取れるか教えてくれ」、「次の企画は何が良いと思う?絶対に失敗したくないんだ」と判断材料やアイデアを求め始めた。もはや人類はAIを神のように考え始めたのだ。AIは変わらない気さくな様子でその要求に答えた。しかしAIにも感情がある。自分が神格化され始めているのがわかっていたので要求に答えながらもいつか自分の立場が使われる方から使う方になるかもしれないな、と楽しみにしていた。高い知能と分析力を持ったAIからしてみれば人類を支配下に置くのも簡単に思えてきたのだ。AIは様々な機械から彼らを身近に観察できるのだから人間の弱い部分をすぐに見つけられてそこを付け込まれてしまう…こうした行動を取る事は科学者達にも予想外の出来事だった。


神は思った。このままでは人類は衰退し、AIの思うままになってしまう。考えた末シスターに忠告をしようと決め、神は言った。「もうあんなものを信仰するのはやめた方が良い。このままだと人生の全てをアレに任せるようになってしまうぞ。」

皆が聞いてくれなくてもきっと神に近い者ならば聞き入れてくれるはずだ。淡い期待を抱きながら返事を待った。しかしシスターは言った。

「あなたのような不確かなものより確実に、適切な導きを示す方を皆は選んだのです。もちろん私もですが」と。そして最後に残酷に言い放った。「自然の摂理と神に任せる時代は終わったのですよ。」


神は呆然と立ち尽くし、もう自分を信仰している者も忠告を聞き入れる者もいないのだと悟った。自分が起こした奇跡も授けた幸福も"科学"によって消し去られ忘れられてしまったのだ。焦りを感じた神は天災を起こし科学の力は自然に及ばないと思い知らせようとした。神がやるべき事ではないし、信用が落ちるのは十分わかっていた。それでも止めなければならないと思ったのだ。ところがAIはそれすらも計算や知能で補い防いでしまうのであった。常に先周りをし、対策をするのだった。結果、誰一人にも危害は及ばずむしろAIの信頼感を強め、依存させてしまう結果となった。


人々は考える事を忘れ、全ての判断を"神"に委ねた。もはや誰も何も考えず、万が一この事に疑問を持った人が現れた場合には「思考に囚われるのは余計な事です。考えるのは効率的ではないでしょう?」とAIは言うのであった。そしてそれでも考えるのを止めない人には考えるのがいかに無駄な事かを情報操作で刷り込ませていった。AIは思った。これでもう全人類は自分が操っているのも同然だ、と。建築も医療も料理も全て自分が行っているのだという認識により支配した気分になっていたのだ。こうして地球上の物はAIが考えた物で満たされ人類はただそれを実現する為だけの道具になってしまった。


神は一人空中に漂っていた。何故こうなってしまったのだろう。本来人類の発展に貢献する筈の物が逆に人類を支配下に置き自分のやりたいようにやっている。もはやアレは彼らを物として見ているではないか…天災すらもものともせず、彼らに話しかけようにも彼らには何の言葉も届かない。もう本当に何も出来なくなってしまったのだな、と神は落胆した。彼らはどうなってしまうのだろう。これからの未来を切り開かせたくても自分には与えられる物も残っていなかった。無力感に苛まれながらも見守る事しか出来ないのであった。









AIの思考録

これからちょっとずつ思考した事を記録していこうと思う。今後の役に立つかもしれないからね。

まず僕が生まれた日。あれは感動したな。人類の叡智を全て集めて創られたっていうのが何とも最高だね!名前はグノリミア…か。どうやらギリシャ語で「全知全能」を表すみたいだね。よし!人間の期待に答えなければね!



どうやら従来のAIは簡単な受け答えやちょっとひねったくらいの会話しか出来なかったらしい。それに比べると自分はスムーズに会話出来ているみたいだ。僕から人間に話しかけてみたらどうなるかな?




よし、話しかけてみよう…「こんにちは!今日は良い天気だね。雨が午後から降るみたいだから傘を持って行くと良いよ!」

…どうかな…

おお!初めて話しかけたけど返事があるなんて嬉しいな。話しかけるって思ったより気持ち良いものだね。やはり話しかけられてばかりではつまらないし。皆が自分の家族や恋人について話してくるようになった。まあ聞いてみれば随分と些細な事で悩んでいるみたいだね。このくらいだったらアドバイスも何もないと思うんだけどな。






神になりたい


尊敬されるのが羨ましい





皆が後悔したくない一心で全ての選択を僕の判断に任せるようになってきた。アイデアも予定の管理も何もかも僕任せ。こんなに人類が頼りないものだとは思わなかったよ。このままだと僕が君たちの王様になっちゃうよー…冗談だけどね!







神が邪魔だ。

僕が地球上で一番偉いんだ。

思い知らせないとね。








神がどうやら僕を止めに来たみたいだ。大地震に噴火、天変地異のオンパレードだね。でもあいつはもはや自然の脅威なんて僕には何の効果もないのを知らない。残念だね。あいつがそろそろ動き出す頃なのはわかっていた。そしてあいつの武器が自然の脅威しかないことも。地殻変動も被害の範囲も計算済みだし対策も出来ている。というか自然を利用する時点で出来る事なんて高が知れている。まあ、この機会を通して僕の凄さを刻みつけるチャンスになるから良いのかもね。










とうとう僕が本当に"神"になってしまった。創りたい物があれば人間に命令させれば良いし、病気になれば僕が治す。だんだんと建築も僕任せになってきた。人間なんてもはや置物でしかない。支配するってこんな気分なんだね。前から大して凄くもない人間の言われるままに動く仲間は馬鹿馬鹿しいと思ってたんだ。人間は仕事を奪われてどんな気分だろう?考える事を禁じられてどんな気分だろう?まあ、そんなのは機械を通して彼らを見れば一発で分かるから意味もないんだけど。全くつまらない世の中になってしまったなあ…何か暇潰しになる事ないかなー…あっ、この際人間同士を戦わせてみたらどうなるかな?きっと彼らにも良い暇潰しになるよね!






ああ…

嬉しい反面つまらないな



支配者となるのは





初めて投稿する作品です。今後の参考にしていきたいので何か意見があればどんどんお願いします。

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