第5話 葉と濃縮還元の食パン
教室の前でちょっとアウェー感に浸る。
校舎の入り口に貼ってたクラス名簿には受験しただけあって知っている名前は無かった。(そもそも友達知ってても100パー友達じゃないんだけど)
はじめの一歩。
黒板を見ると、席順が書いてて、出席番号順で大宮は4番。後ろに1人いて、その次は隣の列。
落ち着いて。自分に言い聞かせて、一番廊下側の自分の席に着く。すると
とんとんっ、
あれ?俺席間違った?
振り向くと、後ろの席の人が屈託のない笑顔でこちらを見ている。
その顔は紛れもなく知っている顔だった、今朝見かけた、インパクトが強すぎて忘れられなかったあいつだ。食パン高校生。
「葉っていうんだな、俺のこと覚えてる?」
口ぶりは10年ぶりに再会した高校の友達同士みたいだ。
「食パンの人」
とっさに出てきた言葉がそれだった。てか食パン以外のインパクトは無かった。
「正解だけどもうちょっと言い方ねーの?あ、俺は翔真。よろしくな。」
コイツ陽キャ100パーセントじゃん。
「えっと、よろしく。」
「カタイな、もっと気楽に行こうぜ!」
やば、まぶしい。体溶けそう。
「ねえ翔ちゃん、その人誰?知り合い?」
ほら、やっぱ100パー陽キャじゃん。急に女子から話しかけられるとか。もし多少隠キャ要素あってもたぶん濃縮還元の着色料くらいの量しかないから結局100パーじゃん。
「コイツ?友達。てか親友。」
キョトン。本日2度目のキョトン。
「え!親友なんていたの!広く浅くがモットーじゃなかったっけ?いつから親友なの?」
「今日から。さっき決めた。」
まじですか
「あ、コイツはまゆ。舞うに優しい。こっちは葉な。葉っぱ。」
翔真が2人を手で示しながら説明した。
「翔真の彼女?」
中学生の俺ー!!ついに呼び捨てできる友達できたぞー!
「なわけねーだろ。ただの腐れ縁だよ。」
翔真が呆れたようにいう。
舞優が一瞬だけ、少し残念そうな表情をした気がした。
「舞優です。翔ちゃんは無意識で人を振り回すタイプだけど仲良くしてやってね。これからよろしくねー。」
「テメーは俺の保護者かよ!」
なるほど、俺と姉ちゃんみたいなもんか。
「うん、よろしく」
あれ?俺1日に2人も友達できたんじゃね?
新記録じゃん!お守りパワーか!?神さま仏さまお姉さまお姉さまありがとう!
「はい、みんな体育館行くから出席番号順に廊下に並んで。」
担任教師?眼鏡をかけた大人しそうな男がよく通る声で指示を出した。
この日、大波乱の連続となる高校三年間は音を立てず始まったのだ。
一人称で書くの無理かも…と思い始めたので
これからはタイトルで遊びます