第3話 転生の結末と葉と姉
ジリリリリ_______________
いつも通りの朝。時計と暖かい布団とが俺を取り合う何気ない朝。やっぱりもう少しだけ寝ていようかな、布団が優勢な朝。そして…
「ほら!葉!!起きろー!」
ラスボスの姉が布団を剥ぎ取るやっぱりいつも通りの朝。
……………
「姉ちゃん!なんで!?」
俺は昨日転生したはずだぞ?はっきり覚えてるし。『異世界転生したら即死した件。』て思った記憶あるし。
「はぁ?なに寝ぼけてんの!いいから起きろー、話はそれから!」
キョロキョロあたりを見渡す、確かに俺の部屋だ。転生失敗した…?
でも成功って言ってたしなぁ…夢だったのか…?
「ぼさっとしない!返事!!」
「はい!」
姉ちゃんに『返事!』と言われると『はい!』ていうようになったのは小4の頃だっけ。懐かしいな。あの頃は、『テンセイ?食べ物?』て感じだったなぁ、その頃ならこんなに落ち込まなかっただろうなぁ…
そっか、俺、転生できなかったんだ
階段を下るのさえ足が進まないなぁ。転生なんてあるわけないのにな。
「母さんも父さんも仕事行ったよー。とりあえず座ってご飯食べよ!今日は大学の授業ないし入学式見に行くから…て聞いてる?顔死んでるよ?」
「ごめん。」
とりあえず促されるままに座る。
「そんなんじゃ友達できないよ」
…それは嫌だ。
「ほーら、スマイル!笑顔!にっ!」
椅子に座ってる姉ちゃんがほっぺに指を当てて無邪気に笑ってみせた。
大学2年にもなってこんなポーズで笑う姉ちゃんを見てるとつらいのとも忘れてしまいそうだ。
「今笑った!そっちの方が絶対いいよ!それなら友達できる!」
弟の友達事情好きすぎかよ。
「俺は人前じゃできないの。これ。」
「自然に笑えばいいのに。ほら、一緒にー、にっ!」
「………にっ」
精一杯笑顔を作ってみる。笑えてるのかなぁ。
「ぎこちなすぎて怖いね」
笑えてなかったのか…
でもだいぶ悲しさは減った気がする。さらっとこーゆーことできる姉ちゃんは本当に凄いよな。俺も一割でいいからそのコミュ力欲しかった。
「そいえばね、自己紹介なんだけど、葉はやっぱり『俺』の方がいい気がしたよ。ただでさえ緊張するのに慣れないことはしない方がいいよ!」
弟思いの姉ちゃんで良かったな、ほんとに。
「姉ちゃん…その、ありがと。」
「…じゃあいただきますしよっか。」
誤魔化してはいたけど照れてるのがバレバレだ。でも触れないでおこうかな。
「せーの、いただきます!」
「いただきます」