理沙 触れる手が
4ブクマもきていた、ありがたいです
放課後の図書室は、シャーペンが紙をこする音ばかり響く。
由実の左隣りに座って、お互い別の問題集とにらめっこする。
同じ大学に入ろうって決めて、そろそろ半年。部活も引退して、勉強に本腰を入れられる。
そうやって、もうどれだけ経ったんだろう。丸まっていた体を伸ばす。ほっと息をついて、ふと由実のほうに目がいくと、視線が合った。
何か言ってるような目に、思わす惹かれる。
不意に、右手を握られる。引っ込めようとして、意味に気づいて握り返した。
左利きだから、右手をそうしていても問題ない。繋がれた手をそのままにして、勉強に戻る。
右手から伝わる由実の体温は、いろいろなものを伝えてくれる。『理沙も、頑張ってね?』とか、『私がついてるよ』とか、言ってる声が聞こえる気がする。できるなら、今ここで抱きしめたくなるくらいかわいく感じる。
いつもよりも、勉強が捗るような気がする。由実がそばにいるというのに、そんなにほっとするからなのかな。
下校時間の少し前、「帰ろっか」と小声で言われる。由実と一緒だったら、勉強だって楽しいのに。何でちょっと早く出ようとするのかな。
でも、耳元に息が掛かって、少しくすぐったくて、ドキっとした。
荷物をまとめ終わると、じれったいように由実は図書室を出る。一体、どうしたんだろう。不審げに思いながらもその後を追いかける。
急いだ足が図書室を出て、角を曲がるのを慌てて追いすがる。
追いついた瞬間、止まっていた由実にぶつかる。
「な、何するんぅ……っ」
言おうとした言葉を、由実の唇に塞がれる。
一瞬の出来事なのに、顔は上気して、思わず俯いて見えた由実の顔も赤い。
それなのに、なぜかその一瞬は心地よさを胸に残す。
そして、ようやくわかった。由実の行動の意味が。
こんな時間は、誰もいないから。キスしたって、誰も気づかない。
「何で、こんなこと……」
でも、どうしてそんなことしてくれたのはわからない。思わず訊くと、由実の答えはいつもと同じで甘い。
「理紗のこと、好きだもん……っ」
ああ、もう、やっぱりかわいい。
……じゃあ、うちも。
俯いてる由実の、顎を上げさせる。赤くなったほっぺたとか、潤んだ瞳とか、由実の持ってるもの全部がかわいい。
「うちも、由実のこと好きだから、いいでしょ?」
言った意味に気づいたのか、由実の体が、すとんと軽くなった。
預けてくれた体を抱き寄せて、そっと唇を重ね合わせる。
二人だけの廊下で、そっと「好き」という気持ちを伝え合った。
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