由実 描く未来
「もう3年生かー」
「付き合ってからだと半年も経ったんだねー」
季節もあの日から2つ過ぎて、桜の舞う4月になった。
「また、同じクラスだといいね」
「そうだねぇ」
昇降口に張られたクラス票の前には、人だかりができていた。
精一杯背伸びをしながら、自分と理紗の名前を探す。
「あ、あったっ!」
理紗が隣で言って、指を指すほうを見ても、なかなか見つからない。
「どこ?」
「ほら、C組のとこ」
C組の列を上から追ってくと、まず、理紗の名前が見えて、そのちょっと下には、私の名前も。
「やったね理紗っ!」
「由実……っ!」
抱き合ったら、理紗の鼓動が聞こえて、すっごく早いことに気づく。
理紗も、緊張してたんだなって気づいて、かわいい、って感情が、頭に浮かんだ。普段は、背も高くて、運動もできてかっこいいとこばかりなのに、ふとしたところで出てくるそんなとこにキュンとしてしまう。
教室の席順を見ると、少しだけ席は離れてるけど、それでも、また二人でいられることのほうが嬉しかった。
ホームルームの時間は、進路に関してのお話だった。
もう、そんな時期か。絵を描くときに真っ白なキャンバスに向かうみたいに、希望と不安が入り混じった感情に包まれる。これから、私は、真っ白な未来に何を描くのだろう。
「ねー、由実は大学とかどうする?」
「うーん……、絵描くの好きだし、美術系かなーとは思ってるんだけど」
「そっかー……、私は、スポーツのトレーナーとかに興味あるんだけど」
私と理紗が描こうとしてた未来は、見事なまでにバラバラだった。
理紗との関係が、永遠に続くと無邪気に信じられるほど子供じゃないけど、もう少し理紗と傍にいたいと思うのは、間違っているだろうか。
理紗の残念そうな声に続いた言葉は、そんな気持ちをますます高めてしまう。
「おんなじ大学入れたら、同じ部屋に住もうと思ってたのになー」
理紗と、二人きりの生活。想像しただけで、胸の中を幸せな気持ちに満たされていく。
「おっきい大学だと、どっちもあったりするかなぁ……」
スマホを使って調べてみると、そういうとこが一つ見つかった。大学のレベルはけっこう高くて、今の成績じゃ厳しいけど。
「ここなら大丈夫みたいだけど……」
「うちらのレベルじゃ厳しいね……」
それでも、湧いてしまった気持ちを、止めることなんてできなかった。
「じゃあさ……二人で頑張って、一緒に入ろ?」
「……そうだね!」
二人で描く未来は、いったいどうなるんだろう。不安もあったけど、楽しみで、しょうがなくなった。
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