理沙 とろける想い
胸の奥に溜まった衝動は、今にも破裂しそうになる。
由実ともっと、触れたい。
抱きしめたり、手を繋いだりとかじゃなくて、もっと、キスとか、特別なことがしたい。
言いづらそうに言った「理紗のこと、考えてた」という言葉に、由実も同じことを考えてたんじゃないかな、と期待してしまう。
「ねえ、お昼休み空いてる?」
そう訊くと、「大丈夫だよ?」と返してくる。
「四限目終わったら、うちのとこまで来てくれる?」
「うん、わかった!」
そういう由実の声が弾んでいて、――やっぱり、由実も同じこと思ってるのかな、なんて、不埒なことを考えてしまう自分がいる。
チャイムが鳴って、三限目の終わりを知らせる。すると、普段早弁なんてしない由実が、お弁当を取り出したのが見えた。
今日だけ、お腹減ったのかな。それとも、お昼休みの「用事」のためなのかな。
それを横目で見ながら、うちも、お腹が減ったのでご飯にする。四限が始まっても、なかなか先生が来ないうちに、全部食べきってしまった。
結局、自習になることが決まって、頭の中を由実のことで埋め尽くすのにブレーキをかけるものが、何もなくなってしまった。
いっつも、スキンシップをとってくるのは由実のほうだから。
うちからしてみたら、どんな反応してくれるんだろう。
そんな想像とも妄想とも言えないものが頭を回っているうちに、お昼休みの時間が、来てしまった。
「ねえ、理紗、用って何?」
「来て欲しいとこがあるんだ、ついてきて?」
そう言うと、つい、由実の手を取ってしまう。やっぱり、うちも、由実に甘えてばっかりだ。
場所はもう、決めている。体育館の奥の、武道場のさらに裏側。空き地みたいになってて、きっと、誰も来ないから。
「どこ、行くの?……」
「行けばわかるよ?」
不意に、繋がった手がきつくなる。やっぱり、恐いのかな。でも、そんなとこがかわいくて。襲ってしまいたくなるくらい。
ようやくたどり着いて、壁際につけた由実に逃げられないように、両手で由実の周りの壁につけて。
「っ!、……り、理紗……?」
「大丈夫、恐くないよ?……」
由実の付けてる眼鏡を外す。ようやく思考が追いついたように、由実が目を閉じる。
最初は、重ねるだけにして、一瞬で離す。
されだけで、由実がびっくりしてるのが、どうしようもなくかわいい。
「もう、びっくりしたよぉ……、でも、」
今度は、由実から。そっと重ねられた唇は、柔らかくて、暖かい。
「すっごく、嬉しい……!」
まつげが触れあいそうなことまで近づいた由実の顔。肌からか髪からか、いいにおいがする。
「もっと、ちゅーしてもいい?」
「うん、いいよ……?」
由実が、そっと私に、体を預けてくれる。
そっと重ねた唇は、柔らかくて、温かくて。
触れるときの感触が気持ちよくて、重ねては離して、また重ねる。その度に、触れ合う音が、心の距離さえ、近づいていそうに思える。
「由実、好き……っ」
それだけで息が乱れて、吐き出すようにか細い言葉になってしまう。
「好きだよ、理沙、……」
抱き寄せられた身体に、耳元で言われた言葉。
『幸せ』という感覚に、身体が包まれていくような。
お互い、体の力が抜けて動けなくなっていて。
予鈴がなるまで、そっと、互いに『好き』を伝えあいながら、二人で肌の温度を確かめ合っていた。
感想が欲しい症候群患者しっちぃ