理沙 上がる体温
公園のベンチで、由実と二人きり。
珍しく二人での帰り道、学校近くの小さい公園に寄り道した。
秋もまだ途中だというのに、ぐっと冷え込んでいた。こんな寒いのに、こんなとこで休むのは、ちょっとでも、二人でいる時間を増やしたいから。
「今日、すっごく寒いねぇ」
「あったかい飲み物買ってくるから、ちょっと待ってて?」
すぐそばに自販機があるのに、ちょっとさみしそうな由実の表情がかわいいとしか思えない。
ダッシュで自販機に行って、コーンポタージュの缶を2個買おうとして、1個目を買ったところで売り切れのランプがついてしまった。
しょうがなく1個だけ買って戻ると、手に息を吹きかけている由実。その仕草すら愛おしくて、なんでこんなにかわいいんだろう、そんな事を想ってしまうくらい。
いたずら心で、後ろから、ほっぺたに温かい缶を当ててみる。
「ひゃあっ、……んもう、理紗ぁ……っ」
そんなかわいい声出すの、反則。そう思いながらも、言う言葉は違うのにする。
「ただいま、由実」
さっきまでより由実の近くに座る。太ももに、由実の肌が感じられるくらい。
「……おかえり」
俯いた顔が、ちょっと赤い。
由実の手を、そっと取って、缶に触れさせる。
「どう?」
「……あったかい」
二人で、カイロみたいにして手をあっためた。
しばらくそうしてると、手も十分あったまる。
「じゃあ、飲もっか」
プルタブを開けて、半分くらいの見当をつけて飲む。体の奥から、ぽかぽか温まる。
「由実も、どう?」
「うん、もらうね?」
そう言って、由実が飲んだ途端、顔が赤くなったのが見えのは、きっと、温まりすぎたせいじゃない。
「ごめん、もうお腹いっぱいだからいいよ・・・?」
ちょっとだけ残された缶を渡されて、うちも顔が火照る。
勢いよく飲み干して、飲んだコンポタの熱とは違う熱さに襲われる。
間接キスなんて、うちと由実にとっては、もう今更のはずなのに。
キスだって、もう何回もしたのに、何でこんなに照れちゃうんだろう。
寒かったはずなのに、着けてるマフラーが鬱陶しいくらい暑い。
「ちょっと、熱くなりすぎちゃったね」
「……うん」
いつもより、由実の言葉が少ない。照れてるとき、由実はよくこうなる。
「それだけ、『好き』、なのかな、うち」
つぶやいた独り言。それは、2人の体温を上げていた。
「理沙、ずるい………っ」
胸元に感じる、引っ張る由実の手の感覚。
由実のほうを向くと、もう目を閉じていた。
回りをふと見まわす。誰も、うちと由実のこと、見てないよね。
もう、我慢できない。由実の唇に、そっと唇を重ねた。
感想が欲しい。