由実 積み重ねてく日々
「えへへ、こたつあったか~い!」
一緒にこたつに入って、みかんを食べる。年の変わり目を、二人でのんびり過ごすのはこれが初めて。
棚の上に置いたコルクボードには、二人で過ごしたたくさんの思い出が詰まっている。
これからも、ずっと、そうしていたいな。なんて、埒の無いことを考える。
もう、時計は、新しい年が来るのを知らせる寸前。
二つの針が重なって、私たちの唇も重なる。
今年、初めてのキスは、甘くて、ちょっとみかんの味がする。
「明けましておめでとう、由実」
「今年もよろしくね、理紗」
何でかわからないけど、何か照れちゃう。
照れ隠しに、もう一度キスをする。まだ今年になって1分も経ってないのに、もう二回目。
何で、こんなの、数えちゃうんだろう。これまでもずっとしてきたし、これからも。きっと明日になったら、もう数え切れないくらいになってるのに。
――きっと、重ねたキスの一つ一つが、二人が繋がっている証になるから、なのかな。
そんなことしなくても、理紗と私はずっと繋がってきたのに。
「ねえ、理紗」
「……なあに?」
「来年も、これから先も、ずっと『今年もよろしく』って言いたいね」
とりとめもないけれど、気づいた途端に膨らんだ気持ち。
来年、再来年、さらにその先、「今年もよろしく」をこんな間近に言える関係でいられたら。
それは、「ずっと一緒」でいられることになる。
不意に、理紗に抱きしめられる。理紗の座ってた角のほうに体がいきなり傾いた。
「ちょっと、理紗っ、いきなり何!?」
恥ずかしさにちょっと声がきつくなって、それすら理紗の優しさは包み込む。
「由実がかわいいのが悪いのー」
なんて唇を尖らされる。ただでさえかわいいのに、これ以上かわいくならないでよ。もっと好きになっちゃうから。
頭が熱くて、きっと真っ赤になった耳のすぐ傍で、そっとささやかれる。
「じゃあ、……二人が一緒でいられなくなるまで、ずっと一緒にいよっか」
他にも言い回しなんていくらでもあるのに、その言葉を使ってくれた理由も、言わなくたって気づく。
いつか、お別れの時がくるのはわかっている。でも、理沙だってそんなこと言いたくないし、私も、理沙とお別れするときなんて、絶対に考えたくない。
「うん、……約束、だよ?」
「分かってるよ、もう」
抱きしめられた腕を緩められる。理由なんて、もう言われなくたってわかる。
目が一瞬合って、条件反射のように目を閉じる。
今年3回目のキスは、二人でい続けることを誓う、誓いのキスだった。
のこり2話になります。
ちょっと書き下ろしが間に合わなかったため、次回投稿は明日ではありません。
1週間以内には書くのでそれまでお待ちください。暇つぶしに感想でもくれませんか。




