由実 甘い君と
順番ミスのため今日は2話と3話になる部分を
『お付き合い』をしてから、初めて理紗と学校で会う。
今までの日常の中に戻り始めて、近づいた理沙との距離は、何を変えてくれるのか、気になってしまう私がいる。
沖縄よりは涼しいけど、それでもまだ蒸し暑い中を、学校に向かう。
理沙と会うのが楽しみで、もう教室についているはずの理沙の顔を、歩きながら妄想する。
「おはよ、由実」
「うん、おはよぉ……」
目が合って、そっと微笑まれる。
それが、共犯者めいた目つきだったのが、ちょっと微笑ましく思える。
今までと同じ日常で、理紗との距離が近づいただけ。最初は、たったそれだけだと思っていた。
「ねえ、由実、一緒にお昼食べよ?」
いつも3限までにはご飯を食べ終わってる理紗が、昼休みにこう声を掛けてくれる。
「うん、そうしよっか」
二人きりになれる渡り廊下の上で、ご飯を食べ進めていく。いつもと変わらないはずなのに、隣で理紗が一緒に食べてるってだけでなぜかおいしく思える。
「ねえ、卵焼き、1個交換しない?」
そういえば、卵焼きは、一番お弁当の中で個性が出るものだってどこかで聞いた気がする。
理紗が、どんな味を食べてきたのか知りたいし、私のことも、知ってほしい。
「うん、いいよ?」
そう言って理紗が箸で卵焼きを一つつまんで、そのまま私の口のほうまで持ってくる。
思わずそれを口に含む。私の家のよりも塩が強いけど、それでもおいしい。
これが、理沙が、ずっと食べてた味なんだ。また一つ、理沙のことを知って、その度に、胸の奥がふわふわとしたもので満たされていく。
そういえば、こんな状況、漫画とかで恋人同士がしてるのだ。客観が湧いた瞬間、体がどうしようもないくらい熱くなる。
「……どうしたの、由実?」
「ごめん、おいしかったけど、それよりもドキドキして……っ」
そりゃ、私達だって、恋人同士だと思うけど。こんなこといきなりされたら、心臓が跳ねないわけがない。
「り、理紗も、どう?」
せめてものお返しで、箸で挟んだ卵焼きを理紗の顔の前に差し出す。
理紗が食べてるとこをみたら、きっと胸の奥が壊れそうになるから、わざと差し出すと別のほうを向く。
「由実のとこは、甘くておいしいね」
その言葉が、私の胸の中で一番甘い。
でも、前置きされた言葉に反応できずに、理沙の唇が唇に乗るのを、抑えられなかった。
「由実のほうが、甘いや」
きゅんって、胸が高鳴ってしまうくらい、甘い甘い、理沙の言葉。
縮まった理紗との距離は、それだけで私を幸せにさせる。
これから先、どれだけ理紗にドキドキさせられればいいんだろう。
でも、ずっと、何回でも、理沙にドキドキされたい。それだけは、確かだった。
感想が……ほしいです……