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きみとふたり。  作者: しっちぃ


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理沙 よぎった不安

 二人きりの散歩道、不意につないだ由実の手が離れる。

「あ、あっちに猫ちゃんいっぱいいる!」

 指を指すほうに目を向けると、そこには何匹もの猫が気ままに休んでいる。

「本当だねぇ」

「もふもふできるかなぁ……」

 そんな由実が、かわいいんだけど、そんなに突き進みたがる由実に、ちょともやもやする。

「首輪してないし、野良かもよ?」

「でもいいじゃん、かわいいし」

 うちだって、猫は大好きだけど、あんまりなついてくれた覚えがないからこういうのは苦手だ。

 それに、……うちより、猫のほうがいいのかな。

 そんな不安みたいな気持ちが、頭の中を徐々に埋めていく。

 分かってるよ、由実が、うちのこと、どれだけ大事にしてくれてるのか。

 でも、どうしても不安になっちゃうの。――由実と一緒にいるのが、当たり前みたいになってるから。

 由実は、うちのもやもやなんて知らない風に猫を警戒させないようにか、そろりと近づく。

 それをつけるように追ううちには目もくれずに、由実は手近な1匹のもとに座って呼んでる。

 シャッター音を消せるカメラアプリで、猫と一緒に、猫を撫でる由実を撮った。

 かわいいな、由実は。スマホの画面の向こうに写る由実の笑顔を見て思う。

 猫を抱き上げた由実が、こっちに微笑みかける

「ねえ、理紗、私のこと撮ってくれない?」

「うん、いいよ」

 心のもやもやは、濃度を増して胸を埋めていく。

 何枚も写真を撮って、でも全部消してしまいたくなる衝動に駆られる。

「どうしたの理紗?理紗も猫ちゃん抱っこする?」

 由実が抱いてる猫が、羨ましくてちょっと恨めしい。

 うちが抱きたいのは、猫じゃなくて由実なのに。

「う、うん」

 猫は好きだし、由実になついてくれるなら、うちにだってなついてくれるかな、

 スマホを鞄にしまって、由実の隣に座る。

 由実の腕の中にいる猫を受け取ろうとして、猫はお互いをすり抜けるように逃げていく。

 その一瞬に、由実にキスをされた。

「理紗ってば、猫ちゃんに焼きもち焼いちゃった?」

 一発で当てられて、何も言えなくなる。

「もう……、私にとっては、いつでも理紗がいちばんなんだよ?」

 何かが、一瞬で切れた。

 由実のことを、思い切り抱きしめる。赤くなった由実の耳に、そっとささやく。

「うちのこと見ててよ、由実。……じゃないと、嫉妬しちゃうよ?」

「もー、理沙はわがままさんだなぁ……っ」

「……駄目?そんなくらい好きにさせたのは、由実のほうなのに」

「理沙ってば、ずるいよ……」

 そう言った由実の声は、照れてるときのだった。

「そんなの言われたら、もっと理沙のこと好きになっちゃうよぉ……っ」

 由実のほっぺ、ほんのり桜色。

 言葉だけで、そんな気分になっちゃったのかな。

 うちも、もっと由実のこと欲しくなって。

「そろそろ帰ろっか」

「うんっ」

 手なんて繋いだら、そのままいっぱいキスしてしまいそうだから、

「……ただいま、由実」

「えへへ、おかえり。……ちゅっ」

 ただいまのキスは、そのまま激しくなった。

「んんっ、りさぁ、ちゅぷっ、はぁ、ぴちゃっ」

「ちゅっ、ちゅぱっ、れろ、……ふぅ、ふぅ……」

 由実も、我慢できなくなってたんだ。

 くらりと崩れる体、支え合うようにして、なんとか立ってられる。

 どうしようもなくドキドキして、沸騰しそうなくらい体が熱い。

 不安なんて吹き飛んで、ただ、由実が好きって気持ちが、胸の中に沸いていた。

本当にいちゃいちゃしまくってればいいと思うのこの子ら(錯乱)


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