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きみとふたり。  作者: しっちぃ


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12/26

由実 おくりもの

 そろそろ、理紗と二人暮らしをしてから1か月。いろいろな意味で、新しい暮らしにもようやく慣れてきた。

 そして、理紗と始めたバイトのお給料が、初めてやって来た。……せっかくだし、何か、プレゼントしたいな。

 珍しく、理紗より早く講義が終わる日で、内緒で贈り物を買うにはちょうどいい。

 何をあげたら、理紗は喜んでくれるかな。いつも、「由実がくれるのは何だって嬉しい」って、優しく言ってくれるけど、それでも、理紗が一番喜んでくれるものがよかった。

 ちょうどよくそんなものが見つかって買うと、ちょうど今から戻れば理紗の受けてた講義が終わる頃になる。

 何食わない顔で理紗と合って、自然に繋がった手をそのままにして、帰り道に向かう。

「ねえ、帰りにケーキ買わない?お給料も出たし」

「そうだねー、どこにしよっか」

 なんて話が、いつの間にか広がっていく。本当は、緩んだままのほっぺたを隠すためだったのに、理沙と話すのが、楽しくてしょうがなくなっていて。

 私、理紗のこと好きだなー、なんて今更だけど思う。緩んだ顔は、きっと理紗とおはなしできるからだって思ってくれる。

 いつもより短く感じた帰り道。理紗のつないでないほうの手には、さっき買ったケーキが二つ。

「ただいまー」

「おかえり、理紗」

「もー、由実だって帰ってきたばっかでしょ?」

 そんな事いいながら、ただいまのちゅーをする。そんなことが、私の中に「幸せ」のかけらとしてたまってく。

 でも、まだ渡せないのがもどかしい。自分のバッグに隠したままだから、取り出せるのは理紗が一人でお風呂に入る間だけ。

 待ちかねてる時間は、なかなかやっては来ない。二人でご飯食べたり、おしゃべりしたり、ふたりでいる時間は、すごく楽しいけど。

 理紗の喜ぶ顔、早く見たいな。そんな気持ちが、私の中で湧いて、じれったくさせる。

「じゃあ、お風呂先入るね?」

「うん、わかった」

 二人で入るときよりも広い湯船に足を伸ばす。

 一人だと、こんな広かったっけ、……理紗のこと考えてるから、二人のときを想像してしまうのかもしれない。

 そんなことをずっと思っていると、思ったより長湯してしまった。慌てて体を洗い、お風呂から出る。

「理紗ぁ……、お風呂空いたよ?」

「うん、わかった」

 そう言って脱衣所に向かうのを確認して、鞄の中の渡したいものを、そっと取り出す。

 理紗がつけてたテレビを見る気にもなれずに、二つ買ったそれを見比べる。気に入ってくれるかな、ってちょっと不安になる。

 二人でソファーに座るとき、ふと横を見ると、理沙の笑顔。それが、私に勇気を持たせてくれた。

「あのね、理紗…?」

「なぁに?」

「渡したいものがあるの、……目、閉じて?」

理紗が目を閉じたのを見て、そっと腕をとる。そして、手首に付けて。

「もう、いいよ?」

「これ、……腕時計?」

「うん、そうだよ?」

 時計だったら、どこでも気兼ねなく付けられるし、いつでも一緒にいるよ、って思える。

「嬉しいよ、ありがとう」

そういって抱きしめる理紗の手を、慌てて抑える。

「待って、……」

「何?」

 もう一個、手に取る。

「お揃いにしたくて、……これ、私に付けてくれる?」

 プレゼントに込めた、もう一個の意味は、――『永遠』を表す時計を二人で分かち合って、同じ時間を過ごそうね、ということ。

「うん、分かった」

 満面の笑みで応えてくれる理紗は、その意味に気づいてくれてるのだろうか。

 理紗の手から私の手に。互いの熱を持った時計が手首に巻きつく。理紗の手についたものと当たって、かすかな音が鳴る。

「うちからも、渡したいのがあるんだ」

 不意に言われた言葉に、胸の奥が跳ねる。

「何?」

「いいから、目、閉じて?」

 逸る気持ちを抑えられて、一緒に、何をくれるかもわかった。

 何も見えないのに、理沙の触れる手を感じる。そして、重なったくちづけがお互いの体温も気持ちも伝え合う。

「由実みたいに素敵なもの、あげられなくてごめんね?」

「ううん?ていうか、こっちのほうが嬉しい」

「よかったぁ……、でも、まだ全然足んないや」

 さりげなく、理紗に片手だけで時計を外される。机の上に隣り合わせで置かれて、次に眼鏡も。

「な、何……?」

 少し恐くなってつい聞いてしまう。手を引っ張られて思わず立ち上がってしまう。いつもの理紗なら、そんなことしないのに。

「もっと、あげたいのがあるんだけど、……嫌だった?」

 眼鏡を外されて、ぼやけた視界でも分かるくらい赤くなった理紗の顔で、ようやく意味に気づく。

「ううん、……もっと、ちょうだい?」

 電気が消されて、そっとベッドに押し倒される。急に鼓動が激しくなって、胸がきゅぅっと痛む。

「もう、由実?」

 理紗の顔が、はっきり見えるくらい近い。唇から紡がれた言葉が、やけに耳に残る。

「……今夜は、寝かさないよ?」

 その夜は、今までで一番長かった。

一番長かったらしい夜を書いてみたい感はあるけど問答無用でRつくのでやめとく

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