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きみとふたり。  作者: しっちぃ


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理沙 重なる想い出

 由実と一緒に暮らすようになってから。うちは、由実のこと、いっぱい知ることができた。

 そして、その度に、心の中の「好き」というかけらが増えていく。由実の何もかもが、たまらなく愛おしくなる。

 また、朝がやってきた。目覚ましを止めて、そっと体を起こそうとする。でも、それは、背中に回されていた由実の腕に遮られる。眠っているはずなのに、由実の腕は、わたしを離さないようにきつく抱きしめていて。

 結局、由実の隣でまた寝転がることになった。寝息がかかりそうなくらい近くにある由実の寝顔に見とれてしまう。背中のあたりが、くすぐったいようなじれったいような感覚に襲われる。

白い肌に、長いまつ毛。柔らかいほっぺに、桜色の唇。それを無防備なまでにさらす由実は、ずっと見ていたいくらいかわいい。

 不意に、背中の、由実の腕の感触が強まる。

「理紗、待って……」

 どくん、と、鼓動が体に鳴り響く。由実の顔が近づいて、――途端に目の前が暗くなる。

 触れた感触は、目をつむってもわかる、由実の唇。暖かくて、柔らかくて、わたしを幸せにしてくれる。心に刺さった痛みすら、「気持ちいい」という感覚に変えていく。

 唇を離して、目を開ける。由実と目が合って、夢じゃなかったとようやく思考が追いつく。

「理紗ぁ、おはよぉ……」

 まだ眠たいのか、ソフトで、間延びした声。

 そんな声を聞けるのも、この世界で自分だけ。

「お、おはよ……」

 目が合わせられなくて、声も慌てたようになってしまう。

「んー、……どうしたの?」

 由実は優しいから、きっと許してくれるよね。

「あ、あのね、由実……」

 ごめんね、と続けようとした瞬間、唇を塞がれる。

 ううん、いいよ。ありがとう。嬉しい。

 そう言われたように思ってしまうくらい、由実のキスは優しかった。

 一瞬離れて、唇の上で囁かれる言葉。

「これで、おあいこ、……でしょ?」

 由実ってば、もう。

 言いたいことがいっぱいで、何も言えなくなる。体の芯が、ぽう、と熱くなっていく。

「全部、嬉しかったよ」

 心の中に、溶けたチョコみたいな、甘いものがこみ上げる。

「由実……」

 これ以上、言葉が出てこない。ふと、由実の力が強くなって、気がつくと、由実の顔は天井のほうにあった。

 由実の唇が、触れたと思えば離れて、離れたと思うとまた触れる。触れるたび、鼓動がますます高鳴っていって、はち切れそうになる。

由実の顔が離れて、見せたふんわりとした笑顔。

「理紗……、大好きっ」

 ああ、もう、かわいい。――由実からも甘えてくれるから、余計に。

「うちも……、大好きだよ、由実……っ」

 さらさらとした由実の髪を撫でる。シュシュで後ろを軽くまとめていて、それがまた心をそっと刺激していく。

「あ、待ってて、おいしいごはん、作ってくるね」

 最後に、由実からもう一回。由実からの「好き」で、もう胸がいっぱいになっていく。

 かちり、と由実の眼鏡が音を立てる。それをつける由実の動きすらも、たまらなくて。

 いくら言葉を重ねたって、足りないくらい、由実が好きで、しょうがなかった。

感想がほしい症候群患者を治せるのは感想しかないという。

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