理沙 二回目の初デート
感想が欲しい症候群
いつもより、人通りが少ない駅のホーム。
滑り込んだ電車から、吐き出された人波も普段よりまばらで。
探していた彼女の姿は、簡単に見つけた。
向こうも、こちらを見つけて足早になる。
「理紗~っ」
抱きつこうという勢いで、こっちに飛び付いてきた由実を、慌てて抑える。
「もう、由実ってば……。おはよ」
「えへへ、おはよー」
朝に弱いはずなのに、やけにテンションの高い由実。
それも、そうだよね。
うちだって、ドキドキするのが止まらない。
だって、――
これから、二人でデートするんだから。
「デート」のきっかけには、修学旅行で、由実がいつもと違う髪型をしていたから。
普段は長い髪を下ろしてる由実が、海で泳ぐとき、後ろを結んでいた。
見慣れない髪型に、ドキドキするのが止まらなくて、由実のことしか、視界に入らなくなっていた。
その日の夜、
「わたしの髪型、変じゃなかった?」
なんて心配そうに訊く由実に、
「ううん?すっごく、かわいかった」
と、本心で口に出す。
「もう、理紗……、好き」
他の部屋に遊びにいったのか、部屋に二人きり。
目を閉じて、唇をすぼめる由実。その顔が、ほんのりと赤い。
キスをせがまれてることに気づいて、そっと、唇を重ねる。離して、顔を見合わせると、見えた由実の笑顔。
「ねえ、理紗……」
「何?」
「もしよかったらさ……」
そういうの買いたいから、一緒に行ってほしい、なんて言われて、胸が跳ねないわけがない。
「もう、当たり前でしょ?」
由実のこと、思いっきり、抱きしめていた。
「ちょっ、理紗、苦しいってば……っ」
「だって、……由実がかわいいんだもん」
「……理紗ってば、ずるい」
それでも、由実はうちの事を離そうとはしなかった。
大きい街のショッピングモールは、光で溢れてて。
平日なんてことは関係ないくらい、人でいっぱいになっている。
不意に、右の手首に感じた温もり。
「ねえ……手、つなご?」
わざとこっちを見ないで言われた言葉に、どきっとする。
修学旅行のときの、「初デート」のときにだって、ずっと繋いでたのに。
「何で?」
思わず聞いてしまったのは、こんなことで緊張してることをごまかすため。
でも、――
「だって、……理紗と、くっついてたいし」
恥ずかしいとか、知ってる人に見られてたらどうしようとか。
そんなもやもやなんて、全部吹っ飛ばされた。
頭の中が、由実のことしか考えられなくて。
由実と、触れ合っていたい。そんな気持ちが、とめどなく溢れてく。
「うん。手、繋ごっか」
由実のほうを向けなくて、探り合うみたいに手と手が触れる。途端に、指と指が絡まりあう。その感触と由実の体温は、鼓動を早めるのに、なんかほっとする。
由実のほうをちらっと見ると、自分で言ってきたのに、うつむいてて、顔が赤くて。
「ねえ、早く行こ?」
いつもより早足なのも、本当にかわいくて。
「うん、そうだねぇ」
そう言いつつも、本当はもうちょっとゆっくりがよかった。
由実と、もっと居たいから。
「由実って、いろいろ似合うんだねー」
「えー?そっかなぁ……」
アクセサリーショップで、由実に合う髪飾りを二人で探す。
自分は髪が短いからこういうお店には縁がなくて、そういう意味でも新鮮かもしれない。
「じゃあ、理紗が、一番いいって思ったのにするね?」
由実に、寄りかかられたような気分だった。
でも、全然重くなくて、むしろ、それが心地いい。
「じゃあ、……これかな」
手にとったのは、向日葵がかたどられたヘアピン。
それを、由実の前髪につける。
「由実、かわいいよ……っ」
見惚れてしまったのを隠すために俯こうとして、由実と目が合う。由実の顔は、「幸せ」をそのまま表したみたいに明るい。
「ありがとっ!……でも」
由実は、付けられた髪飾りを外す。心がざわつく。何で。
その髪飾りを持った手が、髪に触れる。
「理紗にも、似合うと思うなー……」
ようやく、繋がった。
それを付けられて、ちょっとドキドキする。
「ねえ、……似合う?」
「うん、かわいいよ?」
すぐ近くにあった鏡を、ようやく見れる自信がついた。おずおずと、そっちを見る。
そこには、いつもより、かわいく見える自分がいた。
「理紗、どうだった?」
「思ったより似合ってた、……のかな?」
「もう、バッチリだったよ?だから、お揃いがいいな」
きゅんと、胸が鳴る。そんなこと言われて、嬉しくないわけがない。
「じゃあ、そうしよっかっ!」
最初に思ってたより、ずっとずっと甘くて。
由実といる時間を全部、宝物にして、宝石箱に詰めておきたくなるくらい、二人でいる時間は、キラキラに輝いているような気分。
二人で、もっと、幸せを集めたいな。
そしたら、きっと、いっぱいの思い出と一緒に、由実とずっといられるよね。
というわけで始まりました番外編!!!!
毎日更新はするけど多分3週間弱は更新続くと思います!!!
感想ください。これも他のも。