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第六話 魔法と魔術が違うことはよくある

「今です。ギョクト様」


 私はマグノリアに合わせて術式を書き上げる。

 私の手元から不可視の弾丸が飛び出す。狙いはあのお化けトカゲだ。フォレストリザードと言うらしいが⋯⋯

 私の魔術は見事に命中し、トカゲの横っ腹に穴が空いた。我ながら危ない威力だ。これで、初級程度とは。


 今何をしているかって? 魔物狩りですよ。魔物狩り。え? 魔術? ああ。マグノリアから基礎を教わりました。簡単にできるものなのかって? その辺は時間を遡ってお話しよう。


 三日前。あの一世一代のお願いをした後のこと。

 もちろん? マグノリアの返事はOKだった。断れるとは思わなかったが⋯⋯緊張した。もし、相手が自分を好きなことが確定していても、その相手に告白するのは緊張するだろう。そんな経験ではないけど⋯⋯


 まぁ、その後のことだ。まだ、西にはもうしばらくかかり、さらに、これから魔物が増えるということで私のステータスを確認することになった。戦闘には自分のステータスの確認は必須らしい。

 自分のステータスを確認する際は自分の内側に意識を向け、『ステータス』と唱えるそうだ。

 というわけで、早速⋯⋯


「『ステータス』」


名前:ギョクト・ヒサノ

種族:元始鬼種

性別:男性

年齢:19

称号:傲慢の魔王 転異者

能力値:筋力 G

    体力 A

    速度 S

    魔力 SS

    精密 S

アビリティ:君主の魔眼 王者の魔眼 完全状態異常耐性

スキル:黒魔術Lv10 魔力操作Lv10 肉体操作Lv10


 おう⋯⋯何を言っていいやら⋯⋯

 能力値が妙に高い(筋力以外)のと、アビリティとスキルが恐ろしいことになっている。これは別にいい。損は無いだろう。魔眼がどんなものか分からないから、そこだけは不安だが⋯⋯

 しかし、種族と称号、これは⋯⋯

 まぁ、人ではないのはいいとしよう。この世界はではなんとかなる⋯⋯はずだ。そう。そこはいいのだ。

 魔王って⋯⋯いきなり討伐フラグか。


「どうでした?」


 気になりますよねー。しかし、言っていいものか⋯⋯あれ? そういえば⋯⋯


「言うより確認してくれたほうが早いと思うけど。というより、一度確認してなかった?」

「ああ⋯⋯言ってませんでしたね」


 マグノリア曰く、転異者のステータスは確認することができないらしい。それが例え転異者同士だったとしても。転異者のステータスを確認するには鑑定系統のアビリティアが必要だそうだ。

 ちなみに、転異者の場合とステータスを隠蔽する類のアビリティか装備持ち(やはりそういうのがあるらしい)とでは違いがあるとのことだ。

 前者は確認できないと表示されるが、後者は拒絶されたと表示されるらしい。

 つまりはマグノリアには私のステータスを見ることができない。


「あ、あの⋯⋯言わなくても構いませんよ。転異者は切り札を持っていることが多いそうですから」


本当に優しい。確かにこのステータスは人に言えたものじゃない⋯⋯と思う。しかし、マグノリアなら構わないだろう。信頼を強めるのに、あからさまな隠し事は厳禁だ。それに、こちらの能力を知ってもらえば、アドバイスや、戦闘中のフォローもしてくれる⋯⋯はずだ。


 ということで、マグノリアに伝えたところ⋯⋯


「称号が魔王ですか⋯⋯珍しいですね。にしても、恐ろしいステータスですね。聞いたこともない魔眼が二つに状態異常が効かないアビリティ。それに、最大レベルのスキルが三つ。流石は転異者と言うべきですか。ただ、筋力と黒魔術が⋯⋯」

 

 ん? 魔王と種族はスルーですか⋯⋯問題ないのかな?


「マグノリアさんや、魔王だから討伐されるとかはないですかね?」

「? 魔王がどうしてですか?」


 ふむふむ。なるほど。称号が魔王でも問題なさそうだな。傲慢は甚だ不本意だが。

 あともう一つ。


「元始鬼種ってあるけど聞いたことは?」

「ありませんね」


 これはまずい⋯⋯かもしれない。これで、同じ名前の魔物が居たら目も当てられない。

 この不安をそれとなくマグノリアに聞いてみると⋯⋯


「問題ないですよ。種族権の条件は覚えてますか?」

「あれね。覚えてるよ」


 確か、知恵と秩序だったかな? 会話できればいいんだっけ?


「実は明確で一度で分かる方法? みたいなものが有りまして」


 ほう。私はそれを満たしているのかな。


「ステータス魔法。つまりステータスの確認ができる者であれば種族権が認められます」

「本当に?」

「本当です。噂ではありますが、突然変異で知能が著しく高くなったゴブリンがステータスの確認ができるということで、種族権が認められたという話があります」


 なら大丈夫かな。まぁ、今悩んでも仕方ない。そう。考えても仕方のないことなのだ。

 それに他にも気になることを言っていた。


「筋力が低いとまずいのは分かるけど⋯⋯黒魔術はだめなの?」


 かっこいいと思うんだけどなー。レベルはカンストしてるらしいけど使えないが。やり方分からんし。


「いえ、そういうわけではないのですが⋯⋯」

「?」

「ギョクト様は魔術を使ったことはありますか?」

「ない」

「ですよね。だとすると、スキルがあるので失敗はしないとは思うのですが、黒魔術を私は教えることができません」


 つまり、なんだ、あれか。スキルはあるのに使えないという定番か。

 そもそも黒魔術スキルがあるのが謎だ。アビリティはそういうものとしておこう。肉体操作と魔力操作はまだ心あたりがある。あれだ。通っていた道場だ。あのおかしい道場。そこでの準備運動に気が~とか呼吸法~とかやっていた。まさかあれが今になって実を結ぶとは⋯⋯


「属性魔術なら教えることができたのですが⋯⋯」


 なんでもこの世界にはいろいろな魔術があるらしい。

 属性魔術は火、水、風、土があるらしい。ちなみに、聖や闇は上位属性になるらしい。上位属性には他にも雷や煉獄なんてのもあるとのことだ。やはりこういうのはテンションが上がる。あと、属性魔術は今の主流らしい。

 対して、私がスキルとして持っている黒魔術(色魔術と呼ばれるもの)は一昔前の魔術だそうだ。別に劣っているわけではなく、むしろ優れている。ただし、体系化ができなかった。複雑すぎて。

 魔術は基本的に式を書いて使うとのことだ。式は私の主観ではあるが、なんというか、図形をいくつか組み合わせたり、文字が書いてあったりするものだ。これを魔力で書くらしい。無理だろ⋯⋯


 マグノリアが教えられないというのは色魔術の複雑さ故らしい。属性魔術は体系化に成功し、他属性でも共通するものはあるし、法則もある。文法ってやつだ。

 しかし、色魔術は全くではないが、それが無い。少し例を見たら、あとは勝手にやれというのが色魔術なのだそうだ。そりゃあ教えられんわな。


「黒は空間に関わると聞いたことがあります。それをイメージして試行錯誤するしかありませんね。基礎の基礎なら教えられますし。筋力Gでは接近戦はきついですからね。幸い魔術師の適正は最高です」


 魔力はSSだからな。


「やっぱり筋力が低いと厳しい?」

「ええ。Gでは上等な武器はほとんど装備できません」


 おう。装備するのに能力値が必要なものがあるのか。くう。私はそんなもやしっ子じゃないのに⋯⋯

 ふぅ⋯⋯まあいい。無い物ねだりは意味がないだろう。


「試行錯誤して、魔法使い路線でいくか⋯⋯」

「魔法使い? ああ⋯⋯」

「? 魔法使いがどうかしたの?」

「ギョクト様、魔法使いは存在しません」

「!」


 ど、どういうことだってばよ。だって魔術⋯⋯魔法とは言ってないな。あれでも確か⋯⋯


「ステータス『魔法』って言ってなかった?」

「ステータス魔法は私たちが使えているわけではありません。あくまで世界の法則です」

「んー? まあいいや。魔術と魔法の違いは?」

「魔術は式で現象を起こす技術です。魔法は世界の(ことわり)(ルール)を書き加える奇跡です」


 なんだか思ったよりも大規模だな。


「逸話ではありますが、ステータスは魔法で生まれたという話があるのでステータス魔法と呼ぶそうです」


 世界を変えるか⋯⋯案外転異者は魔法の産物かも。


「魔法使いは本当に居ないの?」

「断言はできませんが居ないと思います。噂でも聞いたことがありません。疑似魔法の使い手ですら世界の果てまで名が通ると言われているのですから」


 仮に全く世俗に関わらない世捨て人だったとしても、それなら魔法を使えても気にしなければいいだけだろう。それよりも⋯⋯


「疑似魔法?」

「場所と時間を限定して魔法と似たような効果を発揮するものです」


 そういうのもあるのか⋯⋯


「最近ではギョクト様と同じ転異者の『導きの術王』と『剣華の舞姫』の兄妹が有名ですね。ちなみに、この兄妹はエルロイにいますよ」


 ふむ⋯⋯つまり魔法使いは目指せないわけではなさそうだな。

 ま、いいか。細かいことは気にせずやってみるかな。


「ふーん。魔術については分かったよ。ちょっと魔力の使い方だけ教えてくれる?」

「構いませんよ」


 ということで冒頭に戻る。


 魔術はなんとかなった。今使えるのは一つだが。いろいろ試したが敵を倒すのに使えるのはこれくらいだった。最初はこんなの書けるかとも思ったが、スキルの補正素晴らしい。

 魔術も使えてなかなか順調。追手も来ている様子はない。これなら大丈夫かな。


 順調だけでは終わらないのが旅路のようだ⋯⋯


 



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