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第十一話 友達とは一回勝負してみる

 朝だ。正直眠い。まだ日が出てないんだぜ。

 宿はどうにかなった。高級な宿でないなら銀貨三枚で足りたようだ。といっても、どの部屋をいくつ借りるかで変わる。私たちは二部屋借りた。二人部屋と四人部屋だ。内訳は二人部屋が銀貨一枚。四人部屋が銀貨二枚だ。エナリーがこの部屋を借りたとき、私はエルギルと同じ部屋だと思っていたのだが、マグノリアとだった。また理性が試される。そういえば、レナリーがマグノリアに何か耳打ちをして、マグノリアがまっ赤になっていたが何を話したのだろう?


 まだ朝早くだというのに北門にはかなりの人数がいた。冒険者ってのはそれだけ価値のあるものなのかね?

 おっと。知り合いを見つけた。あちらもこちらに気付いたようだ。


「よう。昨日ぶり」

「そうだねドナト。調子はどう?」

「ははっ。眠い」

「同じく」


 昨日も思ったがこいつとはなんか気が合う気がする。

 気になったことでも聞いてみるかな。


「冒険者はそんなに旨みのある職業なの?」

「実力があればいくらでも金を稼げるな。それにランクが上がれば有名になれる」

「ふーん。それでわざわざ試験なんて受けるのか」


 確かギルドの方で貰った冊子にランクのことが書いてあった。一番上はSSだったかな。そこまで至れば英雄とでも呼ばれるのだろう。


「試験があるのはこの町ぐらいだけどな」

「え! そうなの?」


 レナリーは知っていたのだろうか? 


「ああ。だからここで冒険者になろうって奴は多い。俺もそうだしな」

「試験があることが?」

「おう。この試験を受けるよりもランクを上げるための試験のほうが時間もかかって面倒だからな」


 上手くいけば最大で通常より二つ上のランクから始められるというのが理由か。


「それに、この町のギルドは誠実だしな。ところによっちゃ賄賂がないとランクが上がらないギルドもあるらしい」

「なるほど。それは嫌だね」


 今のところはランクを上げるつもりもないけどね。


「だからこんな朝っぱらから頑張るわけよ。朝早くに試験を開始するのも規律を守れるかどうかを見るためらしいからな。お前のとこは真面目そうだからいいな」

「本当に。私一人なら寝坊してたよ」


 私の他の皆はアマリアとクロウスにいたるまで眠気を感じさせない。なんか皆楽しみにしてないか?


「おっ。そろそろ始まるみたいだな」


 眼鏡をかけた緑のローブを着た男が来た。そして、なにやら術式を書き、話し始める。


「あーあ~テステス。私は冒険者ギルドウィズベルト支部副支部長ハロート・クエンターと申します。こちらにおられる方々は冒険者の試験を受ける方々でお間違いありませんか?」


 あの術式は拡声に用いるものらしい。便利だな。


「試験への参加を打ち切ります。それでは試験の内容について説明させていただきます。簡単に言ってしまえば魔物退治です。最近この辺ではゴブリンやオークが増えてきていまして。それを狩ってもらいます。もちろん、薬草や霊草の採取も評価します。しかし、基本的には狩った魔物で評価を決めます。期間は三日です。期間中は町には入らず野営を行ってもらいます。監視はありますので、ずるは即刻失格とします。途中退場は認めます。途中退場したからといって、不合格にはなりません。自身の実力を理解することは冒険者に必要なことです。複数人で臨んでもらっても構いません。冒険者は時にパーティーを組み、気が合えばクランも立ち上げる者です。以上で説明を終わります。質問は随時受付ます。ああ、そうそう。死んでしまっても自己責任でお願いしますね。では、開始です」


 ゴブリンやオークもいるんだな。害獣扱いだけど。


「ドナト、つまりは魔物を倒していけばいいんだよね?」

「そうだな。他にも野営の手際とかのサバイバル能力も見るんだろうな」


 なるほど。よく考えている。もしかしたらこの町のギルドは結構過保護なのかもしれない。この試験はいきなり無理して死ぬ人を減らす役割があるのだろう。


「そうだ。勝負しようぜ。ギョクト」

「うん? いいのかい? 複数人でもいいみたいだから私たちのほうが有利だよ」

「数も力さ。それにお守りもしなきゃだろう」

「おや。そんなこと言ってもいいのかい? 容赦しないよ」

「ははは。俺だってそれなりに実力はあるさ」


 だろうね。


「なら、勝負といこうか。何か賭ける?」

「じゃあ一食奢る」

「ドナトのほうがリスク大きくない?」

「何言ってやがる。俺は食うぞ」

「そう。なら文句無しで」

「いいぜ。それじゃあ始めだ」


 ドナトはそう言うなり走って行ってしまった。どれだけ一食が欲しいんだよ⋯⋯


「事後承諾になっちゃたけどいい?」


 さっきから様子見をしていた仲間たちに聞いてみる。


「勝負ー」

「勝負ー」


 アマリアとクロウスは元気だ。


「お金あんまり無い」


 カレンの一言が重い。確かに乗りで決めてしまったが、奢れるか怪しい。


「勝てば問題ないだろう」

「それもそうね」


 ナイス! エルギル。

 マグノリアとレナリーも苦笑いだが、いいと言ってくれた。もしかしたらダメと言ってももう遅いと分かっているからなのかもしれないが⋯⋯


「さて、言質は取ったし、容赦なく勝ちにいこう」


 予定外の勝負。こういうのもいいかもしれない。試験も楽しめたほうがいいからね。

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